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レミーの生涯に最大のリスペクトを! パンクとメタルの垣根越えた『A Tribute to Motörhead』

2017年01月30日 15:03  リアルサウンド

リアルサウンド

レミー・キルミスター

 Motörheadの中心人物で、Ba/Voであるレミー・キルミスターが他界してから一年目となる2016年12月28日、Motörheadの2枚組カヴァーV.A『A Tribute to Motörhead』が、<STRAIGHT UP RECORDS>から先行発売された。


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 ビートルズやローリング・ストーンズ、ジミ・ヘンドリックス、デヴィッド・ボウイなど、ジャンルの壁を超え愛されるバンドや音楽はたくさんあるが、メタルやパンクを中心とするようなハードな音を好む人間たちにとって、上記のバンド以上に神のような存在であるのがMotörhead=レミー・キルミスターだと断言できよう。


 今回の参加バンドを見てもらえればわかると思うが、Motörheadの凄さというものは、様々なジャンルのバンドに愛され、ジャンルの壁を無くし、いがみ合うようなジャンルの人間同士でさえMotörheadの話であれば盛り上がってしまう。


 そして、自らのこだわりすらを超え、協力しあえる愛がMotörheadをリスペクトする人間たちの間には存在するのだ。


 今作品では、日本と韓国から、パンク、ハードコア、スキンヘッズ、メタル、サイコビリーの他にも、様々な日本と韓国のアンダーグラウンドシーンを担う総勢27バンドが勢ぞろいした。


 日本という国のアンダーグラウンドシーンに特殊な面があると思うが、スキンヘッズとサイコビリー、パンク、メタルが一同に会することなど「Motörheadトリビュート」という理由以外に存在し得ない。


 そして、それを実現させてしまうMotörheadというバンドの魅力が、オリジナル作品は元より、数々のMotörheadトリビュートとはまた違ったかたちで、今回の作品に詰まっている。


 Motörheadであれば、好きな曲や代表曲が被ってカヴァーしてしまいそうなものだが、今回のトリビュートでは一曲も同じ曲を演奏するバンドがなく、参加バンドたち全てが各々の持ち味を遺憾無く発揮し、オリジナリティが溢れた素晴らしいアルバムとなっている。


 筆者のバンドFORWARDもこのオムニバスに参加させてもらっているが、このトリビュートを発案したのが、日本のスキンヘッズバンド代表である鐵槌だというのも特筆すべき点である。


 日本のスキンヘッズバンドの多くは、日本語にこだわりを持ち、楽曲を日本語のみで歌うことが多い。しかし鐵槌や壬生狼などが英語で歌っているこのアルバム自体が貴重であることを理解してほしい。


 鐵槌ファンであればわかると思うが、このアルバムの鐵槌の曲が始まった瞬間には、「鐵槌の曲か?」と思わせるほど自らのものにしているところなど、どれほどMotörheadを愛しているかが伝わってくるだろう。


 SILVERBACKのメタルの爽やかさを感じるような演奏や、CRACKSのロカビリー感溢れる演奏、見事なハードコアサウンドで表現したDIE YOU BASTARD!や韓国の13STEPSなど、他にも挙げたらキリがないほどMotörhead愛に溢れた聴きどころ満載のアルバムとなっている。


 Motörheadのマネージャーに連絡をしてトリビュート発売の許可もとり、ジャケットにはMotörheadのシンボルマーク「WAR PIG」が描かれた九谷焼の皿が使用されており、発売元の<STRAIGHT UP RECORDS>のMotörhead愛も素晴らしい。


 Motörheadを知らない各バンドのファンが、そのバンドを通じ、Motörheadの魅力を発見し、MotörheadファンがMotörheadを通じ、知らないバンドを発見する。このアルバムを聴けば聴くほどMotörheadというバンドの功績が、どれだけ凄いことであるかよく理解できる。


 負け犬として生まれ、勝つために生きたレミー・キルミスターの生涯に、最大のリスペクトと愛を捧げ作り上げたアルバム『A Tribute to Motörhead』。


 レミー・キルミスターの魂は、極東の猛者たちの中に永遠に生き続けている。(ISHIYA)