トップへ

給与支払い遅延、食堂に大量の鳩…ミャンマー委託先工場の劣悪労働環境、NGOが指摘

2017年01月25日 18:03  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」は1月25日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで記者会見を開き、ミャンマーにある「ミキハウス」と「ワコール」の関連会社の委託先工場に対する調査結果を公表した。工場における労働者の人権侵害の状況と、企業の対応を明らかにした。


【関連記事:「同級生10人から性器を直接触られた」 性的マイノリティが受けた「暴力」の実態】


調査は2016年8月から、ミャンマーの現地NGOと共同で実施。労働者への聞き取り調査の結果、ミキハウスのグループ会社「ミキハウストレード」の委託先工場では、深夜残業や休日出勤の強制、給与の支払い遅延などが報告されたという。ワコールのグループ会社「ルシアン」の委託先工場では、食堂が浸水したり鳩が大量に入ってくるといった劣悪な労働安全環境や、法律で定められた最低賃金以下の賃金しか支払われていないことなどの訴えがあったという。


●「氷山の一角にすぎない」

調査の結果を受けて、ヒューマンライツ・ナウはミキハウストレードとルシアンそれぞれに対して、事実関係の確認と問題の是正を求めた。


ミキハウストレードは1月16日、自社のホームページで第三者委員会による調査報告書を公表し、深夜残業の履歴があったことや、日曜日の勤怠記録が修正液で訂正されていたことなどを認め、労働環境の改善に向けた施策を公表すると表明した。ルシアンは1月25日、自社のホームページで「ミャンマーの取引先工場における労働環境に関する指摘について」とする文書を公表し、労働安全環境の改善を行ったことや、賃金の実態に関する調査を進めていくことなどを報告した。


調査結果について金昌浩弁護士は「今回の問題は氷山の一角にすぎない。公表にまでは至っていないが、ミャンマーに進出している日本の他のアパレル企業に関しても、労働者の権利侵害について様々な声が寄せられている。他の企業も、ビジネスと人権、CSR(企業の社会的責任)の問題について取り組んでいくべき」と指摘した。


伊藤和子弁護士は「欧米では、今自分が着ている服がどういう環境で作られたのかということへの関心が高い。NGOの要請を受けて、最低賃金ではなく生活賃金を保障している企業も多く、日本企業もそのような形を目指していくべきだ。今回のような問題を発生させないために、透明性のある監査体制を実施してほしい」と述べた。


(弁護士ドットコムニュース)