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CGポルノ裁判、控訴審は罰金刑のみ、一部は無罪…弁護団「問題多い判決」上告の意向

2017年01月24日 14:23  弁護士ドットコム

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コンピューターグラフィックス(CG)で裸の女児をリアルに描いて販売したとして、岐阜市に住むグラフィックデザイナーの男性が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪(製造・提供)に問われていた裁判の控訴審で、東京高裁(朝山芳史裁判長)は1月24日、執行猶予付きの懲役刑などとした一審判決を破棄し、一部無罪、罰金30万円とする判決を言い渡した。


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裁判では、少女のヌード写真を参考に作成された「聖少女伝説」「聖少女伝説2」という2つのCG画像集に収められたCG34点(「聖少女伝説」18点、「聖少女伝説2」16点)が児童ポルノにあたるかどうかが争われていた。


2016年3月の東京地裁判決では、CG34点のうち、31点(「聖少女伝説」18点、「聖少女伝説2」13点)について児童ポルノ性を否定し、残りの「聖少女伝説2」のCG3点について児童ポルノ性を認め、男性に懲役1年、罰金30万円、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。


今回の高裁判決は、一審と同様に3点のCG画像について「児童ポルノにあたる」と判断する一方、「違法性の高い悪質な行為とまでは言えない」として、罰金刑のみに刑を変更した。さらに、児童ポルノの含まれていない「聖少女伝説」の提供行為については無罪とした。


●保護法益を「二枚舌的に使い分けている」

東京地裁で執行猶予付きの懲役刑などとした有罪判決が言い渡されたのに対して、今回の東京高裁判決では、刑が罰金刑のみに変更されたことに加え、一部が無罪となった点が大きく異なっている。一部無罪とされたのは、東京地裁と東京高裁で「罪数(罪の数え方)」の考え方が異なるからだ。


東京地裁は、2つのCG集を提供する行為を「1つの行為」と捉え、全体としてひとつの罪を構成すると判断した。つまり、児童ポルノが一点も含まれていないと認定された「聖少女伝説」を提供した点も含めて有罪判決を言い渡していた。


一方、東京高裁は、2つのCG集の提供行為について、それぞれ罪が成立するかどうか個別に考えるべきだとして、児童ポルノが含まれていないと判断された「聖少女伝説」の提供行為については無罪とする判断を示した。


判決後の会見で、弁護団の山口貴士弁護士は、判決について、「児童を性的な対象とみる風潮を防止する」という、立法時には想定されていなかった法益(法律が守ろうとしている利益)を重視している点や、芸術活動への配慮がないことなどを指摘し、「問題が多い判決だ。是正されなければならない」と最高裁に上告する意向を示した。


弁護団の奥村徹弁護士は、東京高裁の罪の数え方にも問題があると指摘した。


「(画像に)描写された児童の権利侵害を重視すれば、ひとつひとつの行為が罪になると考えられる。一方で、裁判所が言う(児童を性的な対象とみる)社会的風潮を防ぐということを重視するなら、全体をひとつの行為と考えることになる」


東京高裁が、児童ポルノ禁止法の保護法益について、有罪とする根拠としては「児童を性的な対象とみる風潮を防ぐ」という点を重視する一方、罪の数え方の場面では、「児童それぞれの権利侵害を防ぐ」という点を重視しているとして、保護法益を「二枚舌的に使い分けている」と批判した。「実務的には重要な点なので、最高裁ではこうした点についても問うていきたい」と述べた。


(弁護士ドットコムニュース)