いまや仕事に欠かせないメールですが、これに「萌える」という人がいるから驚きです。しかも単なるビジネスメールではなく「社員からのメール」が大好物で、休日に「じっとり眺めている」というのです。
1月13日、はてな匿名ダイアリーに「会社員メールに萌える」という記事が投稿されました。その萌えポイントを並べた文章に、意外と共感させられる人が続出。はてな匿名ダイアリーの「週間おもしろ1位」になり、投稿から1週間経とうとする今も、550以上ついたブックマークはじわじわ増え続けています。(文:篠原みつき)
「滲み出る自意識。思いやり。苛立ち」
投稿した人物は、どんな仕事か年齢も性別も明らかにはしていませんが、プライベートより断然、仕事のメールが楽しくてしかたがないとのこと。それも、フリーの人よりも「会社員のメールが最高だ」といいます。
「会社員のメールは『ちゃんと』してなくちゃいけない。端的に要件を伝えるべしというルールも共有している」とした上で、醍醐味をこう語ります。
「その強固な型があってなお、滲み出る自意識。思いやり。苛立ち。威嚇。同情。軽蔑。真摯さ。型が強烈であればあるほど、そこからはみ出てくる個性に萌える。あと、基本的にみんな失礼のないようにしてるはずなんだけどそれがうまくいってないほど萌える」
なるほど。会社員といえば会社を代表して伝達や交渉をするわけで、「簡潔に、明瞭に、礼儀正しく」という基本、つまり「強固な型」を踏まえた上で、それを行なわなくてはなりません。しかし、そんな制約がありながら、分かってしまう個性や感情がある。投稿者は、文章からそれを読み取ることを無上の喜びとしているわけです。
さらに、「まったく改行できないお偉いさん」なんか最高だし、「行間でなんか醸し出してくる手練れもいてドキドキする」と微細な萌えを語り、「『よろしくお願いいたします』を『宜しくお願い致します』って書く人は大抵いい人」など、漢字の使い方や文体から、相手の性格や能力まで独自の分析をしています。仕事中にも関わらず余裕があるなと感じる一方で、色々見抜かれていると思うと恐ろしい気もします。
会社の仕事を10倍楽しくなる? あなたも社員メールで萌えてみよう
しかし、内容は「よくできたビジネスメールあるある」とも受け取れます。はてなブックマークのコメントは、共感する人が次々とコメントを寄せました。
「おそらくスーツ萌えと似たようなジャンル」
「お世話になっております。っていう出だしじゃなくて、いきなり 佐々木です。とかいう出だしで来る人まじどきっとする」
「言葉は人の生まれ育ちを表し、文体・文章は人の生き様を表す」
中でも、清少納言の「枕の草紙」を応用し人気コメント一位になったこちらは秀逸です。
「メールは会社員。やうやう白々しくなりゆく時候の挨拶、すこし間をあけて、苛立ちたる本題の細くたなびきたる」
これをみると、メール萌えを披露した投稿者の文章は、「春はあけぼの…」と四季の美しさを讃えたこの古典にちょっとだけ似ていると気づかされます。ゆるく自分勝手に萌えポイントを挙げているようでいて、じわじわと共感してしまう説得力と面白さがあるのです。
投稿者は「会社メールに萌えるようになってから本当に毎日たのしくて」と言いますから、会社の仕事がつまらなくて耐えられない人は、メール萌えに目覚めてみてはいかがでしょうか。