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Little Glee Monsterが獲得した音楽的個性 “歌うま”超える表現力で更なる成長へ

2017年01月15日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Little Glee Monster『Joyful Monster(通常盤)』

【参考:2017年1月2日~2017年1月8日のCDアルバム週間ランキング(2017年1月16日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2017-01-16/)


 2016年の国民的な関心事だったSMAPの解散劇。彼らのベストアルバムが3位にランクインしている最新チャートを制したのはKinKi Kidsの『Ballad Selection』である。SMAPが不在になったことで空席となった「国民的アイドル」のポジションを誰がゲットするのか(もしくは誰もゲットできないのか)というのは今後の日本のエンタメ業界にとって大きな論点になってくるはずだが、個人的にはKinKi Kidsもその枠を狙う資格があるように思える。SMAPという存在のすごさは「”誰の指図も受けない”という感じの強固な意思(気難しい芸術家)」と「誰でも距離を詰められる親しみやすさ(隣りのお兄ちゃん)」をナチュラルに両立させていたところにあったわけだが、この構造に一番近いジャニーズのグループは実はKinKi Kidsなのではないだろうか。デビュー20周年となる今年、彼らがどんなふうに社会との関係を構築していくのか注目していきたい。


 さて、今回取り上げるのはLittle Glee Monster(以下リトグリ)の『Joyful Monster』。1年前にリリースされた前作『Colorful Monster』と同じく初登場4位を記録し、KinKi Kids、back number、SMAPという日本を代表するグループが並ぶチャートに名前を連ねた。


 従前からソウル/R&B的な音楽を志向してきたリトグリだが、今作『Joyful Monster』はそういったグループの目指すべき方向性がより強く表出している作品である。たとえば「私らしく生きてみたい」「Hop Step Jump!」ではここ最近のトレンドでもあるアーバンな雰囲気を持ったブラックテイストの楽曲にチャレンジしており、また「Catch me if you can」「君のようになりたい -Album ver.-」ではブロードウェイで上演される華やかなショーを想起させるファンキーな世界を展開している。前者には「マーケットへの適応」という側面も少なからずあるように思えるが(それでも楽曲自体は非常によくできていて心地よく聴ける)、後者については彼女たちの強みであるパワフルな歌唱力を嫌味なく発揮できる方向性として今後のグループの根幹になりうる可能性を感じさせてくれる。先日の武道館でのライブにおいても、煌びやかな衣装を身にまとって「Catch me if you can」「Feel Me」(『Colorful Monster』に収録されているCharaによる楽曲)を歌うパートが一つの見せ場になっていた。「アメリカのショービズの世界を自分たちの表現に取り入れる」というのはジャニーズの専売特許のようにも思えるが、リトグリが女性グループとしてこの方向をどうやって発展させていくかというのはとても興味深い。


 「歌がうまい」というのはある種の身体能力の一つであり、ここにフォーカスしすぎると「音楽」というよりは「曲芸」になってしまう(このあたりは『ハモネプ』『歌王』といった類のテレビ番組を見ればよくわかると思う)。デビュー当時のリトグリにもその傾向があったのでは? というような話は以前のこの連載でも少し触れたが(参考:Little Glee Monsterの初アルバムが週間チャート4位に シーンで異彩を放つ創作スタンスを読む)、今作で彼女たちははっきりとした音楽的な受け皿を獲得したことで歌唱力という武器を違和感なく楽曲に融合させることができた。早い段階で「単なる歌うま女子の集まり」というようなものとは違う場所に行けたのはとても大きいと思うし、この先どんなグループとして成長していくのか非常に楽しみである。(レジー)