1997年のF1ワールドチャンピオンであるジャック・ビルヌーブは、現代のドライバーたちにはライバルに対する敬意が欠けていると考えている。
ビルヌーブはハイテク化されたF1をテレビゲームに例え、安全性の向上がレースにおけるドライビングに悪影響を与えてしまったと語った。
現代のF1と、彼の父であるジルがレースを行った時代のF1とを比較したビルヌーブは「(ジルの時代には)マシンが危険でオーバーテイクも困難だったため、ドライバーの間には今よりもずっと敬意があった」と述べた。
「クリーンかつ敬意に満ちていたし、接触してもそれはミスだった」
「今はまるでテレビゲームのようさ。ドライバーたちは自分たちがゲームのなかにいると思っているんだ」
「そこに敬意はない。彼らの辞書に敬意という言葉はないんだよ」
「何をしてもいいのさ。ケガしないからね」
ビルヌーブは、F1のボスがファンの声を聞くようになってから凋落の一途をたどり始めたと考えている。
ファンの要望に応えるものとして2011年に導入されたのがDRSだ。この導入によってオーバーテイクの数こそ劇的に増加したものの、その質は低下した。
「ファンは愚痴をこぼし続け『オーバーテイクが足りない、あれが足りない、これが足りない』と言い続けた」
「その声に耳を傾けたF1は何をしただろう? それは『よし、DRSを導入だ。レースでのオーバーテイクが大幅に増えるぞ』だった」
「だけど、DRSが導入されてから印象的なオーバーテイクはあったかい? ないだろう」
「DRSを導入したことで、『よし、リスクを取るのはやめにして、ボタンを押そう』となってしまった」
「今やオーバーテイクなんて高速道路でも見られるよ。DRSによってちゃんとしたレースが見られなくなってしまったんだ。何度も何度もオーバーテイクを見るが、どれもつまらない。当初の目的が台無しだよ」
「バイクレースでは、前を走るライダーをオーバーテイクするのに10周かかることもある。しかしこの10周の間に、引き込まれてしまうようなプロの技があるんだ」
ビルヌーブはまた、現代のF1においてはテクノロジーの比重が大きすぎると付け加えた。
「エンジンを例にとってみよう。見事なテクノロジーだが、それはエンジニアのものだ。F1にあるべきではない」
「何ももたらさないんだよ」
「それを取り除くんだ。F1にはあるべきじゃない。狂気じみたエンジニアリングだからね」
「僕は自分の乗っている車にそんなエンジンを積もうとは思わないね」