米国フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催されたIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ(WSCC)開幕戦デイトナ24時間は、現地時間1月28日~29日に決勝レースが行われ、ウェイン・テイラー・レーシング(WTR)のリッキー・テイラー/ジョーダン・テイラー/マックス・アンジェレッリ/ジェフ・ゴードン組10号車キャデラックDPi-V.Rが総合優勝を飾った。
今年のデイトナ24時間は、デイトナプロト・インターナショナル(DPi)と新型LMP2、さらにアキュラNSX GT3、レクサスRC F GT3などの新型車が多数エントリーしたことで注目を集めた。
現地26日に行われた公式予選では、アクションエキスプレス・レーシング(AER)が走らせる5号車キャデラックDPi-V.Rがポールポジション。翌27日のフリー走行ではWTRの10号車キャデラックがトップタイムをマークするなど、キャデラック勢が速さをみせつける。
このデイトナ24時間が実戦デビューとなるキャデラック勢は決勝でも速さを発揮。序盤からトップ3を独占したほか、雨が降り出したレース中盤以降も10号車キャデラックと5号車キャデラックが首位争いを展開した。
しかし、5号車キャデラックは夜間にパンクとカウル交換のイレギュラーピットインを強いられ、一時は優勝争いから遠ざかってしまう。しかし、コース上のアクシデントや強雨によるフルコース・コーションが相次いだことで5号車とのギャップを縮めることに成功。夜が明ける頃にはふたたび優勝争いに加わってみせる。
そして、チェッカーまで残り20分弱、このレース22回目のリスタートが切られると、首位を走る5号車キャデラックを操るフェリペ・アルバカーキと10号車のリッキー・テイラーによるスプリントバトルが始まった。
キャデラック同士の優勝争いは残り8分で勝敗が決する。オーバルコースからインフィールドセクションへ向かうターン1でリッキー・テイラーがアルバカーキのインに飛び込んだ瞬間、イン側を締めたアルバカーキに追突してしまう。
この接触により、アルバカーキのキャデラックはスピンし、リッキー・テイラーがトップに浮上。この一件について、レースオーガナイザーは“レーシングアクシデント”と判断したため、審議は行われずペナルティもなし。
これにより総合首位に踊り出たリッキー・テイラーは、猛追するアルバカーキを0.671秒差で振り切りトップチェッカー。WTRにデイトナ24時間レース初制覇をもたらした。
「これまで何度も優勝まで1歩届かなかったから、ようやく安心できた」とリッキーの兄、ジョーダン・テイラー。
「弟がチームにデイトナ初勝利をもたらしてくれたんだ」
終盤の接触でポジションを落としたアルバカーキは「勝利を逃すなんて想像もしていなかった。ああいう終わり方は好きじゃない」と、リッキー・テイラーを批難する。
「彼が後ろからぶつかってきたから、僕はスピンしてしまった。しかも、(ポジションを戻すことなく)抜き去っていったんだ」
「オフィシャルがペナルティなしだと言うのなら仕方ない。ただ、それでもリッキー・テイラーとは公平にバトルをやり直したかったね」
「僕自身の判断は間違っていなかった。(スピンした後も)全力で追いかけたけど、わずかに届かなかった」
また、アルバカーキはオフィシャルに対し、控訴するかと問われ、「チームと話をして決める。彼らの判断に従うよ」と応じている。
「僕個人としては裁定に不服を感じている。彼は間違いなく後ろからぶつかってきたからね」
「賢いやりかたではなかった。これは誰の目にも明らかだよ」
総合3位にはVisitFlorida.comレーシングのライリー/マルチマチックMkXXX LMP2が入った。レインコンディションとなった夜間はキャデラック勢と互角の戦いを披露していたものの、ドライコンディションとなった終盤はDPi勢のペースに追いつくことができなかった。
日本メーカーとして唯一Pクラスに挑んだ2台のマツダRT24-Pは、総合5位を走行していた55号車がチェッカーまで残り4時間となったところで突然出火。無念のリタイアとなっている。また、僚機の70号車もレース序盤にクラッチトラブルに見舞われ、この修復作業に時間を取られたことが響き最終的にクラス12位、総合46位という結果に終わっている。
なお、55号車の出火原因は、エンジンブローではなくラインから漏れたオイルに引火したとのことだ。
GTLMクラスでは、フォード・チップ・ガナッシレーシングの66号車フォードGT(ディルク・ミューラー/ジョーイ・ハンド/セバスチャン・ブルデー組)が、フレデリック・マコウィッキもドライブしたポルシェGTチームの911号車ポルシェ911 RSRを3秒差で抑えてクラス優勝を飾った。
クラス3位には残り時間35分まで首位を走っていたリシ・コンペティツオーネの62号車フェラーリ488 GTEが入り、コルベット・レーシングの3号車コルベットC7.Rがクラス4位に入っている。
アキュラNSXとレクサスRC Fのデビュー戦として注目が集まったGTDクラスは、アレグラ・モータースポーツの28号車ポルシェ911 GT3Rが優勝。
チームは最後のピットストップでクラス2番手から首位に浮上すると、アンカーを務めたミハエル・クリステンセンがこれに応え、29号車アウディR8 LMSの猛追をしのぎきった。
3位にはライリー・モータースポーツ-チームAMGが入り、シリーズ初参戦のメルセデスAMG GT3がデビュー戦で表彰台を獲得している。
日本の新車勢では、NSXが中盤から終盤にかけて安定した走りで上位に進出。最終的な順位は86号車が5位、93号車が11位となったが、ワン・ツー体制を築く時間も多く、ポテンシャルの高さを発揮している。
一方、レクサスRC F勢は14号車が序盤にクラッシュしてリタイア。15号車もタイヤのバーストによるカウル損傷と2度のクラッシュで大きく遅れをとってしまい、クラストップから53周遅れのクラス14位でデビュー戦を終えている。
オレカFLM09のワンメイクで争われるPCクラスは、パフォーマンステック・モータースポーツの38号車が優勝を飾っている。PCクラスは今シーズン限りでのクラス廃止が決まっており、今回のレースがFLM09にとってのデイトナラストレースとなった。