男性保育士が女児の着替えを担当することの是非をめぐって議論が起きている。今月20日、熊谷俊人・千葉市長は「男性保育士活躍推進プラン」の策定を発表。Twitterに「女児の保護者の『うちの子を着替えさせないで』要望が通ってきた等の課題が背景にあります」と投稿した。
これをきっかけにネット上では激論が交わされる事態になったが、キャリコネニュースでは、教育評論家の石川幸夫さんと東京男性保育者連絡会の山本慎介さんに男性保育士問題について聞いた。
「娘を男性保育士に着替えさせないでほしい」は「性差別」
「男性保育士活躍推進プラン」では、「性差に関わらない保育の実施」や男性用更衣室といった設備の充実などを謳っている。増加しつつある男性保育士の活躍を促すとともに、男性も積極的に育児に携われるような環境を醸成することが目的だという。
このプランを報告するに際し、熊谷市長は、男性保育士による女児の着替えを嫌がる保護者がいることについて触れた。
「娘を男性保育士に着替えさせたくないと言う人は、同様に息子を女性保育士に着替えさせるべきではないわけですが、そんな人は見たことがありません。社会が考慮するに足る理由無しに性による区別をすることは差別です」
これに対して「女性ばかりでなく、男性も働きやすい職場も必要だと思うのです」、「男性保育士さんが父親のような役目をしてくれたらいいな」と同意する声もあるものの、一方で性犯罪への懸念などを理由に反発する声も相次いでいる。
「幼い子どもは保育士の性別を気にしていない」
教育評論家で、「子育てマイスター協会」の代表理事である石川幸夫さんは、保護者の男性保育士への抵抗感にも一定の理解をしめした。
「性犯罪で処分される教師は3年連続で200人を超えています。そのため保護者の方が警戒されるのも仕方がないかもしれません」
しかし着替えやおむつ替えは、複数の保育士で行っていることも少なくないし、極力同性の保育士が担当するように配慮しているところも多いという。
「それに4歳未満の子どもは保育士の性別を気にしていないことが多いのです。たまに両親が離婚していたり、父親があまり家庭にいなかったりすると、男性に慣れておらず、男性保育士に戸惑う子どもはいます。しかしいずれは慣れるでしょう」
また男性保育士がいることのメリットも大きい。
「男性保育士の方がエネルギッシュであることが多く、子どもたちが刺激を受けることができます。力仕事も得意ですし、保育園の行事に男性目線が加わるという利点もあります。男女双方の保育士がいることで子どもの情緒安定や心の発達に寄与すると思われます」
男性保育士の増加の背景には「社会の多様化」があるとする。
「女性が男性の職場に進出し、逆に男性は女性の職場に進出する。相互進出が進んでいるのだと思います。今後もこうした多様化の傾向は続くでしょう。まだ一部には『保育士は女の仕事』だと思っている方もいるようですが、今後そういった偏見は解消していかなければならないと思います」
また男性保育士を増やしていくにあたっては、ジェンダーにまつわる問題だけではなく、給与面の課題も解決していく必要があるとする。
「保育士は大事な仕事ですから、標準までは給与を引き上げることが大切でしょう。そうしなければ保育士が安心して働くことができません。政府には早急に対応してもらいたいと思います」
熊谷市長「男性保育士と接したことがある方はより理解が広がるでしょう」
東京男性保育者連絡会の山本さんは、男性保育士が女児の着替えやおむつ替えに携われないと業務上支障が出ると指摘している。
「着替えなどの生活介助は、子どもとの信頼関係を築くのに非常に重要です。またあざやケガの有無をチェックして万が一虐待されていたときに発見できるようにしています。着替えやおむつ替えも重要な業務の一環なのです」
男性保育士のメリットについては専門家の間でも意見が分かれているようだ。山本さんは、「男性保育士がいると防犯上役に立つとか、男性保育士の方がダイナミックな遊びができるというのも偏見です」という。
「室内遊びが得意な男性保育士やピアノが上手い男性保育士もいます。男性だから、ということでくくらないでほしい」
熊谷市長は25日、ツイッターに、今後ますます男性保育士と接する人が増えれば男性保育士への誤解も解けるだろうと投稿した。
「日本全体ではまだ不信を持つ方は少なくないでしょう。保育所、男性保育士を知らない人が多数です。しかし、実際に保育所に預けた経験がある方は保育士の専門職を理解し、反対の比率は減るでしょう。さらに男性保育士と接したことがある方はより理解が広がるでしょう(中略)それまでは行政・保育所長などが保育士の職務への理解促進と信頼関係構築、不祥事防止に向けたシステム構築に努め、保護者の不安払しょくと志ある保育士を守る取り組みを進めていきます」
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