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「非正規にもボーナス」政府ガイドライン案、「待遇差」是正を実現するための課題

2017年01月27日 10:23  弁護士ドットコム

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「同一労働同一賃金」の実現に向けた議論が続く中、政府のガイドライン案が昨年12月に示された。その中に、非正規労働者について、成果に応じてボーナス(賞与)を支給するよう求める項目があり、注目を集めた。次のような内容だ。


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「賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の貢献である有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、貢献に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない」


「非正規にもボーナスを」などの見出しで報じられ話題となったが、労働問題に取り組む弁護士はどう見ているのか。白川秀之弁護士に聞いた。


●ボーナスだけでなく、非正規の待遇全般の改善を目指す

非正規雇用の中には正規雇用と同様の仕事をしていても、給与が正規よりも低く抑えられている傾向があります。特に、賞与・期末手当等の特別手当の給与額については、そもそも非正規には支払わない企業が多く、正規労働者と比べて大きな格差があります。


政府は、昨年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」を発表し、「同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善」に取り組むとしました。


今回のガイドラインは一億総活躍プランに基づいて策定されたもので、基本給、手当、福利厚生等について、正規と非正規との差を設けて良い場合、悪い場合の具体例を挙げるものです。


本来で言うと同一労働同一賃金とあるように、同じ内容の労働には同じ賃金をという原則なのですが、政府が目指しているのは非正規の待遇改善全般のようです。


これまで正規と非正規で、当たり前のようにあった待遇の違いについて、是正を求めていくという観点では第一歩だと言えます。


ただ、待遇差に関する一般的な基準が示されておらず、載っていない事例に対してはどのように考えればいいのかが不明確です。


また、このガイドラインで注意すべきなのは、当初の一億総活躍プランでは、待遇差に関する事業者の説明責任について言及がされていたのが、ガイドラインには説明責任についての言及がない点です(同時期に発表された中間報告には若干記載があります)。


この点は、最終的には待遇差の合理性について労働者、使用者のどちらに証明責任があるかという事にも関わってきます。労働者側が不合理であるとの証明をするのはかなり困難であり、待遇差が合理的であることについては使用者が証明責任を負うべきです。


今後、ガイドラインを元に労働契約法等の改正作業が進められると思いますが、非正規雇用の待遇改善のために、真に実効的なものにしていく必要があります。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/