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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『FOR REAL ベイスターズ、クライマックスへの真実。』

2017年01月14日 12:51  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)YDB

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週の担当者は、横浜DeNAベイスターズファン歴21年・石井達也。


■『FOR REAL ベイスターズ、クライマックスへの真実。』


 このコーナーを担当させていただくのも3回目。この肩書にしてしまった以上、取り上げないわけにいかないのが、『FOR REAL ベイスターズ、クライマックスへの真実』。職権濫用と言われてしまうのも覚悟の上、溢れ出してやまないベイスターズ愛と共に本作の魅力を語らせていただきたい次第です。


 小学生の頃、横浜とは縁もゆかりもないにも関わらず、青い帽子とユニフォームが格好いい!そんな単純な理由で横浜スタジアムを訪れてから21年が経ちました。98年には、38年ぶりの優勝と日本一。当時、“38年ぶり”の言葉の重みも知らずに、自分が好きになったチームはこんなに強いんだ!と思ったのも束の間、2002年に最下位に転落すると、2015年までの14年間に、最下位を10回(ほか、5位2回、4位1回、3位1回)も過ごすことになる大低迷期に……。ライター・村瀬秀信氏の著書に『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』(2013年双葉社)がありますが、このタイトルに象徴的なように、どの球団よりも負けた球団、それがベイスターズでした。それでも……どんなに負け続けても、弱くても、嫌いになどなることはできず、負けた試合の中でも楽しさを見出し、1シーズンが終われば来年こそは優勝する、そう思い続けた昨年、ついにひとつの歴史が作られました。


 現在のプロ野球では、クライマックスシリーズというシーズン終了後、3位以上のチームによる日本シリーズ進出をかけたプレーオフが行われています。極端に言えば3位に滑り込みさえすれば、日本一になれる可能性があるルールです。が、前述したように、ベイスターズは制度発足後低迷期に突入してしまい、12球団で唯一“一度もクライマックスシリーズに出場したことのないチーム”でした。そんなチームが昨年、ついに悲願の初クライマックスシリーズ進出を果たしたのです。


 と、前置きが非常に長くなってしまいましたが、ベイスターズファンにとって、選手にとって、球団にとって、何にも代え難い悲願が叶った1年の軌跡を映し出したのが本作。監督やコーチが試合中に何を考えているのか、ベンチ裏で選手たちは何を話しているのか、前年最下位のチームがいかにクライマックス進出を成し遂げたのか。DeNAが親会社になってからは、密着ドキュメンタリー『ダグアウトの向こう』が製作されていましたが、過去シリーズのどの作品よりも、臨場感と充実感に溢れ、ここまでカメラが入っていいの?と思ってしまうシーンばかり。特に、主力選手が次々と移籍していく中、「チームを強くしたい、いいチームにしたい」という信念のもと、25年間チームに身を捧げてくれたエース・三浦大輔の引退報告シーンは、涙なしには語れません。


 傷つき、苦悩し、喜び、成長する。選手も監督・コーチもひとりの“人間”であるということ。そんな至極当たり前のことを、改めて本作は教えてくれます。ベイスターズファン専用!と思われてしまうかもしれませんが、ひたむきに努力をする選手たちの姿は、“仕事人”としてどんな立場の方が観ても必ず胸を打つものだと思います。一試合、その一瞬に懸ける想い、嘘偽りのないまさに“FOR REAl”が切り取られた“映画”作品です。


 チームは躍進を遂げたもののまだ3位。昨年のクライマックスシリーズ進出時、応援団が掲げた横断幕「歴史と共に 今 反撃開始」の言葉通り、新たな“歴史”を作る今シーズンに期待大!(石井達也)