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ピースサインの写真から「指紋」盗み取られるリスク…どんな法的問題に発展する?

2017年01月15日 10:42  弁護士ドットコム

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カメラにピースサインをするだけで、指紋の情報が出回ってしまうーー。顔と手を一緒に撮影した写真から、個人と指紋を特定されてしまうリスクがあることを報じた産経新聞の記事「指紋ネット盗難 『ピースサインは危険!』3メートル離れて撮影でも読み取り可能」が話題になっている。


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記事は、指紋の盗撮防止技術を開発した国立情報学研究所の越前功教授のコメントを掲載したものだ。同研究所の実験では、3メートル先で撮影した画像でも、指紋などの個人の生体情報を読み取ることが明らかになった。


生体情報は、スマートフォンの認証や建物の入退出管理など、様々な場面で用いられている。このような情報が容易に読み取られてしまうリスクがあるとのことだ。


もし第三者が、SNSなどに投稿されているピースサインの画像などから、生体情報を手に入れた場合、どんな法的問題があるのか。小林正啓弁護士に聞いた。


●個人情報保護法に違反する行為

「個人情報保護法、刑法、民法上の問題があります。


平成29年5月30日に施行予定の改正個人情報保護法は、『特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの』を『個人識別符号』とし、これが含まれる生存する個人に関する情報を個人情報と定義して保護の対象にしましたから、指の画像から指紋に関する情報を抜き取ることは、個人情報保護法に違反する行為です」


では罰則はあるのか。


「SNSに掲載された画像から指紋情報を抜き取ることを処罰する規定はないので、刑法に違反する行為、すなわち犯罪にはなりません。ちなみに、クレジットカード等から不正に電磁的記録を取得する、いわゆるスキミングは刑法163条の2ないし5によって処罰されますが、指紋情報は電磁的記録にあたるとしても、同法にいう『クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するもの』には該当しないので、同法の罪には問われません。


ただし、取得した他人の指紋情報を不正に使用して、ネットワークに接続されている端末にアクセスすれば、不正アクセス禁止法違反(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の罪に問われます」


民事上の責任はどうなるのか。


「民法上、指紋情報は個人のプライバシー情報にあたりますから、他人の指紋情報を不正に取得した相手に対しては、損害賠償請求や、使用の差し止めを請求することができます。


指紋や目の虹彩などの情報を生体情報といいます。生体情報は、鍵やカードを持ち歩いたり、パスワードを記憶したりしなくて済むなど便利な反面、盗まれても変更できないという短所があります。今後生体情報が認証手段として普及するときには、厳格な管理の仕組みが不可欠になるでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
小林 正啓(こばやし・まさひろ)弁護士
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。
事務所名:花水木法律事務所
事務所URL:http://www.hanamizukilaw.jp/