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「何とかなるだろ!」足の骨折で「両手松葉杖」なのに出張命令…断ることは可能?

2017年01月09日 10:02  弁護士ドットコム

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骨折をして近所の移動にも困っているのに、広島から東京への出張を命じられたーー。インターネット上の掲示板に、そんな書き込みが投稿された。


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投稿者は、左足を骨折し、両手で松葉杖をついている。家の中、近所の移動でも困るほどだが、上司に話しても「困ってるだけなら時間掛ければなんとかできるだろ、これ断るとキャリアに関わるから」などと言われたそうだ。


出張するには「階段しかない駅」を通る必要があり、車椅子での移動はできないという。投稿者は「筋肉ないから両手松葉杖は辛すぎるんだよなぁ」「駅の階段で落ちて死ぬわ」と嘆いている。


骨折をして日常的な移動にも困っていることを理由に、出張命令を断ることはできるのか。上林佑弁護士に聞いた。


●出張命令を拒否する権利はないが・・・

「そもそも『出張』とは、労働者が、使用者の求める業務を遂行するために、その指揮命令のもと、通常の勤務場所以外の場所で労務を行うことです。


使用者から労働者への出張命令は、一般的に労務指揮権の範囲内に属することですので、就業規則に根拠を求めるまでもなく、有効に発することができます。


したがって、労働者には、原則として出張命令を拒否する権利はありません。従わなければ業務命令違反を問われ、場合によっては懲戒処分などもあり得ます」


では、労働者はどんな時にも、出張命令に従わなければならないのか。


「必ずしもそうではありません。たとえば、使用者が、労働者に対する嫌がらせ目的で業務上の必要がない出張を命じるなど、業務命令権の濫用にあたる出張命令は無効とされています。労働者は、そのような出張命令には従う必要はありません」


今回のように、「骨折をしているのに出張を命じられた」というケースはどのように考えられるのか。


「結論から言うと、骨折をしていて移動が大変という事情だけでは、当然には、会社の出張命令を拒否することはできないでしょう。もっとも、先ほど述べたように、会社からの出張命令が、業務上の必要性がなく、ことさら嫌がらせ目的でなされたといった事情があれば、その命令は無効になる可能性があります」


残念ながら骨折をしたという事情だけでは、出張を拒否できないようだ。


「なお、使用者には、労働者がその生命・身体などの安全を確保しつつ働くことができるよう、必要な配慮をしなければならないという安全配慮義務が課せられています。


今回のケースで、会社が出張命令を発することが、直ちにこの安全配慮義務に違反するものとは言えませんが、骨折で移動だけでも大変な状態である労働者に対して、遠方への出張を命じることは、労働者の身体に相当程度の負担をかける可能性があります。状況によっては、安全配慮義務違反を問われる可能性もあり得るでしょう。


可能であれば他の労働者を代わりに出張させるなど、会社側にも、何らかの配慮があってもよいのではないかと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
上林 佑(かみばやし・ゆう)弁護士
仙台弁護士会所属。労働問題を中心に、その他企業法務一般、交通事故、知的財産権等、広く取り扱っている。
事務所名:三島法律事務所