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UK、日本、シリア、US……小野島大が選ぶ、世界各地の刺激的なソロアーティストによる新譜

2017年01月15日 15:51  リアルサウンド

リアルサウンド

ボノボ『Migration』

 UKのエレクトロニカ系の才人、ボノボ(Bonobo)ことサイモン・グリーンの4年ぶり6作目『Migration』(Ninja Tune/Beat Records)。エレガントで優雅でメランコリックでノスタルジックな、白昼夢のように美しいダウンテンポ・エレクトロニカ~ディープ・ハウスとして良質な仕上がりです。生楽器と電子音を緩やかに行き来しながら、幻のように儚く夢のように優しい光景を紡ぎ出していきます。しかしイノウ・グナワの参加したアフロ・中近東なトライバル・ハウスや、チェット・フェイカーことニック・マーフィーが歌う官能的なハウス・トラックなどが印象に残りますが、なんといってもライが参加した「Break Apart」が素晴らしい。ミュージックビデオの出来映えも秀逸です。


関連動画はこちら。


 アメリカのベテラン、ジョン・ベルトラン(John Beltran)の、通算13作目にあたるニュー・アルバムが『Everything at Once』(Delsin Records)。ドリーミーでメロディアスなミニマル・テック・ハウス~アンビエント。手練れの技とでも言うべき美しくファンタジックなエレクトロニカを展開します。寒い冬の夜長に暖かくして聴きましょう。


 先頃来日公演を行ったばかりのティコ(Tycho)ことスコット・ハンセンのソロ・プロジェクト5作目が『Epoch』(Ghostly International/Hostess)。従来のドリーミーでスペイシーでアンビエントなポスト・ロック~エレクトロニカ~チル・ウエイヴという路線を踏襲しつつ、もう少しバンド的なグルーヴ感を強調した感じ。ファンなら期待を裏切られることはないでしょう。


 デトロイト出身、弱冠25歳というジェイ・ダニエル(Jay Daniel)のファースト・アルバム『Broken Knowz』(Technicolour/Ninja Tune/Beat Records)。生楽器を導入したフィジカルで無骨なグルーヴがセオ・パリッシュを彷彿とさせるアフロ・トライバルなディープ・ハウスを展開。なお母親はカール・クレイグ作品でお馴染みのシンガー、ナオミ・ダニエルだとか。


 ちょっと前の発売になりますが、京都在住の有村崚によるプロジェクトin the blue shirtのファースト・アルバム『Sensation of Blueness』(TREKKIE TRAX)。元はチル・ウエイヴ的なベッドルーム・ミュージックをやっていたそうですが、やがてダンス・ミュージックに移行、本作はおもちゃ箱のような奔放なカットアップ・コラージュとキッチュなポップ・センスが光る才気煥発の一作です。


 ビョークも絶賛したシリアの怪人オマール・ソレイマンと長年活動を共にするライザン・セッド(Rizan Said)のソロ・アルバム『King Of Keyboard』(ANNIHAYA)。中東の祭事音楽ダブケを電子化したエレクトロ・ダブケの第一人者で、辺境音楽マニアにはたまらないディープでサイケデリックでレフトフィールドなトライバル・ダンス・ミュージック。ありきたりな西欧発のポップ・ミュージックにはない荒々しくエネルギッシュなグルーヴが最高です。


 8年前、2000年代以降の日本のオルタナティヴなポップ・ミュージック史上に残る名曲「日没サスペンディッド」を生んだ名コンビ、Eccyとあるぱちかぶとが再びタッグを組んだのがEccyのニュー・シングル『Lonely Planet feat.あるぱちかぶと』
(KiliKiliVilla)。Eccyの作り出す、どこか日本的なノスタルジーとヨーロッパ的な洗練されたメランコリーが同居する優美で叙情的なトラックと、あるぱちかぶとの繊細で文学的なリリック、エモーショナルで中性的なラップが融合した唯一無二の美しい世界を展開しています。この曲をフィーチュアしたEccyのアルバムも完成間近とのこと。非常に楽しみです。


 ではまた来月。(文=小野島大)