2017年01月13日 17:22 弁護士ドットコム
兵庫県太子町にあるゲームセンターが、生きたハムスターをクレーンゲームの景品として客に提供していたことがわかり、ネットで批判が沸き起こった。同店は今月ゲーム機を撤去した。
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報道によると、同店では2016年10月ごろから、クレーンゲーム「もふもふはむすたぁ」を設置。ゲーム機の中には、景品の見本として、ゲージに入った生きたハムスターが入れられていたという。ゲームは1回500円で、クレーンでピンポン玉をすくって穴に入れると空のカゴをゲットでき、店員から景品のハムスターをもらえるという仕組みだったそうだ。これまでに104匹が客の手に渡ったという。
同店は1月10日にツイッターで、「生き物を一商材として扱うような行為であったと改めて深く反省している次第にございます」と謝罪。当時の飼育状況については「飼育世話係数名が個別ケージにて、日々のエサやり、水替え、ケージの清掃等を行なっておりました」と記載し、ゲーム機についても「ハムスターが直接景品取り出し口に落ちてくるというものでは無い」と説明している。
店の運営会社は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「これ以上騒がれるのはご勘弁願いたい」とコメントした。
ハムスターをめぐっては、2014年7月、大阪市の夏祭りで、客がエサのついた糸を垂らしてハムスターを釣り上げる「ハムスター釣り」なる露店が現れ、「かわいそうだ」と物議を醸した。
今回のニュースについても、ネット上で「ありえない」「虐待だ」などのコメントが見られた。同店の行為は、動物虐待にあたるのだろうか。ペット法学会事務局次長をつとめる渋谷寛弁護士に聞いた。
「お店の行為は、動物愛護管理法44条2項の動物虐待罪に該当する可能性があります。
この処罰の保護の対象になるのは、生き物の中でも愛護動物に限られます。愛護動物は、牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひるの11種類の動物と、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものです。
ハムスターは11種類の動物の中には含まれませんが、今回の場合はゲームセンターの店員が管理していたようですから、『人が占有する哺乳類』にあたり、保護の対象となります。
ただし、今回のケースでは、警察が立件する可能性は低いでしょう。ハムスターを直接クレーンで掴めば虐待にあたる可能性が高いため、警察も動くかもしれませんが、今回の場合、クレーンで掴むのはピンポン玉であってハムスターではありません。また、ハムスターはゲージに入れられ、エサや水も与えられるなど最低限の飼育環境は整っていたようです。
問題になるとすれば、ゲームセンターという、常に大きな音が響いて、明かりもついている環境にハムスターが置かれていたことです。ハムスターは夜行性ですから、通常、昼間は寝ています。音がうるさく、光に照らされた環境で、果たしてハムスターが熟睡できていたのでしょうか。
また、ペットショップでハムスターを購入しようとすると、種類にもよりますが通常1000円以上はするでしょう。今回はゲームが1回500円で、うまくいけばペットショップで購入するよりも安く手に入ります。ゲームセンターに立ち寄ったついでに、飼育する意思もないのに衝動的に挑戦して、予期せずハムスターの飼い主になってしまった人もいるかもしれません。結果的に無責任な飼い主を増やしてしまったのではないかと、懸念されます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渋谷 寛(しぶや・ひろし)弁護士
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局次長も務める。
事務所名:渋谷総合法律事務所
事務所URL:http://www.s-lawoffice.jp/contents_01.html