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ONIGAWARAが掲示する、アイドルでもバンドでもない“新しいJ-POP” 『新春初ONI詣』レポート

2017年01月30日 13:42  リアルサウンド

リアルサウンド

ONIGAWARA(撮影=nishinaga "saicho" isao)

 ONIGAWARAは間違いなく「アイドル」だ。元竹内電気のメンバーである竹内サティフォと斉藤伸也による男性2人組にして、「アイドル」という存在を目指し、しかも1990年代を意識したサウンドを聴かせる彼らは、ともすれば不思議な存在かもしれない。しかし、2017年1月21日に渋谷TSUTAYA O-Westで開催されたワンマンライブ『ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017~新春初ONI詣~』は、彼らがミュージシャンとしてもエンターテイナーとしても、すでに多くの人々に支持されていることを実感させるものだった。


写真はこちら。


 この日は、開演前からステージ上に酒樽が用意され、開演すると、笛や琴による正月感の溢れる音楽が流れだした。そして、布袋寅泰モデルのエレキ・ギターを抱えた竹内サティフォと斉藤伸也か登場して自己紹介をすると、まずは観客の「よいしょ!」という掛け声にあわせて鏡開きを行った。


 そして、1曲目の「O・SHOW・GA・TSU」は、レーザーが飛び交う中でスタート。「O・SHOW・GA・TSU」という文字列がVJで出てくるのもくどくて良い。さらには、黒子が書道セットを持ってきたかと思うと、10秒のカウントダウンの中でONIGAWARAが書き初めを開始。竹内サティフォは「恋」、斉藤伸也は「成功」と書き、ステージ両端のお立ち台に立って披露した。


 続く「シャッターチャンス'93」は、まさに1990年代感があるギター・ロック。ちょっとネオアコも連想するな……と考えていると、竹内サティフォはフロアにピックを投げてスター感を醸しだしていた。また、「シャッターチャンス'93」では撮影OKタイムがあり、ONIGAWARAがさまざまなポーズを取っていく。その間にもファンからは「連写が止まらない!」「目線ください!」という声が起きていた。


 「ONIGAWARA SUPER STAR」は、Queenの「We Will Rock You」を連想させるイントロからスタート。ラップ・ナンバーだが、落ちサビではファンが一斉にサイリウムでケチャを捧げるのもユニークだ。さまざまな文脈が交錯しているのがONIGAWARAの現場だ。


 ONIGAWARAが一旦ステージを去ると、バックトラックが鳴る中、「お色直し中」というVJが。ONIGAWARAのVJもまた、1990年代のネオンライトのようなのだ。


 ONIGAWARAのアイドル感が爆発したのが「エビバディOK?」だ。小学生の男の子たち3人が登場してダンスを披露すると、フロアからは大歓声が。さらに彼らに腕を引かれてONIGAWARAが再登場。とりわけ歓声の大きい楽曲となった。


 MCでは、斉藤伸也が「ここに骨を埋める覚悟ができてるのか!?」と煽ると、竹内サティフォが「お前となら埋めてもいいかな……」と突然のBL展開。書き初めで書いた「成功」について、斉藤伸也が「ビッグになりたいじゃん!」と言うと、竹内サティフォも「俺(が書いたの)も星野源の『恋』。社会現象になりたいね」と抱負を語った。


 「アリス」では、竹内サティフォのギターのリフ、斉藤伸也の伸びやかなボーカルも冴え渡っていた。


 「チョコレイトをちょうだい」では、イントロで竹内サティフォがギター・ソロを弾く間に袖に下がった斉藤伸也が、獅子舞をかぶって登場。何かを投げていたので、チョコレートを投げたのかと思ったが、白かったので餅かもしれない。「チョコレイトをちょうだい」は、キーボードの音色も90年代っぽく、さらにONIGAWARAが歌うメロディーも当時の歌謡曲を彷彿とさせるものだ。


 斉藤伸也が「最高にチルしてくれよ!」と言いながらはじまった「夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって」は、まさにチルでメロウなミディアム・ナンバー。竹内サティフォもギターを下ろし、ONIGAWARAのふたりによるラップと歌で、「日本で一番早い夏フェス」という雰囲気となった。


 「夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって」の終わりでONIGAWARAがステージから去ると、なぜかオルゴール・アレンジのオフコースの「言葉にできない」が流れだした。スクリーンには、2016年のONIGAWARAの活動を写真で振り返るスライドショーが。改めて見ると、インスタントカメラ・シングルであった「シャッターチャンス’93」のMVは、フリッパーズ・ギターの「カメラ!カメラ!カメラ!」へのオマージュっぷりがすごいのだ。


 ONIGAWARAが再びステージに戻ってくると、すでに本日3着目の衣装。<明日君がいなくなったって大丈夫>と歌う「僕の恋人」は、ONIGAWARAの槇原敬之的な資質が全開になっている甘酸っぱいラブ・ソングだ。


 2度目のMCでは、2017年3月22日にファースト・フル・アルバム『ヒットチャートをねらえ!』がリリースされることがアナウンスされた。この日の会場予約特典のポスターは、ONIGAWARAがポーズを決めた写真で、「トイレに似合う!」「中学生の部屋の天井に似合う!」と斉藤伸也が語る仕上がりだった。


 ONIGAWARAというグループのスタンスを象徴していたのが「ポップミュージックは僕のもの」だ。<アイドルじゃないしバンドでもない/ロックでもないしパンクでもない>という歌詞を、ポップなメロディーに乗せて歌うこの楽曲は、ONIGAWARAというグループの立ち位置をストレートに表している。そして、1990年代を連想させるサウンド。3人の少年ダンサーも再登場した。


 そこからユーロビートのようなリズムが鳴り、ノンストップで「タンクトップは似合わない」へ。間奏ではファンに「ONIGAWARA」の人文字を作らせる趣向もあった。


 本編ラストは「GATTEN承知之助~We can do it!!~」。最後までONIGAWARAのポップさを体感させた。


 しかし、「サティフォ! 伸也! ONIGAWARA!」というファンからのコールが止まらず、ONIGAWARAがアンコールに登場。「水飲む姿もかわいいよー!」というアイドル現場でよく聞くコールが斉藤伸也に飛び、斉藤伸也が思わずひるむ光景もあった。


 そして「ヒットチャートをねらえ!」へ。アルバム・タイトル曲でもある「ヒットチャートをねらえ!」は、驚いたことにディスコ色の強いソウル・ナンバーで、まさにヒットチャートに入っても違和感がないような楽曲だ。


 ダンス・ナンバーの「Eじゃん」のサビでは、「Eじゃん!」と熱いコール&レスポンスが起きていた。


 ONIGAWARAがアンコールを終えてもコールの声は止まらず、ダブル・アンコールへ。斉藤伸也はアルバムについて「買ってくれ! そのぐらいのものができたからね。恥ずかしいけど移動中毎日聴いてるからね」と自信のほどを述べていた。


 最後の最後は、少年ダンサーたちを加えての「ボーイフレンドになりたいっ!」。曲間で竹内サティフォが「みんな東京ドームまで連れていくぜ」と言ったのが印象的だった。最後に斉藤伸也が「あけましておめでとうございました!」と叫び、1月21日まで正月気分を引きずったライブは、「やや無理があった」とONIGAWARAも語る中で見事成功を収めて終了した。


 ONIGAWARAのライブの全編を貫くのは、心地良いボップスとユーモアだ。そこに1990年代的なエッセンスも加わり、ONIGAWARAの男性アイドル感が生みだされる。しかし、会場には女性ファンだけではなく男性ファンの姿も多かった。フロアからのガヤの自由さも含めて、ファン側もユーモアをONIGAWARAと共有している点が、ライブの空間をさらに幸福感の強いものにしていた。


 アイドルでもなければバンドでもないONIGAWARAが、この勢いで2017年は新しいエンターテインメントの形を見せてくれるのではないか。そんな期待をさせてくれたのが『ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017~新春初ONI詣~』だった。(文=宗像明将)


■セットリスト
ONIGAWARA
『ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017~新春初ONI詣~』
2017年1月21日(土)渋谷TSUTAYA O-West


1.O・SHOW・GA・TSU
2.シャッターチャンス'93
3.ONIGAWARA SUPER STAR
4.エビバディOK?
5.アリス
6.チョコレイトをちょうだい
7.夏フェスなんて大嫌い!!なんちゃって
8.僕の恋人
9.ポップミュージックは僕のもの
10.タンクトップは似合わない
11.GATTEN承知之助~We can do it!!~
EN1.ヒットチャートをねらえ!
EN2.Eじゃん
EN3.ボーイフレンドになりたいっ!