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YUKI、KREVA、UVERworld、10-FEET、EXILE ÜSAに見る理想的なキャリアの重ね方

2017年01月31日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

YUKI『さよならバイスタンダー』

 2010年代に入ってから15周年、20周年を迎えるバンドやアーティストが増えているが、それは日本のポップミュージックが成熟しているひとつの証であると同時に、アーティストが自分たちの成長、年齢の重ね方をナチュラルに表現できていることでもある。今週はそんな“いいキャリアの積み重ね方”を実現しているアーティストの新作を紹介したい。


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 まずはソロデビュー15周年を目前にしたYUKI。日暮愛葉のプロデュースによるソロデビューアルバム『PRISMIC』(2002年)以来、新しい才能を持ったクリエイターとのコラボレーションを繰り返しながら、常に瑞々しいアーティスト像を提示してきた彼女だが、アニバーサリーイヤーのキックオフとなる本作でも“いつも新しく、いつも最先端”なイメージをしっかりと見せつけている。Aimer、SCANDALなどの楽曲を手がけている飛内将大(agehasprings)の作曲によるシングル表題曲「さよならバイスタンダー」は、名うてのミュージシャンたちのよる有機的なグルーヴとドラマティックな広がりを感じさせるメロディが一つになったアッパーチューン。<慎ましさとか 孤独とか 空しさを/もっと知って愛されていくよ>というフレーズからは、現在のYUKIの新たな覚悟がまっすぐに伝わってくる。


 YUKIが女性シンガーのロールモデルだとしたら、ヒップホップ・シーンのそれはまちがいなくKREVAだろう。1990年代後半から日本のヒップホップを牽引してきた彼の存在がなければ、ぼくのりりっくのぼうよみ、SALU、AKLOなどの才能が次々と登場している、現在のシーンの活況ぶりは絶対になかったと断言できる。当然KREVA自身も新たな進化を続けているわけで、それはレーベル移籍第1弾となる『嘘と煩悩』にも強く反映されている。まずは1曲目のタイトルチューン「嘘と煩悩」を聴いてみてほしい。人間の欲望の在り方をシンプルな言葉で射抜くリリック、そして、ミニマルテクノのグルーヴを取り入れたトラックがひとつになったこの曲は、KREVAというアーティストの本質と新しさを明確に提示していると思う。


 カリスマティックな存在感という意味ではKREVAに引けを取らないTAKUYA∞が率いるUVERworldも結成15周年、デビュー10周年のアニバーサリーを終え、気が付けば30代半ば。まだ落ち着くような年齢ではないが(実際、ライブの激しさ、熱狂度はさらに増している)、彼が紡ぎ出す歌詞の世界は明らかに変化してきている。「一滴の影響」(TVアニメ『青の祓魔師 京都不浄王篇』オープニングテーマ)のテーマの軸になっているのは、おそらく“許し”。許せないこと、理解できないこと、どうしようもなく悲惨な現実が存在することを前提として、周りと自分自身を責めず、少しでも理想に向かって歩き続けたいーーそんなメッセージが濃密に込められているのだ。“自分たちをバカにしたやつらを絶対に許さない。いまに見てろ”という怒りのパワーを原動力にしていた彼らはもういない。そう、UVERworldはいま、本当の意味でポジティブな波動を描き始めている。


 バンド結成20周年もすごいが、主催フェス・京都大作戦10周年はもっとすごい。昨年7月にリリースしたシングル『アンテナラスト』がオリコンランキングで自身最高位の5位を記録するなど、音楽的にもセールス的にも何度目かのピークを迎えつつある10-FEETのニューシングル『ヒトリセカイ×ヒトリズム』は現在のバンドの好状況と未来への前向きなビジョンを全身全霊で示した作品である。骨太としか言いようのないバンドのグルーヴが炸裂するなかで、<絵空事や言葉未満の/思いや寂しさも理由に変えて>前に進んでいこうとする意志を放つ「ヒトリセカイ」はこのバンドの新たなアンセムとして浸透するはず。20年間、一切のごまかしや嘘を交えないで活動してきたバンドにしか体現できない圧倒的な説得力がここにはある。


 頂点を経験したグループのメンバーが、その後のキャリアをどう築くか? そのひとつのヒントとも言えるのが、2015年にEXILEのパフォーマーを卒業したEXILE ÜSAが率いるDANCE EARTH PARTYだ。2006年からスタートした“DANCE EARTH”(世界各国のダンスを現地で体感、その経験を舞台、書籍などのメディアで表現するプロジェクト)の一環として結成されたDANCE EARTH PARTY。1stアルバム『I』は、ヒップホップ、スカ、ラテン、カントリー、インド音楽(タブラ奏者、U-zhaanも参加)から現代的なトロピカルハウスといったリズムを取り入れ、まさに世界中を旅しているような感覚が味わえる作品に仕上がっている。昨年秋には野外でのライブも開催。ダンス文化をより深く表現する貴重なグループとしての存在感を徐々に獲得しつつある。(森朋之)