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竜星涼はイケメン枠を越えるーー『Brs.マックスマン』で見せたコメディセンス

2017年01月12日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)2016「Bros.マックスマン」製作委員会

 上手い役者というと、まずは演技の幅の広さが浮かぶ。なかでも難しいのがコメディだろう。いわゆるイケメンと呼ばれる若手ならば、コメディに振り切る勇気があるかどうかも試される。現在公開中のアクションコメディ『Brs.マックスマン』で、まさにコメディに振り切った演技を見せているのが竜星涼だ。イケメン枠にとどまらないスタンスを感じさせる竜星とは?


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 『Bros.マックスマン』は、昨年公開された千葉雄大主演の『Mr.マックスマン』の続編。『Mr.マックスマン』ではひょんなことから、人知れずヒーローに変身できるようになってしまった主人公の正義(まさよし)が悪の組織と闘う様が描かれた。そして本作では、竜星が正義の弟である英雄(ひでお)として登場し、兄と同じくヒーローに変身できる身体となり、好きな女性のために奮闘する。


 決しておふざけに走ることなく、観る者をきっちり笑わせてくれる作品に仕上がったのは、主演の竜星の上手さによるところも大きい。マックスマンは、興奮がMAXになったときにヒーローへと変身するのだが、英雄のMAXは、好きな女性のことを考えて「好きだ~!」と叫ぶ瞬間。この「好きだ~!」がそのまま変身の決めセリフになるのである。ヒーローらしからぬ変身シーンを本気でやり切る姿は、すがすがしいほどだ。


 さて、2010年にドラマ『素直になれなくて』にて俳優デビューした竜星の知名度を上げたのは、13年に放送されたスーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』でのキョウリュウレッド/桐生ダイゴ役。戦隊シリーズも仮面ライダーシリーズと同様に、これまでに多くの人気俳優を輩出しており、近年では『天装戦隊ゴセイジャー』の千葉雄大(『Mr.マックスマン』には特撮ヒーロー関係の役者が数多く出演している)や『侍戦隊シンケンジャー』の松坂桃李、『烈車戦隊トッキュウジャー』の志尊淳らがよく知られる。


 若手俳優として1年間同じ役柄を演じられる環境が、役者として大きな実りを与えることは想像に難くない。役者としての地盤を築いた竜星も、この数年で急成長を遂げている。『Bros.マックスマン』で高いコメディセンスを披露する竜星だが、それだけではないことも証明済みだ。


 15年公開の青春ファンタジー『orange-オレンジ-』では土屋太鳳演じるヒロインを一途に思う青年を好演した。またWOWOWのドラマW『賢者の愛』では、中山美穂演じる年上の女性との恋に堕ちていく若者役に挑戦。同時期に志田未来とW主演した映画『泣き虫ピエロの結婚式』で重い病を抱えた青年に扮するなど、バランスの取れた作品、役選びを続けている。2016年の頭には表現者として単身、フランスに渡ってオーディションを受け、『Yohji Yamamoto HOMME 2016-2017AW Paris Collection』にてパリコレレビューしたことも話題を集めた。


 パリコレデビューからも分かるとおり、183センチの長身かつ嫌味のないルックスは、イケメン俳優として売るのに十分。しかし、本人は“表現者”としてのこだわりを口にすることが多く、イケメン枠内に収まる気はないようだ。


 今後に目を向けても、2月公開の『君と100回目の恋』でベースに初挑戦し、秋公開予定の話題作『先生!』にも名を連ねている。だがまずは、冒頭に紹介した『Brs.マックスマン』で竜星の実力を感じてほしい。あるとき英雄が、嗅覚、視力、聴覚などに一気に覚醒して悶絶する姿は必見だ。また、本作では、体は変身後の姿のまま、顔をさらして戦うシーンが含まれている。このメットオフシーンは、竜星からの提案とのこと。そうしたエピソードからも作品に向かう姿勢を伺い知ることができる。


 並み居るイケメン若手俳優のなかでも、コメディができるというのは、大きな武器だ。恵まれた容姿を生かしつつ、今後も挑戦的な姿勢を忘れずに突き進んでほしい注目株だ。(望月ふみ)