2016年限りで世界ラリー選手権(WRC)から撤退したフォルクスワーゲンは、17年型WRカーのホモロゲーション取得期限が過ぎた後も、今季のWRCにマシンを投入するべく交渉を進めている。
フォルクスワーゲンが17年シーズンに投入予定だった新型ポロR WRCは15年8月に開発がスタート。シリーズ5連覇に向けて順調に開発が進められていたが、同社のシリーズ撤退によって、一時は陽の目を見ることなく“お蔵入り”するとも考えられていた。
しかし、チームはシリーズ撤退を表明した後もホモロゲーション取得を目指して開発を続行。昨年12月にはスウェーデンでマーカス・グロンホルムが雪上テストを実施している。
同マシンが1月1日に締め切られたホモロゲーションを取得できなかったのは、潤沢な資金のある供給先を見つけられなかったことが要因と考えられているが、フォルクスワーゲン・モータースポーツのスベン・スミーツ代表は、現在FIAや投資グループと交渉中であると発言。年内にプライベートチームにマシンを供給する構想を明かした。
スミーツによれば、早ければ4月の第4戦ツール・ド・コルスにマシンを送り込めるという。
「ホモロゲーション取得期限の延長に向けてFIAと交渉を進めている」とスミーツ。
「(期限延長は)前例のないことだ。今シーズン中にマシンを走らせるには、かなり無理を通す必要があるだろう」
なお、マシン供給先については、一時ナッサー・アル-アティヤーを擁するカタールチームと協議が進んでいると報じられていたが、スミーツはこの報道を否定している。
「ひとつ明言しておきたいのは、我々はカタール側と交渉は行っていないということだ。これで噂が静まることを願っている」
「今は別のグループと話を進めているし、興味を持ってくれている人々も多くいる。しかし、まずは第1関門(FIAとの交渉)を突破しなくては」
スミーツによれば、当初のホモロゲーション期限を過ぎたことで、チームには時間的猶予が生まれたと言い、場合によっては2月の第2戦スウェーデンからの参戦もあり得るとしながらも、チームとして契約を急ぐことはないという。
17年型ポロR WRCは、すぐにでも実戦へ投入できる状態にあるとみられているほか、予備パーツなどインフラ面の準備も整っているとみられる。
「(1月1日の期限を過ぎたことで)我々は従来と異なるスケジュールで動いている。そのため、もし(交渉中のチームが)望むのであれば、計画を早めることも不可能ではないよ」
「しかし、私にとってもっとも重要なのは、過去に前例のないプロセスを通過して、マシンをWRCの舞台に送り出すことなんだ」
フォルクスワーゲンのホモロゲーション期限延長が認められるには、FIAとWRCプロモーター、そしてシリーズに参戦する全メーカーからの賛同が必要とされている。
なお、実際にプライベーターが17年型ポロR WRCを使用する場合、サービスパークなどでマシンを整備するのはフォルクスワーゲンの“元”ワークスチームスタッフとなる見込みだが、レギュレーション上、マニュファクチャラータイトルを争うことはできない。