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amiinAの物語は続くーー主催イベント『Wonder Traveller!!! act.5』で生まれた“大きな光”

2017年01月29日 16:03  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)松村早希子

 amiinA主催の『Wonder Traveller!!! act.5』(以下WT5)、今回のテーマは「光の旅」。近年はロックフェスにアイドルが出演することも決して珍しい事ではなくなり、もはや両者に壁などないとされるのが当たり前の時代に、「光の旅」というテーマのもとで両者が何を見せられるのか。アイドルにはアイドルにしか表現できないことがあり、ロックバンドにもバンドでしか見せられない世界があることを、各々が各々のやり方で、しかし全てが一つの大きな光となって、目の前で確かに証明してくれました。


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出演者:3776/井出ちよの、sora tob sakana、あらかじめ決められた恋人たちへ、963、アイドルネッサンス、RYUTist、HUSKING BEE、amiinA(出演順)


 2016年12月28日、amiとmiyuの二人からなるガールズユニット・amiinAが主催するイベントWT5が、渋谷WWW Xにて開催されました。


 プロデューサーの齊藤州一氏が蒔いた種を、二人の少女がステージ上で花開かせるamiinA。他のどんなグループにも似ていない強固な世界観は、昨年10月に発売されたアルバムにも、一回一回のライブにも貫かれています。そして、この1年のamiinAの活動の集大成のようなイベントがWT5でした。


 天井に掛けられた色とりどりのフラッグ、入り口の扉からトイレの壁までいたる所に張り巡らされた動物達のシルエットやメッセージ、腹ごしらえしたくなった時には美味しいフード(amiちゃんはキュウリが好きなので、メニューにキュウリのビール漬けがあるという遊び心も)もあり、WWW XがamiinAとスタッフの方々によるおもてなしの心で満たされ、会場はこれから始まる旅の準備が万端に整えられていました。この過剰なまでのサービス精神は、『Wonder Traveller!!!』が始まった当初の会場・新宿RUIDO K4から、会場が大きくなっていっても変わらず貫かれています。

 WT第1回目からお馴染みの、司会者というよりも旅の案内人と言った方がお似合いの男性・「ナビゲーターのナガセ」さんが、ステージの端っこに下がっている電球を点けると、物語が始まります。ステージの上には7冊の本が置かれ、それぞれの出演者の出番前に、ナガセさんがその本を手に物語の序文のように語り、各出演者一組に対して一冊の本が用意されています。


■1冊目…3776/井出ちよの


 30分の出演時間の中でしっかり衣装も着替えて、3776と井出ちよのソロプロジェクトの2つの面を見せてくれました。「3776」と「井出ちよの」両方のパフォーマンスが短い時間の中にぎゅっと詰め込まれていて、ちよのちゃんの表現力の豊かさと、背景の大きなスクリーンに映るドキュメンタリー映画のような映像の効果も相まって、ステージ上には現実と虚構が混ざり合っていました。


■2冊目…sora tob sakana


 背景スクリーンを活かしたVJ映像とのコラボレーションが強烈で、作り込まれたステージの上で幼い女の子たちが必死に歌い踊る姿は、神に捧げられる巫女のような尊さでした。白いフワフワした衣装のスタンダードなアイドルっぽさと、突き刺さるような音楽のギャップに目を奪われます。


■3冊目…あらかじめ決められた恋人たちへ


 何もかも忘れて踊り狂っていたので、何も言葉が出てきません!
前回のWT(act.4)出演時に、そして今回もラストに演奏された「前日」。この曲が最後に選ばれたことは、このフロア、このamiinAの旅に集う観客への信頼感の表れかもしれません。


■intermission……963


 本が7冊しかないのを見た時、963の分が無い! と思いましたが、「休憩時間中に起こる突然の出来事」のようなハプニング的登場の彼女達は、本のページとページの間に挟まったしおりのような役割なのかもしれません。ステージの上ではなく観客フロアに降りてのパフォーマンスで、旅行船の中に紛れ込んだかわいいネズミたちが、船内を引っ掻き回して去っていったかのようでした。


■4冊目…アイドルネッサンス


 今まで観た彼女達の中で、最も攻撃的なライブでした。以前のセーラー服ではなくアオザイのような身体のラインに沿った形の衣装になっていた事もあって、ぐっと大人っぽく見え、少女が大人になってゆく段階の一瞬も見逃せない儚い美しさが詰まっていました。メンバーの比嘉奈菜子さんがamiinAのステージに感激して、終演後の握手会の時にワンワン泣いていたことが印象的です。


■5冊目…RYUTist


 新潟・古町からやってきた少女達が、ほのぼのした空気をもたらして、激しさが続くステージに清涼剤を投げてくれました。「ラストワルツ」(毛皮のマリーズカヴァー)の、ミュージカルの一幕のような演劇的世界が、このグループの表現の幅広さを教えてくれます。


■6冊目…HUSKING BEE


 音出しリハーサルの段階ですでにフロアが大盛り上がりで、本番が始まってしまったのかと勘違いしたほどでした。目の前をダイブする人がバンバン飛び交う光景が美しかったです。磯部さんの「僕ら今後もパンク界のアイドルとして頑張って行くので……」という言葉に笑いが起きていましたが、miyuの受験のためamiinAが活動を一時休止することに触れ、「これからまたみんなと、ゆっくりしっかり歩いて行ってください」と語った後で奏でられた「WALK」には胸が熱くなりました。


■7冊目…amiinA


 一曲目にいきなりの新曲、そして新しい衣装での登場という、冒頭からの二つの強烈なインパクト、そして轟音と熱狂の渦に全身が襲われ、中心の台風の目ではたった二人の少女が、重力の縛りから解き放たれた身軽さで歌い踊っていました。


 この日の衣装は、amiinAが以前の二人(2016年2月までamiとmiinaで活動、miina脱退後、2016年5月よりmiyuが加入し再始動)で着ていたもののリメイク。胸元に白い光の形のパッチワークと、羽根のような白く輝くスカートが新たに加わって、暗い森の中に光が射して道を示し、これまでの旅程を経て今のamiinAがあることが一目で分かります。この日の全ての出演者、過去のライブが1本の道に繋がって、「Wonder Traveller!!!」のタイトル通り、これまでの一つ一つのライブが「旅」の過程であり、これからも物語が続いていくことが丁寧に示されていました。(松村早希子)