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ろくでなし子控訴審結審「裁判自体がプロジェクトアート」アイルランドからコメント

2017年01月17日 17:12  弁護士ドットコム

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女性器をかたどった作品を発表するなどして、わいせつ物陳列などの罪に問われている芸術家の「ろくでなし子」こと五十嵐恵被告人の控訴審の弁論が1月17日、東京高裁で開かれ、即日で結審した。ろくでなし子さんは現在アイルランドに住んでいるため、弁論は欠席した。


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裁判では、ろくでなし子さんの作品が刑法175条の「わいせつ」にあたるのかという点が争われている。2016年5月の東京地裁判決では、自身の女性器をスキャンした3Dデータを第三者に提供した点は有罪、性器をかたどった作品を展示した点は無罪とする「一部無罪」の判決が言い渡され、ろくでなし子さん側、検察側双方が控訴していた。


この日の弁論では、弁護側から、芸術家のスプツニ子さん、刑法学者の髙山佳奈子教授(京都大学)、憲法学の曽我部真裕教授(京都大学)の意見書が提出され、証拠として採用された。


弁論後の報告集会で、弁護団の山口貴士弁護士は、「『わいせつ』という規範は明治から日本にずっとある。この規範が、21世紀になってもまだ必要なのか。芸術活動への影響を考えて、(合法か違法か)ある程度明確なラインをきっちり作っていきたい」と裁判の意義を語った。


一方で、「わいせつではない」と裁判で主張するために、作品の「芸術性」が争点になることについて、「強い違和感がある」と指摘した。


「芸術性とは何かという点について、裁判所の判断を仰ぐことに強い違和感を感じる」「芸術表現を守ると同時に、『芸術表現とは何か』ということの判断を、裁判所に仰がなければならない枠組みを考え直すきっかけになって欲しい」と語った。


●ろくでなし子さん、アイルランドからスカイプで参加

ろくでなし子さんは、自身の逮捕報道をきっかけに、英ロック歌手のマイク・スコットさんと親交を深め、1審判決直前の2016年4月に婚約。8月に妊娠を発表した。2人は10月に入籍し、現在はアイルランドで生活している。


ろくでなし子さんは、報告集会にアイルランドからスカイプで参加した。


判決に向けて「支援してくれる皆さんと一緒に、裁判自体がひとつのプロジェクトアートのようなものと考えている」「私が逮捕・起訴されたことで、他の芸術家が萎縮してしまうことがあってはならない。なんとか無罪を勝ち取りたい」と語った。


判決は4月13日に予定されている。


(弁護士ドットコムニュース)