2017年01月25日 10:33 弁護士ドットコム
「全部隣の私に筒抜けなんですが」ーー。電車の中で仕事をバリバリこなす「おじさん」の姿がツイッターで話題になっている。隣に座っていた投稿者によると、タブレットを駆使して、部下にテキパキと指示を送る姿が「未来世紀の上司みたい」でかっこよかったそうだ。
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一方で、タブレットに映る会社名や社員名、営業戦略などが、投稿者から丸見えだったというオチも。投稿はTogetterでまとめられ、「セキュリティだけは昔ながらだったかー」「情報だだ漏れはヤバいでしょ」などの感想がついている。
交通機関での移動中や喫茶店など、公の場で仕事をする人は珍しくないが、企業の機密情報や個人情報が漏れた場合、どんな法的リスクを背負うことになるのだろうか。福本洋一弁護士に聞いた。
一般的に就業規則などで、労働者の「守秘義務」を定めている会社が多いと思います。なので、簡単に盗み見されるような公の場所で、不用意に企業秘密を表示していた場合には、守秘義務違反を理由に「懲戒処分」を受けるおそれがあります。
故意による情報漏洩ではない場合でも、漏洩した情報の秘匿性の高さや会社が被った損害の程度、情報の持出しや漏洩の態様によっては、戒告・けん責や減給処分などの対象にはなり得ると思われます。
また、盗み見された企業秘密が第三者に利用されて、会社が損害を被った場合には、雇用契約上の義務違反又は不法行為に基づき損害賠償義務を負う場合もあります。
たとえば、ファイル共有ソフトを通じて、誤って情報を漏洩させた事案で、損害額の6割や7割を限度として、従業員に対する賠償請求を認容した裁判例もあります。
最近はITを活用して社外でも社内と同様の環境で仕事ができるようになりました。その前提として、企業秘密や個人情報の漏えいを抑止するために、会社の保有情報に対する社外での取扱いルールを詳細に定める企業が増えてきています。
社外での会社の情報の取扱いについては、会社の社内規程におけるルールを確認して遵守することは当然として、自身も情報漏洩を防止する意識を持つことが大切です。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
福本 洋一(ふくもと・よういち)弁護士
弁護士法人第一法律事務所パートナー弁護士、システム監査技術者。2002年同志社大学大学院修了、03年弁護士登録。個人情報・マイナンバー等の情報管理・漏洩対応等を取り扱っており、日本経済新聞社の2015年度「企業が選ぶ弁護士ランキング・情報管理分野」にも選出されている。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/