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Happinessはクラブカルチャーをリスペクトするーー『GIRLZ N' EFFECT』最終公演レポ

2017年01月27日 20:13  リアルサウンド

リアルサウンド

Happiness

 1月17日、東京国際フォーラムが大いに揺れた。この日、開催されたのはHappiness初の単独ツアーとなる『Happiness LIVE TOUR 2016 GIRLZ N' EFFECT』のファイナル公演。Happinessは、パフォーマーのMIYUU、SAYAKA、楓、YURINO、須田アンナ、ボーカル&パフォーマーの藤井夏恋、川本璃からなる7人組のガールズパフォーマンスグループである。E-girlsのメンバーとしても知名度を高めてきた彼女たちが、この単独ツアーで示したのは、明確な“Happinessらしさ”。それは、クラブミュージックやストリートダンスへのリスペクトだった。かねてから、EXILEを筆頭に多くのLDHアーティストのバックボーンやルーツになっているクラブミュージックのエッセンスを、ガールズグループならではのポップ&キュートさで伝えていく壮大な挑戦にも見えた。ライブ・ビューイングを含めて、1万3000人が魅了された最終公演の様子を振り返り、そのスピリットに迫る。


(参考:Flower、“映画のような”ライブで見せた充実の現在ーー『Flower Theater 2016』最終公演レポ


■ネオンに包まれて、会場が一つのクラブ空間に


 会場に入ると、まず目に飛び込んできたのは、メンバーの似顔絵やリップ、スポーツカーなど、ステージに散りばめられたネオン管のモチーフたち。舞台の中央にはターンテーブルが存在感を放つクラブテイストな空間に、おのずとテンションが上がる。


 開演時間になり、会場が暗転すると覆面のDJディカプリオが登場。腹の底から響く重低音と、サウンドに合わせてリズミカルに変化する照明。流れてきたのは「あがってこ!」の歌詞で、一度聞いたら耳から離れない「Holiday」だ。ホーン系のファンキーなサウンドは幕開けにぴったりである。


 「Are you ready?」と、夏恋が煽れば観客も思わず体が動き出し、会場全体が揺れ動く。助走なしのアクセル全開。初の単独ツアーとはにわかに信じられないほど、メンバーたちは堂々としていて自然体だ。それは昨年11月からスタートしたツアー中にも、Happinessが進化を遂げてきた証だろう。ステージに立つのが楽しくて仕方ない、そんな彼女たちの渾身のステージが始まった。


■Happinessらしさとクラブミュージック


 DJディカプリオが、楽曲と楽曲をシームレスにつなぎ、加速的に盛り上がりを作っていくのも、クラブミュージックをベースとしたHappinessならではのステージ。また、披露される楽曲も、クラブ文化の歴史を紐解くかのようにあらゆるジャンルを網羅していることに驚く。


 ヒップホップの核となるブレイクビーツを打ち出した「Holiday」から始まり、ハードなダブステップの「Show Me Your Heart」、低音と高音を重ねたボーカルやラップで、リズム重視の譜割りが特徴的な「Love Wonderland」へ。オープニングからノンストップで駆け上がるように会場のテンションが上がっていったのも、計算された演出だった。


 そして、自分たちの持ち歌だけではなく、過去の名曲も取り入れることでクラブカルチャーにリスペクトを表しているのも大きなポイント。90年代R&Bを代表する名曲「Really Into You」のカバーは、クラブ好きなら思わずニヤリとしてしまうセレクトだろう。彼女たちは、DJ MAKIDAIによるMix CD『reasure MIX 3』にfeat. Happinessという形で、この楽曲に挑戦していた。5年前の当時は、メンバーも15歳前後とまだあどけなさが残っていたが、今回のステージではすっかり自分たちの表現に昇華しており、大きな成長を感じずにはいられなかった。


 また、夏恋がビヨンセの代表曲である「Single Ladies」を踊ったあとの展開も面白かった。YURINOが夏恋に対して「ビヨンセの曲だよ」と制止すると、ターンテーブルの前に立ち、DJになりきって「Sexy Young Beautiful」をサビの部分からプレイ。現行のUSヒップホップの流れを汲んだバウンシーな低音ビートが特徴で、セクシーかつクールに腰を上下に動かす振り付けが目を引いた。MIYUUから始まる連鎖的なダンスに、会場からはこの日1番の歓声が上がった。


 さらに、須田アンナとYURINOとE-girlsの武部柚那で結成された新たなユニット「スダンナユズユリー」も発表され、デビュー曲「OH BOY」(3月1日発売)を披露。ヒップホップど真ん中の楽曲と、息の合ったラップはとても新鮮だ。オーバーサイズの衣装に身を包んだ彼女たちのファッションと、クラブサウンドの王道がマッチした90’sスタイルは、ムーヴメントの再来を予感だ。


 もちろん、Happinessの新曲である「REWIND」も大いに盛り上がった。エッジの効いたビートと、ロック色の強いギターサウンドに合わせてハードに歌い上げるツインボーカルに、キレとしなやかさが両立するダンスパフォーマンスが際立つ。大人の女性へと成長を遂げ、Happinessらしさを確立した彼女たちが、さらに音楽性を拡大しようとチャレンジした意欲的な一曲である。ステージに舞い上がる炎のように、“熱い”パフォーマンスを堪能することができた。


■輝きの異なるツインボーカル


 Happinessの楽曲に彩りを沿えているのが、夏恋と璃のツインボーカルだ。夏恋の歌声が突き刺すようにまっすぐ届くレーザーライトなら、璃のそれは輪郭がソフトで広がりをみせるサーチライトのような対照的な輝きを見せる。異なる個性が交差して、楽曲に表情が加わっていく。


 夏恋は昨年、同じE-girlsで活動している姉・藤井萩花とのユニット“ShuuKaRen”としてもデビューを果たすなど、ボーカルとしての勢いを感じる。ふだんは愛され妹キャラでありながら、ライブとなればロングストレートのポニーテール、赤いリップにぱっつん前髪、足元はニーハイブーツといったハードなファッションに身を包み、クールに力強くヒップホップを歌いこなす。かと思いきや、やってきたカメラにダブルピースしてみせるなど、クルクルと変化する表情から目が離せない。


 一方、璃はセミロングな前髪をかきあげ、右頬にチャームポイントのほくろをのぞかせるセクシー路線。低めの声と、情緒たっぷりに歌い上げる表現力は、今年新成人とは思えないほどの艶やかだ。「休日に1人で温泉旅行に行くけれど、方向音痴なので迷ってしまう」と『EG style』(フジテレビ)で明かしたフワフワ女子な一面も、ステージに立つとどこへやら。本公演では、ソロでバラード曲「Bright Blue~私の瑠璃色~」を切ない表情で熱唱し、ステージに奥行きを生み出した。


 クール&キュートを使い分ける夏恋と、大人の色気をまとう璃。今後、2人ならではのハーモニーはさらに磨きがかかるだろう。どのような飛躍を遂げるのか、ファンとしてはじっくり見届けたいところだ。


■次世代のキッズダンサーも憧れるパフォーマンス


 パフォーマーそれぞれの個性にも迫ろう。


★リーダーのMIYUUは、もともとソロでダンスパートを担当したときにもユニークな動きを取り入れ、メンバーからもその才能を認められている。「REWIND」でも振り付けを担当しており、今後その分野での活躍も大いに期待できる。


★SAYAKAは、HappinessはもちろんE-girlsのなかでもトップダンサーとして注目を集めている。見事に割れた腹筋がキレのある動きを支え、女性らしい柔軟な動きも得意。本公演でもソロでダンスするシーンが目立った。マイクスタンドやイスを用いたセクシーな振り付けも、SAYAKAが踊ると健康美に溢れるクールなパフォーマンスになる。


★楓は、CanCamの専属モデルも務めていることから、長い手足を活かしたダンスが、実に絵になる。決めのポージングもさすがの一言だ。親しみやすい性格で、メンバーからもいじられることが多い楓。観客との距離も近く、ライトスティックを使ったウェーブを一緒に創り上げる声掛けをするなど、ムードメーカーとしての役割を担っている。


★Happinessのマスコット的存在のYURINOは、とにかく目立つ。小柄でありながら、体をめいいっぱい使ったダイナミックな動き、誰よりも高くジャンプしようとするパワフルさが、彼女の最大の武器。オーバーサイズのB系ファッションもファンの心をくすぐる部分。


★「スダンナ」の愛称で親しまれている須田アンナは、まるで少年のような無邪気さがかわいい。振り付け以外のところでも飛んだり跳ねたりとリアクションが大きく、一つひとつの動きが見ていて楽しい天性のパフォーマーだ。


 そんなHappinessに憧れるキッズダンサーが、今公演ではミニHappinessとして登場。「Autumn Autumn」など数曲をメンバーと共に披露した。YURINOが自分とおそろいのお団子ヘアをつかんでみたり、楓がハイタッチをしたりと、“お姉さんHappiness”が見られるのも微笑ましい瞬間だった。MIYUUやSAYAKAも幼いころからEXILEのキッズダンサーとしてステージを経験してきた。ステージを通じてその“夢”が受け継がれ、途切れることなく新たな才能を持つパフォーマーが成長していくのかと思うと、先々まで楽しみになる。


■各グループの「らしさ」が広げるE-girlsの可能性


 もちろん、Happinessならではのワチャワチャシーンも満載。ライブ・ビューイングのカメラに向かってメンバー同士で肩を抱き合ったり、ハグをしたりと、自然とくっついたりイチャイチャしたりする姿が楽しめるのも、ふだんから仲の良いHappinessならでは。クラブミュージックで魅せるクールさと、ほっこりとするメンバー愛のギャップはたまらない。


 笑顔と熱気に包まれたライブは、あっという間にエンディングへ。「アンコール」の声がやまない会場で、流れてきたのはドクンドクンという鼓動の音と共に、微かに聞こえてくるE-girls楽曲のフレーズたち。そして、ライトアップされたステージには、E-girlsのメンバーが。そのサプライズ演出に、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。


 HappinessもE-girlsとして「DANCE WITH ME NOW」を含めた3曲を披露。19名という人数で踊るとフォーメーションにもバリエーションが生まれ、実力を誇るパフォーマーの群舞は華やか極まりない。ボーカルの人数も増えるため歌の迫力も増す。Flowerの鷲尾伶菜の歌声に合わせて、Happinessのメンバーがパフォーマンスするなど、グループの垣根を越えた組み合わせも新鮮だ。


 E-girlsには、さまざまなユニットや個人の活動が存在する。それぞれが異なるジャンルで個性を伸ばし、表現力を高めて、E-girlsとして結集したときの厚みを増していくのだ。クラブミュージック色を強めるHappiness、コンテンポラリーなダンスパフォーマンスとバラードを得意とするFlowerは、それぞれ単独ツアーを成功させたことで、大きな自信を身につけたに違いない。
グループ同士が切磋琢磨することで、彼女たちのエンターテインメントはさらに進化していくだろう。(佐藤結衣)