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「独身者は無理に幸せになろうとしない方がいい」ーー 『超ソロ社会』著者の荒川和久さんが語る

2017年01月22日 12:41  キャリコネニュース

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未婚化や晩婚化が叫ばれ始めて久しい。このまま未婚化や晩婚化が進み、離婚率が上昇したり、配偶者と死別したりする人が増え続ければ、2035年には15歳以上のほぼ半数が独身という「超ソロ社会」が到来する……。

この度 発売された『超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)のなかで著者の荒川和久さんは、そんな超ソロ社会へ向かう日本の実態と対処法を著わしている。

自身も独身だという荒川さんは、博報堂でソロ活動系男子研究プロジェクトのリーダーを務める、独身研究の第一人者。結婚する意志のない人をソロ男(そろだん)・ソロ女(そろじょ)と呼び、その生活実態や価値観を調査している。

同書の刊行を記念して、下北沢で開催されたイベント「独身大国ニッポンの歩き方」では、著書の荒川さんとバラエティプロデューサーの角田陽一郎さんが恋愛や結婚について語った。

猫好きは結婚できない!? ソロ男の特徴

「2035年になると、15歳以上の独身者人口と有配偶者人口はほぼ同数になります。その頃には、男性の3人に1人、女性でも5人に1人が生涯未婚になると予測されます」

イベントは、衝撃的な人口予測の紹介とともに始まった。現在でも、生涯未婚率は男性で23.4%、女性で14.1%と80年代よりも格段に上昇しているが、今後はその傾向がより一段と強まるようだ。ますます増加するソロの人々にはどのような特徴があるのだろう。今回の対談では、ソロ男の生態に焦点が当たることになった。

荒川さんが行った調査では、「夜寝るときに彼女や奥さんと同じベッドで眠りたいか」という質問に対して、ソロ男の4割以上が「寝たくない」と答えている。一方で、既婚者は「一緒に寝たい」と答える人が多いという。

ソロ男には「心理的にも物理的にも、ここからは誰にも侵入してほしくないという不可侵の聖域があるのではないか」というのが荒川さんの見立てだ。

角田さんは、恋愛に限らず、友人関係においても「聖域」があるという。

「本当の友達ってなんだろうと思ったときに、僕には本当の友達がいないと思ったんです。仕事仲間はいるけれど、友達はいない。それは独り寝がいいのと同じなのかもしれません。自分の心の中にそれ以上踏み込まれたくないんです」

ソロでいる人を好む人は、そうした「聖域」に人が踏み込むことを厭う傾向にあるのだろう。

また、荒川さんによれば、結婚する人としない人は合鍵に対する考え方も違う。「合鍵を渡せる人は結婚できる」が、合鍵を渡さない人は結婚しないという。さらにはなぜか猫好きは結婚せず、犬好きは結婚しているという嗜好の違いも。確かに猫好きには孤独を愛する人が多いイメージがある。

男女のすれ違い 女は「金が結婚のメリット」で、男は「金がなくなるのが結婚のデメリット」

国立社会保障・人口問題研究所が実施している出生動向基本調査では、独身者に対して「結婚の利点」と「独身の利点」を尋ねている。

同書では、この調査結果を男女の差分で分析。女性は「経済的に余裕がもてる」ことが「結婚の利点」だと答えている人が男性よりもはるかに多かった。しかもこの回答は年々増加している。その一方で「愛情を感じている人と暮らせる」という女性の回答は減少しており、「愛情じゃなくて金」という世知辛い結果となった。

これとは逆に「独身の利点」としては「金銭的に裕福」を挙げる男性が多い。これについて荒川さんはこう語る。

「女性は結婚を経済的余裕が持てるからいいと考えていて、男性は独身を経済的余裕が持てるからいいと考えている。つまり、女は『金をよこせ』と思っていて、男は『金を取られる』と思っているわけで、こんな人たち同士がマッチングされるわけがありません」

ソロに希望はあるのか? ソロたちの幸せへの処方箋

未婚化や晩婚化が進んだ現代でも、「結婚するのが当然だ」と考えている人は多い。ある年齢以上で未婚のままだと「性格が破たんしている」「マザコンなのではないか」と思われ、あげく「キモい」の一言で片づけられてしまう。

そのため、独身男性の中には、「結婚できない俺は一人前ではない」と自己否定してしまう人も多い。「誰も自分を認めてくれない」と感じ、満たされない承認欲求を抱えている。

「結婚していなくても、何らかの社会的役割を果たしているのだという承認感や達成感を感じられないと、独身者はずっとネガティブなまま生きることになってしまう」

こうした状況で、ソロの人々はどうすれば幸せに生きていけるのか。

「特に独身男性は、消費によって幸福を感じるという傾向があります。ドーパミン消費というんですが、それを続けるとアイドルやメイド喫茶にお金をつぎ込むように、次第に感覚が麻痺してしまいます。無理に幸せになろうとすると、皮肉にも逆に幸せを感じにくくなります。無理に幸せになろうと自分を追い込むことをやめる。そこからはじめてはどうでしょうか」

そもそも結婚したからといってハッピーエンドというわけではない。高齢化が進めば、配偶者と死別する人も増える。離婚率も上昇しており、一度結婚してもまたソロに戻る人も少なくない。角田さんは、テレビドラマに例えて語っていた。

「テレビドラマの例でいうと、結婚は『ロングバケーション』の最終話だと思っている人が多い。でも、結婚は『渡る世間は鬼ばかり』の第1話なんです。赤城春恵さんとのすごいバトルがやっと始まって、えなりくんが大学に行くまで続くんですよ」

結婚しない人や離別・死別してソロで生活する人が増えつつある日本社会。それぞれの生き方を認め合い、誰もが幸福を感じられるようになることを祈るばかりだ。

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