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トランプ大統領誕生の日に全米のアート機関がスト? 著名美術家も賛同

2017年01月19日 12:31  CINRA.NET

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『J20 Art Strike』ビジュアル(Courtesy of J20 Art Strike)
■仕事を休んでストリートに出よう――美術館やギャラリー、劇場に呼びかけられた「アートスト」

1月20日に控えるドナルド・トランプの大統領就任式にあわせて、有志のアーティストや美術評論家による「アートストライキ」が計画されています。

『J20 Art Strike』と名づけられたこの運動は、「NO WORK NO SCHOOL NO BUSINESS」をスローガンに掲げ、就任式当日の1月20日に美術館や劇場、ギャラリー、コンサートホール、美術大学といった文化施設に閉鎖を呼びかける内容。ビジュアルには「反ファシスト文化戦線に向けて、ストリートに出よう」と記されています。トランプ大統領就任に反対する市民によって、1月20日には全米で多くのストや抗議運動が計画されており、これに連帯を示すものとなります。

<私たちはこのアートストライキを「トランピズム」――すなわち白人優位主義、女性嫌悪、外国人嫌悪、軍国主義、少数独裁政治などの寄せ集めから成るおぞましい考え方――が当たり前になっていくことに対抗する戦略の1つだと考えます。(J20 Art Strike声明文)>

この声明の賛同者として名を連ねているのは、リチャード・セラ、シンディ・シャーマン、バーバラ・クルーガー、ジョアン・ジョナス、ハル・フォスターをはじめ、アーティスト、評論家、キュレーター、ジャーナリスト、ミュージシャン、デザイナーなど現時点で500人以上。文化機関に対するストではなく、美術館や劇場などの施設を、抵抗のために考えたり、見たり、感じたり、行動したりすることを始める場として見直すことを目的としています。

■ストライキは果たして妥当な抵抗の手段なのか? アート界の反応は賛否両論

ストライキを呼びかけられた文化施設関係者の反応はさまざま。『J20 Art Strike』のオフィシャルサイトに掲載されたリストによると、Lisson Galleryなど30を超えるギャラリーや非営利団体がこの運動にあわせて1月20日にスペースをクローズすることを表明しています。

一方でニューヨーク近代美術館やグッゲンハイム美術館は、現時点では通常通り開館する予定。またホイットニー美術館、ロサンゼルス近代美術館のように、1月20日は入場料を投げ銭や無料に変更して開館する美術館もあり、アートストライキの動きにあわせて閉館する美術館は多くはなさそう。

開館する理由としては、通常通りオープンするロサンゼルス・カウンティ美術館のミランダ・キャロルが『ニューヨーク・タイムズ』の取材に対し、「私たちの全てのプログラムやミッションは、いつのときもインクルージョンを表現すること、全てのカルチャーを深く理解することです」と答えているように、市民の開かれた議論の場であり、多様性を重んじる場であろうとする立場から、館の門は閉じないとする考えが主流のようです。

また同紙の取材によるとニューヨーク郊外の現代アート美術館ディア・ビーコンを運営するディア財団は、当日はオープンする予定だが、ストライキに参加したいスタッフには欠勤を許可するそう。さらにイギリス『ガーディアン』紙のアート評論家ジョナサン・ジョーンズが同紙のウェブ版に発表した記事をはじめ、1日限りの運動の有効性について懐疑的な見方を示す意見も。アート関係者の間で反トランプという思いは一致しているように見えても、対抗する手段については様々な意見が出ています。

■音楽界、映画界からも沸き起こる反トランプの声
トランプの大統領就任を巡っては、大統領選挙時にも多くのミュージシャンが怒りや失望の意を表明。オバマの就任式ではBeyonceらがパフォーマンスを行ないましたが、トランプの就任を祝いたがるアーティストは少なく、エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、KISS、ブルース・スプリングスティーンのコピーバンドをはじめ多くのアーティストが、式への出演オファーを拒否したと明らかにしています。

また式には民主党の議員らがボイコットを表明しているほか、当日全米で計画されているデモや抗議運動は過去最大規模になる見通し。就任式翌日の1月21日には『ワシントン女性大行進』が行なわれ、ドラマ『アグリー・ベティ』の主演で知られるアメリカ・フェレーラやスカーレット・ヨハンソン、ケイティ・ペリー、ジュリアン・ムーア、エイミー・シューマーらが参加を表明するなど、音楽界や映画界でもトランプに対抗する動きが後を絶ちません。アートストライキの是非も含め、就任前からアメリカのアートやカルチャー界にも議論と混乱をもたらしているドナルド・トランプ。1月20日の就任式はお祝いムード一辺倒とはいかないようです。