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生田斗真、“全裸で叫ぶ”演技で新境地! 『土竜の唄 香港狂騒曲』オーバーアクトの楽しさ

2017年01月16日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016フジテレビジョン 小学館 ジェイ・ストーム 東宝 OLM

 キレイな顔立ちに、抜群のスタイル、溢れる大人の魅力。嵐の松本潤・二宮和也・相葉雅紀、関ジャニ∞の渋谷すばる・横山裕・村上信五など、気心の知れたメンバーとバラエティに出ると屈託のない笑顔でワチャワチャするが、それ以外では落ち着いている。ジャニーズ屈指の演技派俳優・生田斗真には、そんな印象を持っていた。


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 演じる役も、思わずキュンとしてしまうような“イケメン像”が多かったように思う。それだけに、2014年に公開された『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』で菊川玲二役を演じた時は、ギャップを感じざるを得なかった。それと同時に生田の演技の幅広さ、演技に対して体当たりで取り組む姿勢に舌を巻いたものである。あれから約3年、続編となる『土竜の唄 香港狂騒曲』が昨年12月23日に公開された。


 今作も前回と同じく、監督・三池崇史×脚本・宮藤官九郎のタッグ。例のドタバタ劇で幕を開け、一気に三池・宮藤ワールドが展開される。相変わらずピュアで正義感が強く、真っ直ぐだけれどバカでスケベな玲二を見ていると、つい笑ってしまう。この作品は感情移入をしてストーリーに浸かるのではなく、“ツクリモノ”と認識した上で見るのが正しいだろう。実際、生田も“ツクリモノ”感を増すような演技をしていたように感じた。


 というのも、ギャグ要素が多い作品のためか、とにかく生田の演技が大きい。しかし、それが不自然ではない。もちろん、冷静に見ると「本当にそんなシチュエーションになったら、そういう反応はできないだろう」と思ってしまうのだが、本作においてはむしろ作品に引き込むトリガーとなっているように感じる。


 たとえば、全裸でヘリコプターに吊るされているシーン。生田は「うぉぉぉぉぉ!」「ぎゃぁぁぁぁぁ!」と叫び続け、落下しそうになるとさらに声のボリュームをあげて喚くも、なんとか持ちこたえる。現実には起こり得ないが、もし同じシチュエーションになったら恐怖のあまり言葉を発することができず、ただただ震えるばかりではないだろうか。その感覚を想像する余地を観る側に与えないからこそ、この作品は成り立つ。生田のオーバーな演技が観客を現実から切り離し、単純に物語の世界観を楽しませているのだ。


 そして、前作に引き続き生田の演技の幅広さもまた感じることができる。前作から3年空いた撮影だったというが、生田の演技に衰えはない。むしろ、パワーアップしているのではないだろうか。前作よりも裸でいるシーンが多く、まさに体を張った演技と言えよう。かつ、シリアスに決めるところはしっかりと決めている。


 瑛太演じる敵の兜を説得するシーンではロジックが甘いと感じつつも、「あぁ、玲二ならこういう風に説得するんだろうな」と妙に納得してしまうのだ。生田ではなく「玲二なら…」と、役そのものがまるで生きているかのように考えてしまう。そんな自分に気付きハッとした。それほど彼の演技に引き込まれていたのだ。


 また、「生田の容姿の良さが活かされている作品」とも言えるのではないだろうか。顔を歪めて叫んだり、変顔をしたり、暑苦しくなりすぎるシーンもふんだんにあるが、生田の容姿だからこそ嫌悪感を感じずに見ることができる。女装をして敵陣に潜入するシーンがあるのだが、ともすれば本当の女性の様に見えることにも驚きだ。生田でなければ、これだけキレイな画面には仕上がらなかっただろう。


 演技の対応力、観客を引き込む演じ分け、美しい容姿…、持っている武器を存分に発揮したのが『土竜の唄 香港狂騒曲』といえそうだ。そんな生田は、2月25日公開予定の『彼らが本気で編むときは、』に続き、秋には主演映画『先生!』の公開も控えている。CD発売をともなわず、役者としてデビューするという新しいジャニーズの道を切り開いた生田。彼の快進撃はこの先も続きそうだ。(高橋梓)