2017年01月14日 09:02 弁護士ドットコム
名画『E.T.』で印象的な場面といえば、主人公の少年が自転車の前カゴにE.T.を乗せて空を飛ぶシーン。インターネット上の掲示板に、まさにE.T.状態で、自転車の前カゴに入れられた赤ちゃんを目撃した、という書き込みが寄せられた。
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投稿者によると、その赤ちゃんは「2歳くらい」で、自転車の四角い前かごにブランケットに包まれた状態でおとなしく乗っていたそうだ。自転車を運転していたのは「かなり高齢のお婆さん」。目撃場所は都内ターミナル駅の駅前交差点で、信号が変わると、お婆さんは赤ちゃんを乗せたままよろよろと走っていったという。
自転車の前カゴに赤ちゃんを入れたまま運転することは、法的にどのような問題があるのだろうか。平岡将人弁護士に聞いた。
「道路交通法57条2項は、『公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる』と規定しています。
これに従って、各都道府県の道路交通規則では、乗車人数や積載重量などが細かく規定されています。違反すると、2万円以下の罰金又は科料という罰則を科されます。
例えば、東京都道路交通規則の10条には『二輪の自転車には、運転者以外の者を乗車させない』としています。つまり、自転車は一人乗りが原則であり、二人乗りは道路交通法違反となります」
ということは、赤ちゃんと一緒に自転車に乗ること自体がアウトなのか。
「実は、6歳未満の幼児については例外が設けられています。東京都の場合は、『16歳以上の運転者』が、『幼児用座席』のある自転車を運転する場合は、1人または2人の幼児を同乗させること(つまり2人乗り又は3人乗り)が許されています。
子守バンドで確実に子どもを背負って自転車に乗る場合には、運転者の一部とみなされるので、幼児用座席がなくても許されます。
つまり、『幼児用座席2つに幼児を2人乗せる』、もしくは『幼児用座席1つに1人を乗せ、子守バンドで1人背負う』ことで、最大3人乗りまでは許されているということです」
今回の「E.T.乗せ」についてはどう考えられるのか。
「今回のケースについては、2歳くらいの幼児を自転車に乗せているとすると、幼児用座席を設置してそこに座らせるか、子守バンドで確実に背負っていれば許されます。しかし、カゴに乗せてもいいというルールはありませんので、許されず、運転していたお婆さんは罰則を科される可能性があります」
東京都以外でも、ルールは同じなのか。
「例えば埼玉県の場合は、東京都では6歳未満であれば子守バンドで確実に背負っていれば許されているとの部分が『4歳未満の者』となっているなど多少の違いがあるようです。
しかし、基本的には2人乗りは原則禁止、例外として幼児であれば幼児用座席に乗せるか、背負って固定している場合には最大3人乗りまでは可能という規定になっています。
ちなみに、E.T.は地球外の生命体であり、『人』ではありません。したがって、かごに載せていても2人乗りとはいえず、小型犬と同じく『物』の積載となるので、法的には許されると考えます。ただ、重さや長さ、幅などの規制もありますので、万が一E.T.を自転車に乗せることになった場合は、法律で決められた積載方法を守る必要がありますね」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。平成26年8月より全国で7事務所を展開する弁護士法人サリュの代表弁護士に就任。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「虚像のトライアングル」。
事務所名:弁護士法人サリュ大宮事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/