既報のとおり、埼玉トヨペットGreen Braveが東京オートサロンで発表した2017年のモータースポーツ参戦体制は、意表を突くトヨタ・マークXでのスーパーGT参戦だった。ここではカンファレンスの内容を再確認しながら、今回の参戦がいかに異例かを検証していきたい。
■チーム結成わずか5年目でのスーパーGT参戦。4年前は本当に素人の集まりだった
カンファレンスでも紹介されたが、埼玉トヨペットGreen Braveはまだ結成して4年のチーム。2013年1月にチームの運営部署であるモータースポーツ室が設置され、同年からスーパー耐久へ参戦を開始した。
ドライバーである平沼貴之の2014年以前のモータースポーツ経験はカート程度で、チーム代表であるモータースポーツ室の岩田室長の前所属はレクサス店のゼネラルマネージャー、マークXのチーフエンジニアである近藤エンジニアの前所属は、東松山支店のサービスエンジニア。正真正銘レースの素人たちが立ち上げたチームということがお分かりいただけるだろう。
スーパー耐久は1年目こそレーシングガレージとの合同チームだったが、2014年から自社チームに。悔しいリタイアやトラブルを経験しながらも、一歩ずつ地道に成長してきた。初年度から表彰台を獲得するなど、順調に成績を伸ばし、2015年に初優勝を含む4回の表彰台登壇を果たしチャンピオンを獲得。今回のスーパーGT参戦の足がかりとなった。
■いかにもディーラーチームらしいマークXを選んだ理由
埼玉トヨペットGreen BraveはスーパーGT参戦にあたり、参戦車両としてマザーシャシー(MC)をベースにしたマークX MCを選んだ。マークXはトヨタのFRスポーツセダンだが、スーパーGTに参戦するのは初めて。リザルトを追究するなら実績のあるトヨタ86をベースとするのが最適と思われるが、Green Braveの場合は事情が少々異なる。
埼玉トヨペットにとってマークXは、1968年にデビューしたコロナ・マークⅡから続く専売車種。レースを戦うならばトヨペット店のシンボル車種であるマークXでというのが規定路線なのだ。それを端的に表しているのが2016年のスーパー耐久。2015年の最終戦でデビューしたマークXをST-3クラスに投入した。
ST-3クラスはレクサスISやRC、フェアレディZが強さをみせるクラスで、トレッドが狭く、ホイールベースが長いマークXは明らかに不利な状況だったが、チームはそれを承知の上で挑戦している。カンファレンスの際、ドライバーの平沼貴之選手も「マークXを盛り上げてファンを増やしたい」とコメントしている通り、埼玉トヨペットGreen Braveのレース活動は市販車と密接に結びついているのだ。
■マークXをメンテナンスするのは店舗に勤務するメカニックたち
埼玉トヨペットでは店舗に勤務するメカニックを『サービスエンジニア』と呼ぶ。サービスエンジニアはお客様のクルマに関する点検や修理の受付、作業から納車までの一連の作業を担当しており、工場ではグリーンのメカニックスーツを着たサービスエンジニアが忙しく動きまわっている。今回の発表では、スーパーGTのメカニックにはサービスエンジニアが参加することが明かされたが、これも業界の常識から考えたら異例である。
なぜか? それはレーシングカーと市販車の整備は別物で、それぞれ専門のメカニックが担当するのが一般的だからだ。しかし、埼玉トヨペットGreen Braveでは、スーパー耐久参戦当初からサービスエンジニアがレーシングカーのメンテナンスを行っており、2016年はのべ100人以上が参加した(他カテゴリーも含む)。
レースを経験したサービスエンジニアは異口同音に「シビアなセッティングに驚いた」と語り、クルマに対する理解を深めて店舗に戻っている。言うまでもなくスーパーGTはプロがひしめく国内最高峰のカテゴリーで、“勉強する”場ではないが、その道のプロと一緒に働くことでモチベーションが高まり、引出しの量が増えることは間違いない。それらはすべて店舗に来るお客様に還元されるのだ。
新チーム、新マシン、新ドライバーと新年早々インパクトのあるニュースを発信した埼玉トヨペットGreen Brave。チーム体制に異例の要素が多いのは、あくまでディーラーチームという視点でモータースポーツを捉えているからと言えるだろう。
次回はスーパーGTにデビューを果たす平沼貴之にフォーカスする。
埼玉トヨペットの挑戦の詳細は、こちらのサイトへ。