トップへ

転がり続けるa flood of circle、「鬼殺しナイト」で見えた次のステージ

2017年01月17日 19:41  リアルサウンド

リアルサウンド

a flood of circle(写真=丹澤由棋)

 “大騒ぎしたい奴は全員集合!”をテーマに掲げたa flood of circle(以下:AFOC)の 企画ライブ『鬼殺しナイト』が、1月9日東京キネマ倶楽部にて開催された。


(参考:a flood of circleのライブ写真はこちら


 開演時刻を過ぎると満杯のフロアの待ちきれぬような手拍子とともに、ライブタイトルにちなんだ鬼の角を身につけたHISAYO(Ba)とサポートのアオキテツ(Gt)が登場。「おはようございます、a flood of circleです」と佐々木亮介(Vo / Gt)が定番の挨拶をし、「かかってこいよ」と観客を煽った。1曲目の「鬼殺し」では佐々木が飲んだ日本酒・鬼ころしのパックを投げ<馬鹿野郎!>と歌いあげてフロアを沸かせる。そこから立て続けに熱いナンバー「泥水のメロディー」「The Beautiful Monkeys」を披露。


 「『鬼殺しナイト』へようこそ」と佐々木が改めて呼びかけると、「Whisky Bon-Bon」ではセクシーな歌声を響かせた。アオキの跳ねるようなギターとともに「Rodeo Drive」へ。続く「ミッドナイト・サンシャイン」ではマラカスを、「Sweet Home Battle Field」ではタンバリンを手に佐々木がステージを踊り回ると、フロアの熱量はどんどん増していった。


 「今日は“イッキ飲み”だから、覚悟しとけよ!」と佐々木が口にしていた通り、ノンストップで進んでいくライブに観客もメンバーも興奮が高まる。トーキングブルースのような「Black Eye Blues」では、佐々木が<ここが俺たちのステージだ 2017年も行こうぜ!>とフロアに降りて呼びかける場面もあった。


 AFOCのロックは実に多彩だ。今回のようにバラードを一切入れないノンストップライブという試みでも、観客に疲れや飽きを感じさせない。切なげなギターから語りかけるように始まった河島英五のカバー「酒と泪と男と女」は、渡邊一丘(Dr)の力強いドラミングが生きたラウドなアレンジに。そして、「<寝むる>前にもう一杯いける?」と再び「鬼殺し」を披露した。


 さらに「理由なき反抗(The Rebel Age)」では、一転して明るい曲調で観客を横に揺らしていく。「『鬼殺しナイト』ってノリで言っただけ。でもロックンロールに大事なのはノリだぜ」と佐々木は歌うように語ると、「まだイケる気がしてる。次のアルバムで日本がひっくり返る!」と自信に満ちた様子を見せた。そして新アルバム『NEW TRIBE』収録曲「Dirty Pretty Carnival Night」を披露。彼らはステージ上で常に前向きで、迷う姿を見せない。だからこそ観客たちも迷わずまっすぐな気持ちで楽しめるのだろう。


 吠えるような演奏で駆け抜けると、「2017年もかっ飛ばしていくんでよろしくどうぞ。俺たちのために捧げます!」と定番曲「シーガル」を歌唱。最後は語りかけるように「Beer! Beer! Beer!」を披露し、「こんなイベントに来るなんてさ…<馬鹿野郎!>」とまたも「鬼殺し」を歌い、本編を締めくくった。


 アンコールではメンバーそれぞれが2017年の抱負を語ると、佐々木は「ビルボードでのライブとか、『鬼殺しナイト』とかやって“どこ向かってるんだろう”と不安な人もいるかもしれないけど、次のアルバムのツアーでその答えを見せます」と、今後の活動への期待感を煽った。観客の掛け声とともに年明けらしく鏡割りをすると、新アルバムの表題曲で1曲目に収録される「New Tribe」を披露。特効と共に一気に目の前が開けるような勢いのイントロから始まると、サビでは<生まれ変わるのさ>と佐々木が切実な声で繰り返し歌いあげ、“日本をひっくり返す”アルバムの始まりにふさわしい、前向きでより多くのリスナーに届く可能性を秘めた楽曲だと感じた。最後は「God Chinese Father」を歌い、「大好き、愛してる、そして…<馬鹿野郎!>」とこの日4度目の「鬼殺し」へ。約90分間をノンストップで駆け抜けたライブを終え、佐々木が満足げな笑顔を見せていたのが印象的だった。


 時に語りかけるように、時に吠えるようにリスナーに訴えかけるAFOCの音は常に進化を続けている。佐々木の力強いボーカルやソングライティング力のみならず、色気を足すようなHISAYOのベース、骨太なロックを生み出す渡邊のドラム、若さほとばしるアオキのギター……それぞれが一皮剥けたようだった。佐々木の自信に満ちた言葉と眼差し、そしてアルバム表題曲「New Tribe」の<君を連れてく 約束の地へ>という歌詞から、転がり続ける彼らによる次の全国ツアー『NEW TRIBE-新・民族大移動-』でも新境地へと踏み出し、より気高く美しい景色を見せてくれることを予感した一夜だった。


(村上夏菜)