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Little Glee Monster、“最初の夢”武道館公演を達成 360度ステージで響かせたハーモニーの強靭さ

2017年01月19日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真=三吉ツカサ(Showcase)

 Little Glee Monsterが1月8日、東京・日本武道館にて単独ライブ『Little Glee Monster LIVE in 武道館~はじまりのうた~』を行なった。グループ結成以降、「メンバー全員が学生のうちに武道館で歌う」ことを目標のひとつに掲げてきた彼女たち。昨年1月の1stアルバム『Colorful Monster』リリースインタビュー(参照:Little Glee Monsterが目指す、ボーカルグループとしての夢「学生のうちに武道館で歌いたい」)でも、メンバーはそのことについて目を輝かせながら語っていたが、あれから1年でここまで到達することになるとは……しかし、改めて2016年の大躍進を振り返れば、それも納得いく結果のはずだ。


 ライブ当日はあいにくの雨だったが、武道館は1万3000人という超満員の観客で埋め尽くされた。チケットが即日完売したというのもなるほど、頷ける話だ。会場に入ってまず驚かされたのが、ステージ後方の1階席はもちろんのこと、2階席までもが“ガオラー”(=リトグリのファンの総称)たちで埋め尽くされていたこと。ここまで客席が解放された武道館を久しく目にしていなかったし、なによりもこれが彼女たちにとって初の武道館ワンマンという現実を思うと驚き以外のなにものでもない。また、ステージセット自体も決して大掛かりなものではなかった。バンド隊の楽器を囲むかのように楕円形でランウェイが設置されていたり、リトグリのメンバーカラーをあしらった花道が客席に向けて6方向に伸びていたりという仕掛けはあったが、大会場でおなじみの大型LEDスクリーンはステージから天井寄りに長方形の大きなものが1セット設置されているだけ。この時点で、今日は“歌を聴きに”来たんだなということを強く実感させられた。


 定刻を過ぎ会場が暗転すると、場内には10代と思わしき女性ガオラーの大歓声が響き渡る。そしてステージに誰もいない状態で、リトグリが常々カバーしてきた「Seasons Of Love」を1人ずつ、アカペラで歌唱。歌っているメンバーと同じメンバーカラーの花道にスポットライトが当たると、歓声はさらに大きくなり、最後に6人のハーモニーが会場を包み込んだところで彼女たちが姿を現す。「武道館ーっ、みんな会いたかったよーっ!」という挨拶から、オープニングナンバー「SAY!!!」へと突入。白を基調とした衣装にタオルを手にしたリトグリは、サビに突入するとガオラーたちとともに頭上でタオルをクルクル回して、早くもステージと客席の一体感を高めることに成功した。また、曲後半のブレイクでは生バンドの演奏もない無音の中で芹奈が伸びやかなソロを聴かせる。その力強くも透き通るような歌声は、いかにこの日を待ち望んでいたかというポジティブな思いに満ち溢れていた。


 その後も「放課後ハイファイブ」「My Best Friend」とシングルナンバーを連発。今回のライブでも昨年の野音ワンマン(参照:http://realsound.jp/2016/09/post-9089.html Little Glee Monster、ブラスセクション追加の野音公演で生まれた新しい「調和」 )同様に、ブラスセクションを含む7人編成の生バンドがリトグリを支えるのだが、今回は坂東慧(Dr.)、笹井BJ克彦(Ba.)、半田彬倫(Key., Piano.)、宮本憲(Gt.)、吉澤達彦(Tp.)、榎本裕介(Tb.)、本間雅人(Sax., Key.)という凄腕ミュージシャンたちがリトグリ晴れの舞台をサポート。そんな彼らの名演を背に、リトグリの面々はいつも以上に安定した、みずみずしさとディープさが混在した歌声&ハーモニーを聴かせてくれた。


 最初のMCではMAYUが「(席によっては)見えにくいとかあるけど、絶対一人ひとりに歌を届けるから」と力強く宣言すると、続けて芹奈も「私たちとガオラーの夢だった武道館。今日は最高の日にしよう!」と客席に向けて語りかける。そこからは「私らしく生きてみたい」を筆頭に怒涛の構成に突入。2日前にリリースされたばかりの2ndアルバム『Joyful Monster』からの新曲を交えつつ、これまでの活動の集大成といえるようなセットリストで観るものを楽しませてくれた。


 このライブ前半の見どころは、まさにこのブロックで披露された新曲「Catch me if you can」から「Feel Me」「NO! NO!! NO!!!」にかけての3曲だろう。全編英語詞で歌われる「Catch me if you can」では、映画『ドリームガールズ』を思わせる往年のR&Bグループ的ラメ入りドレスを身にまとった6人が、息の合ったダンスを見せていく。続く「Feel Me」では実年齢を忘れてしまうほどの艶かしいボーカルを響かせ、「NO! NO!! NO!!!」ではハットやステッキ、椅子を用いたエンタテインメント性の高いパフォーマンスで観る者を圧倒させた。この演出は昨年春の全国ツアー(参照:http://realsound.jp/2016/04/post-6935.html Little Glee Monsterが全国ツアーファイナルで見せた成長 グループの新たな可能性を探る)でも披露済みだが、1年近く経った現在のパフォーマンスのほうがより説得力が増していたのが何より印象的だった。


 ライブ中盤には、リトグリの面々とバンドメンバーとの掛け合いも用意。かれんはギター、芹奈はドラム、MAYUはトロンボーン、アサヒはキーボード、manakaはサックス、そして麻珠はベースと、それぞれスキャットで掛け合いを繰り広げ、その一歩も引かない熱量に目と耳を奪われた(アサヒのみフェイクではなく、「ポテト」など好きなものを口にするという、いかにも彼女らしいジョークも用意)。そこから、ニューアルバム『Joyful Monster』にちなんで“JOY(=喜び)”をテーマにしたアカペラメドレーを展開。ベートーヴェン「歓喜の歌(喜びの歌)」を軸に、「うれしい!たのしい!大好き!」(DREAMS COME TRUE)や「じょいふる」(いきものがかり)といったJ-POPの名曲、ファレル・ウィリアムス「Happy」の日本語詞バージョンなどを交えつつ、圧巻のハーモニーで観る者、聴く者を引き込んだ。


 さらにここから、「オレンジ」「小さな恋が、終わった」、そしてゴスペラーズのカバー「永遠に」とバラード3連発が続く。リリースからまだ日の浅いニューアルバム収録曲の「オレンジ」だが、このバラードは今後のリトグリにとって非常に重要な1曲になるのではないかとこの日実感した。それは、続く「小さな恋が、終わった」と対になったとき、双方の魅力がさらに増したことからもうかがえるはずだ。そして「オレンジ」ではアサヒが、「小さな恋が、終わった」では芹奈がそれぞれ大きな見せ場を持つように、「永遠に」では麻珠が大きな役割を果たす。1万3000人が360度全方向から見つめる武道館という特殊な環境でも、彼女はブレイク後のソロパートを見事に全うしてみせた。


 「人生は一度きり」から始まる終盤パートでは、ひたすら彼女たちの歌とハーモニーに酔いしれ、こちらも知らず知らずのうちに笑顔になっていく。そして、最後の曲に入る前にmanakaが「1曲目からここまで、結成してからのいろんなことを思い浮かべながら歌ってました。この舞台に立てたのは、本当にいろんな人のおかげやと、改めて感じています」とメンバーや家族、スタッフ、そしてガオラーに向けて感謝の言葉を送る。続けて、「武道館はまだまだ通過点。私たちは2020年の東京オリンピックで歌いたいし、世界に活躍する日本人アーティストになりたいんです。まだまだ大きな夢はありますが、みんなの手を絶対に離さないような歌を、リトグリはこれからも歌っていきます!」と力強く宣言してから、本編ラストナンバーである「はじまりのうた」を歌唱。改めて今日からが本当のスタートなんだと言わんばかりのこの曲では、MAYUやかれんなどメンバーの瞳に光るものも見え隠れし、曲後半のブレイク後の芹奈ソロパートでは感情をむき出しにした彼女が歌につまる場面もあった。それに続く6人によるボーカル&ハーモニーは、これまで観てきたリトグリのステージの中でも、間違いなく一番エモーショナルなものだった。そんな気持ちの入りまくったパフォーマンスに対し、会場のガオラーたちからは盛大な拍手が送られた。


 アンコールは「君のようになりたい」から軽やかにスタート。ライブTシャツに着替えた6人は先ほどまでの涙から一変、同曲や「Happy Gate」を歌いながら客席に笑顔を振りまく。ここまで全力のパフォーマンスを続けてきた彼女たちだが、その歌声からは疲れなどまったく感じられない。1曲1曲を丁寧に、大切に歌うその姿は、ひとつの夢が実現した今日という日が過ぎ去ってしまうことを名残惜しんでいるようにも見えた。


 ピースフルな「空は見ている」でライブは終わったかに思われたが、それでもガオラーたちはアンコールを求め続け、ついにはダブルアンコールが実現。スクリーンに初期から現在までのリトグリの活動軌跡が映される中、6人はバラードバージョンの「青春フォトグラフ」をしっとり歌い始める。途中からバンド演奏が加わり、シングルバージョンと同じアレンジに変わると、スクリーンに「この曲だけ撮影OK」の合図が。ガオラーたちはもちろんのこと、ステージ上のメンバーもセルフィーを楽しむ和気あいあいとした空気が武道館を包んだ。そしてラストにmanakaが「これからも全力で走っていきます! 応援してね!」と叫んでライブを終えると、芹奈はその場にへたり込んでしまう。この日に向けてすべてを調整してきた6人の姿は、まさに全身全霊という言葉がぴったりだった。


 「好きだ。」が流れる中、メンバーはガオラーに挨拶をしようとランウェイを歩き回る。すべて挨拶が終わった後もこの場から去ることが名残惜しい6人は、最後の最後に「好きだ。」をアカペラでプレゼント。いかにもリトグリらしいやり方で、初の武道館ライブを締めくくった。


 とにかく、最初から最後まで満足のいくライブだった。夏の野音ワンマンを観た際に感じた不安は完全に解消されており、最初から最後まで一切のパワーダウンは感じられなかった。もちろん、今後の課題もゼロではない。初のアリーナワンマンを必要最低限の演出のみで乗り切った彼女たちだが、会場の大きさに見合ったパフォーマンスというものを今後は習得することも必要だろう。とはいえ、彼女たちの活動スタンスにアリーナ会場が常に必要なものかどうかという問題もある。どんなに大きな会場になっても、普段のホール会場と同じクオリティを保てるよう、歌やパフォーマンスの技術を磨き、それに伴い体力をつける必要もある。オーディエンスの数や会場の大小にとらわれず、常にどこでも武道館で見せたレベルのステージを披露できるようになったとき、リトグリはさらに大きな存在になれるはずだ。(西廣智一)