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強まるレース色。ランボルギーニがLM GTEへのワークス参戦を視野に【大谷達也コラム第6回】

2017年02月01日 12:32  AUTOSPORT web

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デイトナ24時間に参戦したランボルギーニ・ウラカンGT3。同じGTDクラスではNSX、RC FのGT3マシンと順位を争った。
2014年、それまでランボルギーニ・ワンメイクレースのスーパートロフェオやGT3レースで活躍してきたガヤルドの後継モデルであるウラカンの量産仕様がデビュー。これをベースとするレーシングカーは、そのスーパートロフェオ版がまずはガヤルドとの混走というスタイルで2015年に登場。翌2016年以降のスーパートロフェオはウラカンのみエントリーが認められることになる。

 同様にしてウラカン・ベースのGT3マシンが誕生するが、注目すべきはその開発を担当したのがこれまでのライター・エンジニアリングではなく、ランボルギーニ社内のスクワドラ・コルセに切り替わった点にある。

 ランボルギーニの中央研究所に所属する組織として設立されたスクワドラ・コルセは、当初、同社のモータースポーツ活動だけに注力してきたが、2013年よりランボルギーニのドライビング・エクスペリエンス(ランボルギーニ・ユーザーなどを対象としたドライビングスクール)も受け持つようになって、その役割が大きく変化した。

 現在のスクワドラ・コルセの活動はひとつのピラミッドで表現できる。その頂点に立つのはGT3車両によるカスタマー・レーシングで、これに続くのがスーパートロフェオのワンメイクレース・シリーズ。

 ドライビング・エクスペリエンスはその下に位置するものだが、このなかにエスペリエンザ、トラック、ウィンター、ピロータの4コースを設けることで、初めてサーキットを走るドライバーを懇切丁寧に指導しながら徐々にステップアップするルートを構築。

 その最高峰のピロータは、GT3マシンでサーキットを走行してドライビングテクニックを養うだけでなく、GT3の模擬レースまで実施する内容で、予選、決勝のスタート、ピットストップ、そしてフィニッシュなどを体験することで本格的なレースデビューへと導く内容となっている。

 つまり、一般道でのドライビングに飽き足りなくなったランボルギーニ・オーナーにサーキット走行の手ほどきを施し、最終的にはジェントルマンドライバーとしてGT3レースにデビューするまでの道筋を明確に作り上げたのがスクワドラ・コルセなのである。ロードカー・ビジネスとモータースポーツ活動をこれほどシンプルでわかりやすい形で一本化した自動車メーカーはほかにないといっても過言ではない。

 そんなランボルギーニで現在CEOを務めているのが、2008年から2014年までフェラーリF1チームの代表を務めきたステファノ・ドメニカリである。2014年にアウディ傘下のクワトロGmbHへと移籍したドメニカリは2016年に現職に就いたばかり。とはいえ、GT3を頂点とするモータースポーツ活動は、かつてフェラーリF1の采配を振るっていた人物にとって物足りなく映ったとしても不思議ではない。

 そこで2017年1月にスペイン・バレンシアで行われたランボルギーニ・アヴェンタドールSの試乗会場にて、ドメニカリにランボルギーニの将来的なモータースポーツ計画について訊ねることにした。

「今後2年間に関していえば、現在行っている活動の大枠を変更するつもりはありません。言い換えれば、これまで取り組んできたカテゴリーに注力し、その存在をより強固なものとするつもりです。その一方で、私たちがモータースポーツ関係者から注目されているのも事実です。こうした状況を現状のままに留めておくつもりはありません」

「それほど皆さんをお待たせすることなく、私たちが新しいレーシングカーの開発に取りかかることを発表できるはずです。ただし、基本となるのはGTレースなので、カテゴリーとしては(LM)GTEとなるのが自然の流れでしょう。ただし、これには大きな変化が伴います。なぜなら、これまで私たちの活動はあくまでもカスタマーチームにレーシングカーを供給することであり、ワークスチームとして参戦したことはなかったからです。いずれにせよ、こうした計画が実施されるのは2019年以降となるでしょう」

 これだけでも大ニュースだが、ドメニカリはさらに驚くべき野望を打ち明けてくれた。「いま申し上げたとおり、私たちは当面GTレースに留まるつもりですが、その後に関してはさまざまな可能性が考えられます。現時点では何も決まっていないものの、F1参戦を検討することも考えられるでしょう。ただし、いま私たちがしなければいけないのは、自分たちの基盤をより強固にすることで、そのためにはあまり大風呂敷を広げないことが大切です。イタリアにはこんなことわざがあります。『自分の足よりも長い一歩を踏み出してはいけない』 繰り返しになりますが、将来のことは誰にもわからないのです」