トップへ

松坂桃李の“影”と濱田岳の“光”、堤ワールドをどう築く? 『視覚探偵 日暮旅人』第1話レビュー

2017年01月23日 19:42  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 1月22日に第1話が放送された『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)。2015年11月に放送されて話題となった『金曜ロードSHOW!特別ドラマ企画 視覚探偵日暮旅人』が、連続ドラマとして帰ってきた。


参考:濱田岳、個性派俳優としての非凡な才能 チャーミングかつトボけた役柄の魅力を探る


 同ドラマは、山口幸三郎による『探偵・日暮旅人』シリーズを『SPEC』(TBS系)などの堤幸彦が手がけたヒューマンミステリー。探し物専門の探偵・日暮旅人(松坂桃李)が、目に見えないモノを“視る”ことで事件を解決する模様を描く。五感のうち聴覚、嗅覚、味覚、触覚の4つの感覚を喪った旅人。唯一残った視覚は研ぎ澄まされ、目に見えないはずの匂いや温度、人の感情までも色や形として視ることができる。


 一見、視覚をテーマにしたちょっと変わった探偵ドラマのように思える。だが、蓋をあけてみるとちょっとどころではない。“かなり”変わっている。一般的な探偵ドラマとは、ひと味もふた味も違うのだ。というより、堤幸彦特有の世界観が前面に押し出されているというべきか。『探偵・日暮旅人』の世界観と堤の相性が良いというべきか。物語の随所に遊び心が散りばめられており、シリアスさと小ネタによる笑いの塩梅が絶妙なのだ。なんともいえない面白さが癖になる。


 さらに、登場人物ひとり一人のキャラクターが際立っており、個性が強い。たとえば、大人顔負けの発言をするおませな保育園児・百代灯衣(住田萌乃)。旅人のことを「パパ」と呼び、一緒に暮らしているが血は繋がらない。本当の父親は産まれた時からおらず、母親の顔も覚えていないという家庭環境が複雑な女の子。時折、悲しそうな表情や暗い顔をするが、普段はしっかりしていて大人びている。また、6歳の女の子でありながら、折り紙でダイオウグソクムシを作るなど渋い一面も。


 旅人の主治医である榎木渡(北大路欣也)は、榎木診療所の所長。仕事中にもかかわらずお酒を飲んだり、「いや~ん」が口癖のセクシーナースとイチャイチャしていたりと、パンチが効いている。また、ヤクザ相手の自由診療や診療所の壁に“ヤクザいし”とふりがながふってあるポスターを飾るなど、とにかく型破りな医者である。


 ほかにも、灯衣の担任である小野智子(木南晴香)や、破天荒な一面をもつ女刑事・増子すみれ(シシド・カフカ)など、ぶっ飛んだキャラクターが目立つ。


 そして、何よりこのドラマの要となっているのは旅人を演じる松坂桃李と雪路雅彦を演じる濱田岳のコンビネーションのよさではないだろうか。旅人を兄のように慕っている雪路は、探偵事務所のパートナー。旅人と灯衣とともに暮らしており、奇抜なヘアスタイルと派手な服装が目を引く。この、旅人と雪路のバランスがいい。


 旅人はある事件をキッカケに、視覚以外のすべての感覚を失っているためか、影がある。話し方は柔らかく、性格は穏やか。しかし、どこか空虚であり、“生”を感じさせない。謎も多く、狂気じみた一面も垣間見える。そんな旅人とは対照的に、雪路はいつも明るく、ムードメーカー的な存在。口は悪くがさつだが、人情味に溢れている。服装も、紺や茶色など地味な色かつシンプルなアイテムを着用する旅人と、カラフルな配色かつ装飾や重ね着などでゴテゴテしている雪路。


 正反対のキャラクターであるからこそ、互いの個性が際立つ。そして何より、松坂と濱田だからこそ関係性が自然なのだ。濱田は「主演の松坂桃李くんを、僕なりに支えて行きたいと思います」(引用:公式サイト)とコメントしている。濱田演じる雪路が旅人を支えるように、実際の松坂と濱田の関係性も似ているのかもしれない。2人の間に生まれる空気感は自然で、安定感がある。また、松坂、濱田ともに若手ながら経験豊富なため、表情や仕草が妙にリアルだ。堤が作り上げた世界観にも、違和感なく溶け込んでいる。


 旅人の幼少期に一体何があったのか、またヒロインである山川陽子(多部未華子)は旅人の過去にどう関係するのか。まだまだ謎が多い『視覚探偵 日暮旅人』。今後の展開が楽しみだ。(文=戸塚安友奈)