F1を買収し新オーナーとなったリバティ・メディアが、新規ファンを獲得するために場当たり的なレギュレーション改訂を行った場合、既存のファンを混乱させてしまうリスクがあると、メルセデスAMGのチーム代表を務めるトト・ウォルフが警告した。
リバティ・メディアは、F1の買収手続きを23日に完了させ、長年にわたってCEOを務めたバーニー・エクレストンは同日に退任した。その動きのなかで、リバティはF1の再活性化を行うと予想されている。
しかしウォルフは、ショーを改革するいかなる動きにも充分な検討が必要と考えており、既存のコアなファンを遠ざける施策を取らないよう、強く警告した。
「我々は、F1を機械を使うスポーツだと再認識する必要があると思う。そのため、レギュレーションに関しての意見は、常にふたつに別れる」とウォルフはインタビューで述べた。
「一方ではあることが気に入らないという人々がおり、一方では満足している人々がいる。それは自然なことだ。だが、ひとつ重要なのは、“ベータテスト”的な勇み足のレギュレーション変更を行わないことだ」
「我々は、適正な評価が済んでいないルールやレギュレーションを施行することで、F1を長く観ているファンを混乱させてはならない」
「科学的アプローチでデータを活用し、他のスポーツやエンターテイメントでは何が有効なのか吟味し、それをF1の持つ偉大な強みと利点に組み合わせなければいけない」
リバティによる買収の一環として、メルセデスF1の元代表であるロス・ブラウンがスポーツ面を見るマネージング・ディレクターに就任し、エクレストンの後任にはチェイス・キャリーが着任。また、ESPNで販売・マーケティング担当上級副社長を務めたショーン・ブラッチスが商業担当取締役として、ブラウンとともにビジネス面を担当する。
ウォルフはまた、ターボハイブリッド時代にメルセデスが圧倒的優位にあるということに励まされていることもあり、F1が完全に衰退していると示唆するのは間違いだと考えている。とは言いながらも、彼も主要な分野で改善が必要なことを認めている。
「2016年シーズンまでの間、我々がチームとしてよくやってきたことを考えれば、観客もとてもポジティブな形で開拓された」
「16年のラスト数戦では、テレビ視聴者数がいくつかのマーケットで記録的な数となった」
「F1人気が停滞しているということが各所で話題になっている。実際のところは、スポーツに関するマーケティングのあり方が大きく変化したことを考慮すれば、我々は非常によくやってきている」
「私は若い世代が昔のように、日曜日の午後2時にテレビを観るとは思えない」
「彼らはスマートフォンなどのモバイルデバイスか、ソーシャルメディアを通じて視聴するだろう。それでも、多くの既存のファンは、F1を楽しんでくれている」
「このスポーツを卑下し、悪く言うべきではない。F1の人気は停滞などしていないのだから」
エクレストンが示してきたSNSや動画配信などへの懐疑的な態度には、任期終盤には大きな批判が向けられた。ウォルフもF1にとってそういったデジタルコンテンツが"盲点"であったことに同意している。
しかしながらウォルフは、リバティがソーシャルメディアと、既存の商業取引のバランスを取る前に、活用方法について理解する必要があると考えている。
「ソーシャルメディアは観客を引き込むためのとても重要なマーケティングツールだ。既存のファンにとっても、将来のファンにとっても」と彼は述べた。
「しかし、長年にわたってF1を放映し、チームの収入にも貢献してくれたテレビ局には、我々の忠実なパートナーがいる」
「我々はそれをデジタルの世界で無料で提供することはできない。デジタルコンテンツはマーケティングツールとして見ることはできるが、決してすべての問題を解決する魔法ではない」