長時間労働が問題視され、政府も残業規制に乗り出している。時間をかけることがよいことだとする考えは学生の部活動から醸成されるのかもしれない。
1月13日付けの朝日新聞に掲載された、18歳の女子高生の投書が話題になっている。タイトルは「長時間労働許す土壌 学校にも」というもの。長時間労働についてのアンケート調査で、多くの人が「長く働くことを評価する風潮をなくす」を選んだという記事を読んで思いを綴った。
「学生のうちから量重視の環境に浸ると、それが当たり前になる」と懸念
女子生徒は、長い時間働くという風潮は会社だけでなく学校の部活にもあると指摘。中学時代に所属していた吹奏楽部では、朝早く来て遅くまで練習に励む人が評価され、そうでない生徒は冷たい視線を浴びたと書いている。そのうえで女性は、
「熱心に練習するのは大切だが、『量』重視の風潮が長時間の練習を強いる雰囲気を生み、どれくらい上達したかという『質』が軽く扱われていないか」
と疑問を投げかける。学生のうちから量重視の環境にいると、それが「当たり前」になり、長時間労働の肯定に繋がると懸念。「どの組織も『量』より『質』を大切にしてほしい」と訴えている。
この投書を16日に現役の中学校教員だという人物がツイッターで、「もう学生だった気づいているのに」とシェア。約1万1800件リツイートされた。
「18歳とは思えないほど鋭いですね」というコメントをはじめ、女子生徒の意見に賛同する意見が多く見られる。
「残業,休出は出来の悪い子の補習と同じやで。 早く帰りて」
「長時間労働は『所属組織に貢献している事』を明確に示せる最も単純で効果的な方法」
「職場もそう。いまだに長く働き残業多い奴が評価される。違うだろ!」
量を重視して生徒を長時間拘束する現状は「ブラック部活」と称され、問題となっている。昨年8月放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)では、吹奏楽部に入る女子生徒のスケジュールが紹介されていた。実質的な休みは月に3日間のみにもかかわらず、半強制的に練習させられるという。これではオフィスに縛り付けられて疲弊するブラック企業と変わりない。
部活ではなぜ質より量が重視されるのだろうか。教員にとって部活動はボランティアであり、顧問を担当する部活に専門性を有しているとは限らない。そのため「質」ではなく「時間」でしか生徒を評価できないという可能性もありそうだ。
女子高生の投書には「学校は質よりも量じゃないかな。仕事とは違う」という反論が見られたが、だとしても遅くまで残り、限界まで練習するというのはいかがなものだろうか。楽しくて仕方がないから練習しているのならともかく、顧問や周囲に対し、「一生懸命頑張る姿を見せること」自体が目的になっていないだろうか。
こうして見ると、学生時代の部活動から「量(時間)」での評価は始まっていると言えそうだ。ネットでは、
「本当に職場もそう。いまだに長く働き残業多い奴が評価される。違うだろ!与えられた仕事を時間内に残業なしに終わらせる方がどれぐらい会社に貢献してるか考えろ」
など、時間で評価されることに批判的な意見もある。たかが部活と流すのではなく、やっていることの評価のやり方を見直すことが大切なのではないか。