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KYOJO CUPで注目。2010年誕生の国産マシン『VITA-01』とは

2017年01月17日 12:41  AUTOSPORT web

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競争女子選手権 KYOJO CUPで使われる『VITA-01』
関谷正徳氏がインタープロトシリーズのサポートレースとして立ち上げた、女性ドライバーによる新シリーズ『競争女子選手権、KYOJO-Cup』が大いに話題を集めている。だが、そのレースで用いられる『VITA(ヴィータ)』なる車両には、あまり馴染みはないのではないだろうか?

 このVITAを使ったレースがビッグレースと併せて開催されたことはないため、今回その存在を初めて知った方も多いかも知れない。このVITAの正式名称は『VITA-01』といい、設計、製作を担当したのはスーパーFJなどでお馴染みの鈴鹿のコンストラクター、ウエストレーシングカーズである。

 昨今、誕生したレーシングカーではあるが、最初にレースが行われたのが2010年と、もう7年もの歴史を持つマシンだ。当時も今と変わらずナンバーつきレースが花盛りながら、より本格的な走りを望む声に対し、手頃な中古N1車両そのものが減少していること、かといってタイヤ剥き出しのフォーミュラでは……という声に反応したのが、誕生の背景だ。

 シャシーは鋼管で組まれたパイプフレーム。といってもアルミ板で覆われているため、むしろセミモノコックと言っても良く、左右にストラクチャー、前後にバンパーを内蔵していることもあって、剛性や安全性は極めて高い。

 エンジンはもちろんリヤに搭載され、エンジンは誕生当初からトヨタ・ヴィッツなどに使用される1500ccの1NZ-FEのワンメイク。これをノーマルで用いるため、最大出力は110馬力でしかないが、ドライバーを含めた最低重量が600kgと極めて軽いことから、パワーウエイトレシオに優れている。

 ちなみにフロントカウルは3種類あり、それぞれタイプA、タイプB、タイプMとされているが、なぜそういう呼称なのかは実際に見て感じて欲しい。きっと「ああ、なるほど」となるはずだ。

 現在の鈴鹿フルコースでのレコードタイムは、FFチャレンジのシビックをわずかに上回る2分26秒488。しかし出力で比較すると、シビックはノーマルでも185馬力を絞り出していることからも、VITAがいかにコーナーを速く駆け抜けているか理解してもらえることだろう。

 当初は『スーパーツーリングSクラス』の名称で鈴鹿クラブマンレースのみでの開催だったが、翌11年からは岡山チャレンジカップの耐久レースに、さらに十勝の北海道クラブマンでザウルスジュニアとの混走が可能に。また鈴鹿では12年から『クラブマンスポーツ』に名称が変更された。

 13年からはツインリンクもてぎや筑波サーキットでもシリーズが設けられるようになり、その後、単発ではあるものの、富士スピードウェイや袖ヶ浦フォレストレースウェイでもレースが行われているため、VITAは国内7サーキットを走り込んだ経験ももっているのだ。また、十勝、筑波、鈴鹿、岡山の耐久レースを対象に『VEC』なるシリーズも設けている。

 さて、もっとも注目して欲しいのが、価格である。タイヤ、ホイールレスで286万円(消費税別)というお手頃価格! あの大人気のナンバーつきワンメイクレースをやろうと思ったら、ベース車だけでほぼ同等の金額で、さらに改造を施さなくてはならないし、鈴鹿なら4秒も速いのだから、どれだけVITAがコストパフォーマンスに優れているか分かるだろう。

 過去に富士で行われたVITAのレースでは、スリップストリームが強烈に効くことが確認され、駆け引きの妙が大いに問われることとなった。

 KYOJO-Cupもさることながら、土曜日に行われる予定のオーナーズカップも含め、インタープロトが平成のグラチャンならば、VITAレースが平成のマイナーツーリングになる可能性は十分にありそうだ。