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介護施設の夜勤労働、「手当」も「休憩時間」もなく辛い…そんな扱いは違法?

2017年01月28日 08:33  弁護士ドットコム

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看護師や介護士など、職業上夜間の勤務が必須になる業種は少なくありません。しかし、賃金や勤務時間などをめぐってトラブルになるケースもあるようです。


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弁護士ドットコムにも、夜勤をめぐる相談は多く寄せられています。介護施設に勤務するある女性は、女性の職場は、夜勤時(17時~翌朝9時)の休憩は2時間と定められていますが、呼び出しや雑務に追われ、「ほとんど休憩は取れていない」と嘆いています。


また、24時間営業の店舗で正社員として働く男性は、昼勤務から夜勤に配置換えされたため、「増額賃金があるのでは」と上司に質問したところ「夜勤手当なんてないよ」とつっぱねられたといいます。


夜勤で働く労働者に対して、休憩時間や賃金などの面で、日勤とは異なる取り扱いをする必要はないのでしょうか。あるとすれば、使用者(企業)側はどのような処遇をすることが求められるのでしょうか。天田圭介弁護士に聞きました。


 ●手当、休憩時間はどう扱われる?


「夜勤」というのは法律上の用語ではありませんが、ここでは、「夜間に通常の業務に従事すること」として話を進めたいと思います。


夜の勤務としては、「宿直」も思い浮かぶと思いますが、こちらについては法的な取り扱いが異なるので除きます。


宿直についてざっと説明しておくと、宿直は、通常の業務よりも軽度の業務であること、1回当たりの宿直手当が、原則として宿直勤務者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上であること、原則として週1回以下の頻度であること、睡眠設備を設置していることなど、一定の条件を満たす場合に、労働基準監督署長の許可のもとで行うことができることになっています。


以上を前提に、夜間、通常の業務で働いている労働者の法的な取り扱いについて説明していきたいと思います。


法律上、使用者は、午後10時から午前5時の間に労働させた場合には、労働者に対して2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。


また、労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を与えなければなりません。


ただし、形式的にこうした休憩時間を与えておけば問題ないわけではありません。使用者は、労働者の生命や健康を、職場における危険から保護する義務(安全配慮義務)を負っているからです。


たとえば、夜勤が長時間に及ぶような場合には、使用者は、この法律上の休憩時間の定めにかかわらず、安全配慮義務の観点から適切な休憩時間を与えるべきといえるでしょう。


また、法律上、使用者は、労働者に対し、休憩時間を自由に利用させなければなりません(休憩時間自由利用の原則)。さらに、待機時間や手待時間などは、使用者の指揮命令下に置かれている時間ですので、休憩時間には含まれません。




【取材協力弁護士】
天田 圭介(あまだ・けいすけ)弁護士
企業による適正な人事・労務管理の結果、労働者の権利が確保されるとの理念のもと、企業から人事・労務に関する多くの相談を受けるとともに、主に企業側の代理人として、多くの労働事件を手掛けている。東京弁護士会所属。
事務所名:天田綜合法律事務所