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大河ドラマ『おんな城主 直虎』は男らしさ、女らしさを問う? 第一回放送に見た「予感」と「期待」

2017年01月09日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』が8日にスタートした。主人公の井伊直虎(おとわ)を柴咲コウが、直虎の幼馴染の井伊直親 (亀之丞)役を三浦春馬、小野政次役(鶴丸)を高橋一生が演じることでも話題だ。第一回の放送では、その子供時代が描かれているが、第四回の放送までは、子供時代を描くということでも話題となっている。


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 初回の放送では、一時間に満たない放送時間の中で、この物語の行く末を感じさせる様々な「予感」が描かれていた。


 今川義元に使える井伊家には、子供が女のおとわ(後の直虎)しかいないことで、彼女の父は「お前が男であったら、面倒なことも起こらぬものを。いっそ、おとわが継ぐか、わしの後を」と嘆くシーンがある。しかし、現段階ではそんなわけにもいかず、おとわは亀之丞(後の井伊直親)の許婚となる。つまり、亀は井伊家の次期当首になる人物となったのだ。


 しかし、この選択が波乱を生む。今川家との関係を重要視する小野政直らの画策によって亀之丞の父・井伊直満は今川に謀反を疑われ帰らぬ人に。亀も逃亡し行方不明になってしまうのだ。この今川義元を落語家の春風亭昇太が演じているのだが、妖気のただようような演技を見ていると、今後も何か物語の鍵となるのではという予感も漂わせていた。


 仲睦まじく野山を駆け巡っていた幼馴染の三人(おとわ、亀之丞、鶴丸)も、複雑な関係になることが予想される。この三人の三者三様の性格がそれぞれ初回で視聴者に伝わるように描かれていることで、この先、大人になったときに、どんな関係性に変化していくのかを、十分に期待させてくれた。


 おとわは、父親が跡継ぎにしたいと思うほどの闊達な女の子で、すでに亀や鶴よりも、当首の片鱗が感じられるが、亀が夫になることで、自分が当首になれないことを残念がっている描写もあった。また、おとわと将来結婚することで、次期党首を期待された亀だが、体が弱く、その器ではないことを気に病んでいる。一方の鶴は、聡明だが、今川派の父を持っているために、井伊家の大人たちからは、疎外されて育っていた。


 この三人が、子供ながらもそれぞれに不安や傷を抱えながら生きていることが第一回の放送で十分に描かれていたことで、後の直虎、直親、政次にどう引き継がれるかが、楽しみになってくる。


 特に、父を殺され逃亡した直親がどんな姿で直虎の前に戻ってくるのか、井伊家で孤立しながら成長する政次は、どんな葛藤を抱えた大人になっているのか、それを三浦春馬と高橋一生がどんな風に演じるのかを考えると、第五回まで登場が引っ張られるだけに、より期待がふくらんでしまう。


 この第一回の後半では、父親を亡くし憔悴した亀が「(当首が)俺でないほうがよいではないか」「ただのできそこないではないか」とおとわに嘆くシーンがある。そこでおとわは亀の良さを認めた後、「もしこのまま体が強うならねば、我が亀の手足となる。亀の変わりに我が馬に乗り、村々を回る。いざとなれば太刀を佩き、戦にもいってやる」と泣きながら訴える。


 このシーンを見ていると、これまでは守られる存在であることの多かったヒロインの役割が、自分の意思で立ち進むものになるであろうことも期待される。もしかしたら、直虎、直親、政次にとっての、男らしさとは何か、女らしさとは何かを問う物語にもなり得るのではないだろうか。(西森路代)