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“女の子”でいられるのはいつまで? 『東京タラレバ娘』を観て考えたこと

2017年01月19日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 「あのとき、勇気を出していタラ」「もう少し痩せていレバ」。私たちは日常でよく“タラレバ”話を耳にする。と同時に、無意識のうちに自らも会話の中で「~タラ。~レバ」と口にしていることが少なくない。そんなタラレバ話に対して、厳しい現実を突きつけるドラマ『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)の第1話が、1月18日に放送された。


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 同ドラマは、『海月姫』などで知られる漫画家・東村アキコによる同名人気コミック(講談社『Kiss』で連載中)を実写化したラブコメディ。タラレバ話に花を咲かせる“タラレバ娘”たちが、幸せを探して奮闘する模様を描く。


 “30歳、独身、彼氏ナシ”の(売れない)脚本家・鎌田倫子(吉高由里子)は、親友である香(榮倉奈々)と小雪(大島優子)の3人でタラレバ言いながら女子会ばかり。そんな中、金髪イケメン男・KEY(坂口健太郎)に「タラレバ女!」と言い放たれる。その言葉をキッカケに、今まで目をそらしてきた厳しい現実に直面し、ハッとするタラレバ娘たち。言い訳ばかりして、様々なことから逃げてきた自分たちに気づき、己と向き合いはじめるのだった。


 KEYは自分たちのことを“女の子”と名乗る倫子らに、「だいたい女子でもないのに女子会だの」、「いい歳した大人は、自分で立ち上がれ。もう女の子じゃないんだから」と言い放つ。確かに、“女の子”であることは何歳まで許されるのだろうか。“女の子”であり続ければ、つまずいた時には、誰かが手を差し伸べてくれるだろう。それが当たり前とすら思ってしまうかもしれない。だが、人は必ず歳を取るし、いつまでも“甘い世界”で生き続けるわけにはいかない。「もう女の子じゃない」この一言がズシリと心に刺さる。


 8年前、ダサいという理由だけで早坂(鈴木亮平)をフッた倫子。彼が立派なプロデューサーになった今、逃した魚が大きかったことに気づき、倫子は告白しようとする。しかし、早坂にはすでに彼女ができていた。以前、自分のことを好きだったから大丈夫という根拠のない自信を持っていただけにショックは大きい。同時に「穴があったら入りたい」と思うほど、自分の浅はかさを恥ずかしく思っていた。


 そんな中、ひとりで立ち上がることすらできない倫子は、今まで見下していた人たちが実は自分より優れていたことを知る。「いつもあんまりイケてないカップルとか家族連れのこと上から見てたけど…みんなすごいよなぁって」、「『つまんない男と結婚したよね』って同級生を哀れんで、合コンとか婚活に一生懸命な子たちをバカにして」と、今までの自分の言動を振り返った。「私たちはずーっとベンチにいただけ。いつも試合には参加しないで、みんなが頑張って戦ってるのをベンチの中から見物して、偉そうなことばっかり言ってただけ。そのくせ、チャンスがあればいつでもいけるって自信満々で、一番美味しい場面でホームランを打てるって信じてた」と、自分の傲慢さや何もしていなかったことに気づく倫子。


 この言葉、身に覚えがある人は多いのではないだろうか。誰しも傷つくのは怖い。自分という人間が特別な存在でありたい。だから、自分よりも下である誰かを作り出し、安堵する。現実から目を背けたいがゆえに、「あの人よりはマシだから」「でもどうせあの人はこうだから」と決めつけ、“私の安全地帯”を確保しようと足掻く。ただの幻想に過ぎないのに気づかないふりをしているのだ。私は頑張らなくても、きっといつか理想の王子様が迎えに来てくれると信じて疑わない。だから妥協はしたくないと声高らかに宣言する。幼い日に読んだおとぎ話の中から抜け出せないばかりか、どっぷりハマっていることにも気づかずに。


 『東京タラレバ娘』は、私に現実を突きつけるドラマだ。目を覚ませ! 現実を見るんだ! と頬を思い切りひっぱたかれたかのような衝撃を与える。世の女性たち、ひいては男性たちの心をも深く抉ってくるのだ。同時に、タラレバ娘たち同様に気づかされ、ハッとすることも少なくない。第2話では、どんな現実を突きつけてくれるのか、怖い反面楽しみでもある。


(文=戸塚安友奈)