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flumpoolが地元“シロテン”年越しライブで示した進化 10周年に向け、さらなるブーストへ

2017年01月12日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

flumpool(写真=古渓一道)

 2016年12月31日、大阪城ホールにて、flumpool初の単独年越しライブ『flumpool COUNTDOWN LIVE 2016→2017「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・フォーエバー~』が行なわれた。


(関連:『flumpool COUNTDOWN LIVE 2016→2017「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・フォーエバー~』ライブ写真はこちら


 シロテンとは、大阪のバンド・キッズの象徴と言える、大阪城公園内のフリースペースのこと。10年前のflumpoolも、この場所から果てしない未来を夢見るバンドのひとつだった。時は流れ、活動が日本全国へと広がった今も、その思いは変わらない。2年前には、『flumpool 真夏の野外★LIVE 2015「FOR ROOTS」~オオサカ・フィールズ・フォーエバー~』と題した大泉緑地での凱旋ライブで、生まれ育ったルーツへの愛を示した4人が、今再び故郷で奏でる音楽。10年という時間は、彼らの何を変え、何を変えなかったのか。それを証明するのに、ここ以上にふさわしい場所はない。


 夜の大阪城公園で開場を待つ大勢のファンたち。美しくライト・アップされた、大阪城の天守閣。南口に設けられた赤い鳥居の“flumpool神社”にも、参拝を待つ人の長い列ができている。たこ焼き、鉄板焼き、年越しそば。1年の最後の日を最良の1日にする期待に胸ふくらませる、様々な年齢層の男女の賑やかな笑い声。


 午後10時。オープニングのインパクトは強烈だ。爆音のEDMに乗り、揃いの黒い和服を羽織った4人が姿を現す。サポートの磯貝サイモンと吉田翔平が、2階のてっぺんまで埋まった観客席に手拍子をうながす。間髪入れずに鳴り響く「FREE YOUR MIND」のイントロ。山村隆太(Vo./Gt.)が<主役は大阪だ>と歌詞を変えて煽る。「Touch」では、尼川元気(Ba.)がシンセサイザーでベースラインを弾いた。原曲よりもはるかに骨太に、ダンスフロア仕様に生まれ変わった強力な音圧が空気を震わせる。


「来年への夢、持ってきた? 今年のストレス、持ってきた? みんなで発散しましょう。最後までよろしくお願いします!」


 隆太の声は好調だ。「解放区」の、シーケンスと生音を重ねた分厚いサウンドを貫いて、力強い歌声が飛んでくる。「産声」では、隆太、元気、阪井一生(Gt.)にサイモンが加わって、息の合ったパワフルなコーラスを響かせた。直後のMCでは、今日はカウントダウンだから長いMCはできないと言いつつ、ついついしゃべりすぎる隆太に、「もう時間だよ」と元気がクールに突っ込む。トークの呼吸も好調だ。


 軽やかに弾むソウル・ビートの「DILEMMA」を経て、元気とサイモンがキーボードで幻想的なフレーズを奏でる「輪廻」が始まると、序盤の開放的な朗らかさがより緻密で内省的な音楽へと深化する。ステージに流れるスモークの雲海と、鮮やかなグリーンのレーザービーム。「花になれ」は、小倉誠司(Dr.)がマレットを使った柔らかなタッチでスネアを叩き、翔平が特徴的なバイオリンのフレーズをループし続け、隆太がエレクトリック・ギターを淡々と刻む。まったく見事に生まれ変わった、ミニマルなポップ・チューン。大事なデビュー曲を、ここまで大胆にリアレンジして成功させるとは。flumpoolの進化を示す、チャレンジ精神あふれる1曲だ。


 ここから3曲はアリーナ中央、センター・ステージでの演奏が続く。テーマは“10年前にシロテンで演奏していた曲”。「MW~Dear Mr. & Mrs. ピカレスク~」は、当時は「月と街灯」というタイトルで歌われていたものだ。が、アコースティック・スタイルで緩急激しく、互いの目を見ながらグルーヴを合わせるメンバーの姿は、きっと当時も今もそれほど変わらない。定番曲「Hydrangea」も、メロディと歌詞の良さがよりダイレクトに伝わってくる。そして、何年振りに聴いただろう、「10年後も変わらない歌になったらいいなと思います」と前置きして歌った「未来」の、なんという純粋な美しさ。この夜空の片隅で今、幾千もの出会いに包まれて。まるで目の前の景色を予言したかのような、希望にあふれた言葉が胸を打つ。


 メイン・ステージに戻ってからの「ムーンライト・トリップ」は、誠司の叩くマーチング風のフレーズが印象的な、メランコリックなロック・バラード。黄金に輝く月がやがて朝日へと変わる、スクリーンの映像が素晴らしい。そして、この日が初披露となった新曲「ラストコール」では、近年のflumpoolの特徴であるゆったりと大きなグルーヴ、シーケンスを駆使した部厚いサウンド、エモーショナルな歌を前面に打ち出すポップ・チューンの最新型が聴けた。春に公開の映画『サクラダリセット』主題歌として、物語の世界観とリンクした“未来への願い”というテーマを、切実に歌い上げる隆太の引き締まった表情がいい。


 優しさと柔らかさがある一方で、禍々しさも毒もある。一転してハードなロック・チューン「夜は眠れるかい?」で、隆太は黒いフードを目深にかぶり、一生は強烈に歪んだギターリフを叩きつける。そのままグラマラスなブギー・スタイルの「Blue Apple & Red Banana」、そして「reboot ~あきらめない詩~」へ。アグレッシブなプレーの連続に、観客は再び前半のように手を振り上げ、体を揺らし、熱いサウンドに熱いリアクションを返す。アコースティック、エレクトロニック、そして生身のギター・ロック。次第にテンポを上げながら、カウントダウンへと高まってゆく見事な構成だ。


「もうちょっとで2017年だぞ。大阪、準備はいいか? ついてきてくれ!」


 隆太がマイクをつかんでセンター・ステージへと走る。一生と元気が、ステージの両翼にどっしりと構えて手堅いプレーを決める。曲は「World beats」。アルバム『EGG』の中でもひときわエレクトロニックな躍動感にあふれた、flumpoolの新たなタオル回しソングだ。サイケデリックに点滅するライト、スクリーン、観客全員のジャンプ。時刻は11時50分を回った。いよいよだ。隆太が「ここにいる全員で2017年に会いに行こうぜ!」と叫ぶ。曲は「星に願いを」へと変わった。2番のサビを、観客に丸投げする隆太。もちろん、全員が完璧に歌う。ここはflumpoolを愛する人間しか存在しない、音楽の解放区だ。


「…5、4、3、2、1、0、あけましておめでとう! 今年もよろしくね!」


 スクリーンに浮かんだ、“2017 HAPPY NEW YEAR”の文字。金銀のテープが盛大に宙を舞う。曲は「君に届け」。来年も再来年も、今以上に君が好きで。新しい年の初めに、これほどふさわしい曲はないだろう。「みんなに会えてよかった!」と、声を上ずらせて叫ぶ隆太。完璧にハッピーな空間の中、本編ラストを飾ったのは、flumpoolの原点としての1曲「labo」だった。元気がシンセを弾き、懐かしい曲に新しい息吹を吹き込む。まだ何も書き込まれていない、白紙の2017年。flumpoolと共に過ごす、新しい1年が今始まった。


 アンコール。楽屋裏の様子を映すライブ・カメラに向け、おどけてみせるメンバーたち。次の瞬間、アリーナ後方の扉を開けて登場した4人を、悲鳴のような大歓声が包み込む。場所はセンター・ステージのさらに奥、アリーナ後方のサブ・ステージ。4人乗ればいっぱいの狭く小さな場所で、「今日来てくれた、ひとりひとりに歌いたい歌です」と前置きして歌った「大切なものは君以外に見当たらなくて」は、これまで何度も聴いた中でもベスト・アクトのひとつだった。人間味あふれる、柔らかなアコースティック・グルーヴ。<everything everything 君だけが 大事なんだよ>と繰り返される大合唱が、広いホールいっぱいに広がってゆく。


「今日みたいな日があるから、これからも頑張っていけます。ありがとう」


 2時間半を超えるライブの最後の1曲は「MY HOME TOWN」だった。スクリーンには昨日撮影したという、大阪の街を歩く4人が映し出される。ギターを背負って京橋、天王寺、そしてシロテンでのストリート・ライブ。10年前に大阪城ホールの外で夢見た未来は、今ホールの中にある。だがここは、まだゴールじゃない。


 最後に隆太の口から、ニューシングル『ラストコール』が春にリリースされること、5月20、21日に日本武道館公演が決まったこと、そして秋には全国ツアーを開催することが発表された。「来年(2018年)の結成10周年に向けて駆け抜けていきます」という、早くも1年後を見据えた抱負も飛び出した。リリースごと、ライブごとに高まる音楽的な成長と、メンバー個々の意識。2017年のflumpoolは、これまで以上に積極的に新しい姿を見せてくれる。そう確信させる、充実のカウントダウン・ライブだった。(宮本英夫)