二輪ロードレースの最高峰、MotoGPの裏話を語る『2016MotoGP覆面座談会』の第3回を開催。今回は新たに女性のMotoGP関係者を入れた3名でお届け。パート1は2016年シーズン後半戦を統括。また海外では圧倒的というロッシ人気をプロモーターが警戒しているという話も?
事情通A氏:自身もサーキットで走るという二輪界のパイオニア
事情通B氏:恐れ知らずでズバッと切り込むベテラン編集員
事情通C氏:今回初参戦、ライダー情報に精通した女性編集員
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■シーズンが終わって見えたミシュランタイヤの弱点
――さて、2017年を迎えたので、さっそく第3回目の座談会を進めていきたいと思います。
事情通A氏:今回はどんなことを聞かれるのやら。
事情通B氏:そろそろ正体バレるんじゃないか?(笑)
事情通C氏:私は初参加なので恐怖しかないです(汗)。
――身元は絶対に明かさないのでご安心を。では、最初は2016年後半戦について。マルク・マルケスが第15戦日本GPでまさかのチャンピオン獲得という結末がありましたが、みなさんはどう思われましたか。
A氏:あれは劇的でしたね。アラゴンGPが終わったあと、マルケスが日本GPでチャンピオン獲得の可能性が出てきましたが、正直、僕たちはまったく想定していませんでした。それが、まさか(ホルヘ・)ロレンソ、(バレンティーノ・)ロッシがダブルリタイアという結末になるなんて……予想もしませんでしたよ。
B氏:確かに。ホンダはシーズンが始まる前に「今年はなんとかする」って言ったのを聞いていたんだよ。だから、マルケスも「(MotoGPは)勝つことだけじゃない」と2位でも3位でも4位でも確実にポイントを獲得してランキングのポイント差を広げていたからね。
C氏:後半戦はロッシが勝ちきれないレースが続いていましたしね。ロレンソも天候に翻弄されて失速していました。
B氏:だけど、マルケスはチャンピオンを獲得したら転倒が目立ったね。チャンピオン獲得というプレッシャーがなくなって本来の姿に戻った。チャンピオンは獲得できても、ホンダのバイクの問題が解決したわけではなかったから、マルケスの走りでいくと限界を超えて転倒してしまう。
――マルケスもそうでしたが、2016年シーズンはトップチームでも転倒してしまうシーンが多く見られました。一番の原因はどこにあると思いますか?
A氏:一番はタイヤですかね。あるライダーにミシュランタイヤについて聞いたのですが、ミシュランタイヤは温度の依存性が高いらしいです。タイヤの作動温度の幅が狭い。だから、タイヤチョイスがレースで大きく影響してしまう。ブリヂストンタイヤの時は、路面温度に対してプラスマイナス10度くらいの余裕があったんです。
例えば、路面温度が30度だった場合は20度から40度くらいまでの差であれば対応できる。だけど、ミシュランは温度差によるグリップの対応に苦戦していたんです。それが影響して、バイクを寝かせてフロントタイヤのエッジまで到達する中間の部分でグリップが急になくなる問題が起こった。
だから、フロントから切れ込んで転倒するライダーが多かったんです。
B氏:SBK(スーパーバイク世界選手権)にタイヤを供給しているピレリはすでに17インチのタイヤを使用していて、その部分を解決できているみたい。その点でミシュランは遅れているけど、2017年は対策してくるだろうね。
――なるほど、だからヘレスで行われたSBKとMotoGPのプライベートテストでSBKのバイクがMotoGPのタイムを上回るということが起こったんですね。
A氏:そうだと思うんですよ。情報収集はしているのですが、おそらくタイヤだろうと。ピレリタイヤがその時のコンディションに合っていた。
B氏:話をまとめると、今までのMotoGPは16.5インチという特殊なブリヂストンタイヤを乗りこなせるライダーと、それをコントロールできるECUを持ったチームしか速く走れなかった。だけど今年はタイヤとECUが変わって各チームがゼロからのスタート。
そのおかげでファクトリーチーム以外のライダーも優勝し、9人のウイナーが誕生した。(MotoGPプロモーターの)ドルナとしては「してやったり」だよね。逆に2017年でミシュランタイヤが良くなってくると勝てるのが、ファクトリーチームに絞られてしまう可能性もあるね。
■ウエットコンディションでチャンスを掴んだサテライトチーム
■ロッシ人気の恩恵と恐怖
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