昨年末のクリスマス期間中、ドイツ国内で話題となったゲルハルト・ベルガーのDTM運営組織への参画。この可能性について、ベルガー本人は「決まっていることは何もない」として明言を避けた。
日本のスーパーGTとのコラボレーションに向けGTアソシエイション(GTA)とも協議を続けてきたDTM運営団体のITRは、現在ハンス-ウェルナー・アウフレヒト、ハンス-ユルゲン・アプト、ワルター・メルテス、フローリアン・ジツルスペルガーの4名が主要メンバーとして運営を担っている。
DTMの父として有名なアウフレヒトは、メルセデス・ワークス・チームHWAのボスでもあり、アプトはアウディのモータースポーツ活動を牽引してきたアプト・スポーツラインの創設者。メルテスはITRの子会社でドイツF3を統括するトップを務め、FIAとユーロF3のプロモーターとしても活動してきた。
そして昨年6月にアウディからITRに加わり、専務理事に就任したジツルスペルガーの補佐的ポジションとして、ITRはベルガーに業務を打診したと報じられている。
ベルガー自身はF1でのドライバーキャリアを終えて以降、BMWのモータースポーツ活動統括やスクーデリア・トロロッソのチーム代表、FIAシングルシーター委員会の会長職などを歴任。現在は要職に就いてはいないものの、このITRからの打診に対し既存の仕事にコミットメントすることに集中しているため、新たな仕事に取り組む可能性は今のところ高くはない、と語っている。
「彼らは『もし興味があるなら、ともに何ができるかを考えてみてほしい』と言ってきたが、現時点では新しい冒険を始めようとは思っていない。つまり、具体的な話は本当に何もないんだ」とベルガー。
「これは決まった話ではない。私にその仕事(ITRへの参画)をする可能性があることは認めるが、今は自分の机に仕事が山積みになっていて、どこから手をつけていいのかもわからない状態なんだ」
またベルガーは自身もDTMの大ファンであり、もし可能なら現状の問題点を指摘し、解決に導く手助けができればうれしい、とも付け加えた。
「とても良いプラットフォームだと思う。それに長い歴史を持っていることも魅力だ。今季は24台から18台に参加台数が減少するとはいえ、将来的には繁栄が続くと思う。モータースポーツでは良い時と悪い時があるのは普通のことだからね」
「DTMマシンは見た目もアグレッシブだし、もちろん甥(ルーカス・アウアー)の戦いぶりも気にしている。ドイツF3との併催も良い組み合わせだ。メルセデス、アウディ、BMWの強力な3社が存在し、シリーズを存続させようとしているのもうれしいね」
現時点では要職就任への明言を避けた形のベルガーだが、こうした動きの背景には、ツーリングカーの新たな世界選手権擁立へ向けた体制構築の必要性があると考えられている。
現在、TC1規定で運用されているWTCC世界ツーリングカー選手権は、2019年までにその役目を終え、DTMやスーパーGTが採用するクラス1規定をベースとした世界選手権に移行すると噂されている。
そのクラス1規定を2014年から採用した日本のスーパーGTに対し、ドイツDTMは予定を延期し2019年の採択を目指している。また、この時期に前後して北米IMSAも、新たな選手権設立に合意している。
このクラス1規定のコンセプトを熟知するアウフレヒトが、FIAの新世界選手権設立に向けた動きの中心的役割を果たすことになるとみられている。