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SWANKY DANKが47都道府県ツアーで得た充実と課題「自分たちの“思い”がライブには必要」

2017年01月25日 20:02  リアルサウンド

リアルサウンド

SWANKY DANK

 2007年にYUICHI(Gt/Vo)とKOJI(Ba/Vo)の兄弟を中心に結成した4ピースポップパンクバンド・SWANKY DANK。彼らが2016年夏にリリースしたミニアルバム『it is WHAT it is』を携え、9月から自身最長である初の47都道府県ツアー『"it is WHAT it is" TOUR』をスタートした。各地、さまざまなバンドとの対バンで、パンクやラウド・シーンの百戦錬磨のライブ猛者や、草の根のライブ活動でタフに鍛え上げているバンドとしのぎを削る本ツアー。その充実感は、話を聞いたYUICHI、KOJIの精悍な佇まいや、次々に飛び出してくるエピソードからも伝わってきた。キャッチーでアップリフティングなサウンド、親しみやすくエネルギーのあるメロディやハーモニーに定評のあるバンドだが、このツアー経験やバンドや観客との濃厚な時間は、次の活動に確実に反映していくものだと思う。現在、ファイナル・シリーズのワンマン公演を前に、初の超ロングツアーの手ごたえやライブへの思い、バンドとして今掴んでいるものを、ふたりに訊いた。(吉羽さおり)


・今やらなきゃ意味がないなと思った(YUICHI)


ーー9月からスタートした47都道府県ツアーが、あとは沖縄とファイナル・シリーズのワンマンライブ、振替公演を残すのみとなりましたが、体感としてどうですか。


KOJI(Ba/Vo):初日の千葉LOOKがはるか昔のような(笑)。4カ月前なんですけど、歩んできましたね。


YUICHI(Gt/Vo):47都道府県回っていく中で、初めて行った土地で初めて来てくれたお客さんにも出会えて。それがとても良かったです。


ーーバンドとしてのキャリアは2017年で10年目を迎えます。そのなかで、昨年この最長となるツアーを打つことになったきっかけは?


YUICHI:ツアータイトルにもなっているミニアルバム『it is WHAT it is』には、“それが現実さ”みたいな意味があるんです。レコーディングしている最中も、前回のツアーを回っている時も、「いつか47都道府県ツアーをやってみたいよね」という話はずっとしていて。でも、それは「いつか、できる時にやればいいか」で止まってしまっていたんです。その後レコーディング中に、アルバムタイトルは『it is WHAT it is』でいこうとなった時、ずっと話していた47都道府県ツアーも、いつかやろうじゃもう遅いんじゃないかと思って。『it is WHAT it is』には“それが現実さ”って諦めるんじゃなくて、“これが現実だ”に変えてやろうぜっていう思いもこめていたから。じゃあ、47都道府県ツアーも挑戦してみようと、スタートしたんです。


ーーこれまではそのような機会がなかったんですか。


YUICHI:なかったですね。なかったですし、やろうとも思っていなくて。いつかやれればいいやみたいな。でも、今やらなきゃ意味がないなと思って。自分たちの未来のためにも、自分たちのライブの力や自分たちのいろんな気持ちを試すことは、バンドが10年に入る前にやっておかないと、っていう思いでしたね。


ーーSWANKY DANKはパンク・シーン、ラウド・シーンで活動をすることが多いと思うんですけど、となると周りはライブ猛者みたいなバンドばかりですよね?


YUICHI:そうなんですよね。今回のツアーでも最終タームはとくに猛者揃い。Dizzy Sunfistから始まって。


KOJI:Crystal Lake。


YUICHI:SHADOWS、MEANINGっていう、怒涛の戦い(笑)。しかも、ヘトヘトになっての最終タームでその感じで。


KOJI:1カ月旅に出っ放しだったところで、猛者と戦うみたいな(笑)。


YUICHI:そのほかにも、KNOCK OUT MONKEYとか、ライブがすごいENTHとかともやってきたので、自分たちも地力が上がったというか。2013年にスプリット・アルバム『BONEDS』をリリースして回った『BONEDS TOUR』の時と近いかもしれない。


ーーMY FIRST STORY、BLUE ENCOUNT、AIR SWELLとのスプリットで4バンドで回ったツアーでしたね。


YUICHI:それが、自分たちが井の中の蛙だったことがすごくわかったスプリットツアーだったんです。今回の47都道府県ツアーでも、自分たちに足りないものをいろんなバンドと回ることで気づけたというか。楽しませるだけのライブではダメなんだなというのが、すごくよくわかりました。


ーー今回のツアーの対バンはまずどうやって選んでいったんですか。


YUICHI:自分たちでやりたいバンドをピックアップしていきました。47都道府県を回るからには強いバンドじゃなきゃダメだろうと、ライブがすげえかっこいいと自分たちで思うバンドをホワイトボードに書き出して。片っ端から電話していくっていう(笑)。ブッキングは本当に大変でしたね。


ーーNOISEMAKERとは北海道公演の全6カ所を共にしましたね。彼らとはそれ以前にも多く対バンしていたんですか。


YUICHI:もともと仲がよくて。結構今回も熱い話をしましたね。


KOJI:約10日間一緒だったので。


YUICHI:そういうこともなかなかないですしね。一緒にホテルの部屋で飲んだりして。


ーーそういう時ってどんな話をするんですか。


KOJI:彼らとは境遇が似ている部分があるんですよ。音楽の話は結構しましたね。曲作りにおいてとか。


YUICHI:バンドの今の状況、自分たちの立ち位置についても話しましたね。


ーーその現状というのは、ご自身ではどういうものだと感じているんですか。


YUICHI:……赤裸々になってきちゃうかもしれないですけど。まだまだ先があって、すごく足踏みしている状態だっていうのは自分たちでも感じていますね。それは曲にしても、ライブの仕方にしても。今回47都道府県ツアーで気づいたことがうまく出せれば、進んでいけるんでしょうけど。ツアーをやっている最中に、自分たちがどこにいるのかわからなくなるような状況になったことがあって。そんな中、NOISEMAKERと自分たちが今こういうところで足踏みしてるよねとか、ストレスに思っていることとかを話したりして。まわりからどう見られているは正直わからないですけど、自分たちがここから先に行くために、今は満足してないけど次に進むために留まっている状態なんだというか。


ーー確認できたことがあった。


YUICHI:すごく悔しかったんですけどね。ミニアルバム『it is WHAT it is』は自分たちにとっても思い入れがあったし、期待を込めた作品で。作品が悪かったということじゃないんですけど、でもすげえ悔しい思いもしたし、出したことで感じたことがあったんです。


ーーもっといけるはずだと。


YUICHI:そうですね、もっといけたはずじゃないかって。そういう話とか、留まっている自分たちがここから先に行くために何が必要なのかっていう話はしました。本当に赤裸々ですけどね。


ーーそこでしっかり話をして、一緒にライブができるというのはいいバンドメイトができたという感じがしますね。


KOJI:ギターのHIDEには、髪の毛も切ってもらったしな(笑)。


・自分たちの持ってないもの、持たなきゃいけないものもたくさん得た(KOJI)


ーー他の対バンでは先輩バンドが多かったですね。GOOD4NOTHINGやNAMBA69など、そういった先輩のバンドともいろんなお話はしたんですか。


YUICHI:しましたね。難波(章浩:NAMBA69)さんは、やっぱりロックスターだなっていう感じでしたし。GOOD4NOTHINGに関してはもう、ほぼ俺らの直属のつながりというか。


KOJI:音楽性にしてもそうだし。


YUICHI:陽気な人たちですし。ここでは喋れないようなこともたくさんありましたね(笑)。


KOJI:陽気な出来事がね(笑)。宇都宮でNAMBA69とやったライブは灼熱地獄でしたね。初めて「倒れるかもしれない!」って思うくらい、歌っていても、息を吸う量が足りなくて手がジンジンしてきて(笑)。お客さんも盛り上がって、NAMBA69がやってる時点で、天井からしずくがポタポタ落ちてたのに、俺らでまた盛り上がって。吸う空気がない! っていう。


YUICHI:裏でぶっ倒れてたもんね。


ーーロングツアーでは体も心もだいぶ揉まれると思うんですが、そういうなかで得るものとして大きかったことはなんですか。


KOJI:これだけの本数を短い期間に回ったこと自体が宝物になりました。やっている最中は体がしんどかったり、大変だなって思った時期もあるんですけど、一回終わってみて、後はファイナル・シリーズが残っている状況でふと振り返ってみたら、すげえいい経験をしたんだなって。バンドとしても成長したし、自分たちの持ってないもの、持たなきゃいけないものもたくさん得たというか。例えば、今日ここがダメだったなと思ったら、明日修正ができるんですよね。それがすごくデカくて。どんどん修正していって、どんどんライブが研ぎ澄まされていきましたね。


YUICHI:精神的にも少しずつすり減っていくぶん、そのすり減ったところに思いが乗っかっていくんです。パフォーマンスでここから先、体が動かないってなっても、声が出ないと思っても、気持ちで持っていけるようになったというか。楽しいだけじゃなく、技術面でかっこいいだけじゃなく、何かひとつ、お客さんに持って帰ってもらえるようなライブが、このツアー中にできたんじゃないかなと思って。これからフェスに出させてもらった時やいろんな対バンライブで、どうやってこの自分たちで培ったものを出せるかが楽しみになりました。


ーーイベントで何度かライブを拝見していますが、熱いMCもある、一体感を作り上げていくようなステージをしていますよね。今回のような過酷なツアーだと、よりエモくなっていきそうですが。


YUICHI:盛り上げて熱いものを生むだけじゃなくて、何か持って帰ってもらおうという思いは強くなりましたね。やっぱり自分たちの“思い”がライブには必要なんだなって。その時本当に自分たちが思ってることを何かの型にハマることなく、そのまま話せるようになりましたし。


ーーそれは、観客や対バン、ツアーのムードに引き出された感覚ですか。


YUICHI:そうですね、どんどんエモくなっていって。NOISEMAKERと10日間やり始めた頃から(笑)。


KOJI:結構序盤です(笑)。


YUICHI:その辺から、ああそうなんだってエモくなり始め、でも体はボロボロになっていって。


KOJI:エモさだけが残っていくっていう。


YUICHI:ああ、これ大切だなって。メンバーみんなエモかったですね。どんどん自分のやるべきことがわかってきた感じというか。ただ体はボロボロ(笑)。俺なんて、顔面めっちゃ腫れましたからね。


ーー疲労や背負っているプレッシャーで?


YUICHI:薬で治りましたけど、膿の袋ができちゃったみたいです。医者に言われたのは、「疲れが溜まってるんだよ」って(笑)。


ーーそれほどまでに。ちなみにKOJIさんも体に出るものはあったんですか?


KOJI:体調が悪くなった時はありました。その時に1公演だけできなかった場所(鈴鹿公演)があって……それは悔しかったですね。大変申し訳ないことをしたなって。2月に振替公演が決まって改めてCrystal Lakeと行けるので、しっかりリベンジしたいです。何倍にして、ライブで返します。


ーーCrystal LakeはボーカルのRYOさんがアルバム『Magna Carta』(2015年)の時にゲスト参加していたという関係性がありますが、付き合いとしては長いんですか。


KOJI:もう3、4年くらいの付き合いになりますね。


ーー普段は全然違うシーンで活動してるバンド同士ですよね?


KOJI:シーンも全然違うんですけど、知人に「すげえボーカリストがいるから聴いてみてよ」って勧められて音源を聴いたのがきっかけです。それからフィーチャリングすることになって、レコーディングの時にすげえなって思わされましたね。声の魅力がハンパじゃなくて。


YUICHI:それが縁でCrystal Lakeのツアーに誘ってもらったことがあったんですけど……ゴリゴリのラウドの中にバチコーンと入れられてヘコむっていう(笑)。


KOJI:アウェイ感は否めなかったね。


YUICHI:でも、アウェイなだけにめちゃくちゃ燃えました! やっぱりアウェイの方が燃えますよ。


KOJI:「ぶっ潰してやる!」っていう(笑)。


ーーCrystal Lakeはパフォーマンスもアグレッシブですしね。


KOJI:ギターのYudaiがずっと飛んでますからね(笑)。


YUICHI:RYOもスイッチが入ったら別人化するからね。MEANINGのHAYATO(Vo/Gt)もそうだけど、別人化する。


ーー対バンのそういうアグレッシブなパフォーマンスを見ると、その日の自分たちのライブの見せ方に影響が出たりするんですか。


YUICHI:多少の影響はあるかもしれないですけど、それを真似して同じことをやっても彼らには勝てないので。


KOJI:ベースボーカルだから、客席に飛び込むわけにもいかないし(笑)。


YUICHI:彼らみたいにダイブしてたら、コーラスもできないしね(笑)。だからこそ自分たちならどうやるか、どうアグレッシブに見せるかを考えるようになるんです。もちろんダイブをする時もありますけど、それだけじゃなくて、ステージ上で彼らにはないパフォーマンスをどうできるか考えます。アグレッシブさでは彼らの勢いに勝てなくても、俺たちは逆に冷静にしっかり歌を聴かせることもできる。その都度、臨機応変に対応してます。


・俺らが出し切るしかない(KOJI)


ーーSWANKY DANKは自らポップパンク・バンドだと明言していますが、シーンの現状というのはどうですか。


YUICHI:ポップパンクシーンの盛り上がりを復活させたいですね。シーン自体がなくなってしまったとまでは言わなくとも、メロディックに隠れてしまってるところはあると思うんです。それを自分たちがよりデカいものに、メロディックシーンに匹敵するようなでかいシーンにしたい。


ーーラウドやパンク・シーンでは、それぞれに大きなイベントがあったり、ツアーを組んで盛り上げていこうという動きがありますが、ポップパンクとしての盛り上げの起爆剤については考えていたりするんですか。


YUICHI:今のところは考えていないですね。自分たちがいかにポップパンクとして認識されるのかっていうことには挑んでいるんですけど。例えば何か新しいことをやったとしても、「SWANKY DANKってポップパンクだよね」っていう一つの基準があれば、自分たちがどんなことをやってもそれがポップパンクになる。そういうところまで持っていきたいんです。


ーー今回の47都道府県ツアーが、その基盤作りとして繋がっていくんですね。各地の盛り上がりを見て、いい兆しはありましたか。


YUICHI:とにかく人との出会いですかね。例えば、音源を聴いてSWANKY DANKを好きになってくれたけど、ライブは行ったことがないとか、地方に住んでいて大阪や福岡までライブに行ったことはないしなっていう人たちがいたとして。でも、俺たちが彼ら彼女らの地元まで行けば、音源も好きだしライブにも行ってみようかっていう人がすごくたくさんいたんですよね。初めてライブを見る人って聞いた瞬間、手を挙げる率が高かったんです。音源は持っていたけど、ライブは観たことがない。でも今回ライブに来て、別日のチケットを買いましたっていう人も、いっぱいいてくれたので。そういう出会いがあって、もし俺たちが足を運べなくても、逆に足を運んでくれるっていう出会いがこのツアーではあったので。それは大事にしたいなって思いましたね。またすぐ47都道府県行けって言われたら、ちょっと待ってってなりますけど(笑)。今回は会いに行ったから、一度こっちにも会いに来てねって(笑)。


KOJI:これでまたファイナル・シリーズが終わったら、いろいろ考えることがあると思うので。曲作りはつねにしているんですけど。こんな感じにしていきたいという構想はあるので、このツアーを経て面白いものを作れると思います。


ーーワンマンについても伺いたいのですが、今回東京では渋谷TSUTAYA O-EASTという大きな会場になりますね。


KOJI:47都道府県ツアーも挑戦だったんですけど、大きな会場でのライブも挑戦なんですよね。もう、俺らが出し切るしかないというか。いま自分たちができること、47都道府県ツアーを回ってきた、その集大成を見せたい。ワンマンならではの曲もセットリストには入っているので。俺らが伝えたいたくさんのことを少しでも感じてもらえるようなワンマンにしていきたいですね。


(取材・文=吉羽さおり)