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BAND-MAIDが、充実の2016年を経て見出したバンドの芯「今までとは違った“強さ”も見せたい」

2017年01月08日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

BAND-MAID

 BAND-MAIDが1stフルアルバム『Just Bring It』を1月11日にリリースする。2016年5月にリリースした3rdミニアルバム『Brand New MAID』以降、バンドは初の全国ツアー、メキシコやロンドン、ドイツ、フランスなどワールドツアーも行い、ライブパフォーマンスだけでなく、バンドとしての結束力も高めてきた。そして、国内外からも注目される今年リリースする『Just Bring It』では、BAND-MAIDによる作曲の楽曲も大幅に増えて、新たな可能性もみせる。今回のインタビューは、昨年行われたワールドツアーから本作でのバンドの芯について話を聞いた。(編集部)


・「メンバーとずっと音楽の話をしていた」(小鳩ミク)


ーー前回のインタビュー(参照:BAND-MAIDが明かす、“ギャップのある音楽”を作り続ける理由「バンドとして“世界征服”したい!」)が昨年5月のミニアルバム『Brand New MAID』リリース時だったのでまだ1年経ってないわけですが、とにかくここまで怒涛の展開でしたね。


小鳩ミク(G,Vo/以下、小鳩):気づいたら年が明けてました(笑)。昨年は初めてのワールドツアーをやらせていただいて、いろいろな国で「お給仕(=ライブ)をすることができました。


ーーまず最初にイギリスに行きましたが、リアクションはいかがでしたか?


小鳩:5月末に行ったときは、日本のカルチャーを紹介するコンベンション『MCM London Comic Con』でお給仕をやらせていただいて。アニメとか日本の文化が好きな方々が集まっていたので、メイド服というところにも反響をいただきましたし、お給仕もお祭りのように盛り上がってすごく楽しかったです。中でも……私たちはファンの皆さんのことを「ご主人様・お嬢様」と呼んでるんですけど、イギリスのご主人様・お嬢様は基本的に皆様コスプレをしてらっしゃいました。


ーーステージにはメイドさんがいて、客席にはまた別のコスプレをした方々がいるという不思議な空間が出来上がっていたと。


小鳩:すべてが異空間みたいな(笑)。しかも、日本語の歌詞が多いBAND-MAIDの曲に対してもすごく盛り上がってくださる方が多くて、本当に嬉しかったです。


ーー彩姫さんはフロントに立つぶん、ご主人様お嬢様とコミュニケーションを取る機会も多いですよね。


彩姫(Vo):はい。日本が好きでイベントに来ている方が多いので、実は日本語を勉強していてお上手な方が多いんです。皆さん「楽しみにしてたよ」「素晴らしい」と日本語で伝えてくれたり、私たちの名前を呼んでくれたりして。しかも歌詞も結構覚えてくれていて、初めてイギリスに行ったのに一緒に歌っている方もちらほらいました。


小鳩:「Thrill(スリル)」とかYouTubeでMVが公開されている曲では、歌ってる方も多かったですっぽ。


ーーなるほど。その後、国内ツアーもがっつり行い、秋にまた海外ツアーを敢行しました。


小鳩:そうなんですっぽ。ここまでツアーの年になるとは最初の頃は予測してなかったので、自分たちでもビックリの1年でした。


ーーでは、ライブの数は2015年よりも増えたんじゃないですか?


KANAMI(G):2015年も結構多かったよね?


小鳩:うん。国内を細々回っていたので、昨年のほうがちょっと多いかな?っていうぐらいの感覚で、特別多かったとは思わなくて。


彩姫:でも昨年は移動が多かったよね。一昨年は都内中心で活動していたので電車移動レベルだったんですけど、昨年は初めての全国ツアーもして、さらに海外にも行ったので、そこは大きな違いかな。しかも移動距離が長いぶん、メンバーと一緒にいる時間も増えました。


ーーそこでのメンバー間の結束が強まったり、お互いのことをより深く知れたりした?


小鳩:そうですっぽ。一緒にいる時間が長いと会話も増えますし。ちょうどツアー中にシングル『YOLO』とこのアルバムの制作が始まったので、メンバーとずっと音楽の話をしてました。


ーーそれだけ長く一緒にいると、相手のことがウザくなったりすることはありませんでした?


KANAMI:それが一番心配で、嫌いになっちゃう瞬間があるんじゃないかとか思いながらやってたけど、全然そうはならなくて。


彩姫:自分の時間が欲しいときは、まったく話さなくなるので(笑)。そういう切り替えがちゃんとできていたから、衝突することはなかったです。どちらかというと曲作りの面で、意見をぶつけ合うことのほうが多かったかな。私が一方的にぶつけてたんですけど(笑)。


ーーそれはバンドに対するこだわりがあるから?


彩姫:そうです。BAND-MAIDの音楽性を第一に考えて、そこをやったらBAND-MAIDっぽさから外れちゃうとか話して軌道修正することもありました。


ーー意見をぶつけ合うことはあっても、険悪になることはなかったと。そういう意味では、皆さん大人なんですね。


彩姫:というか、面倒くさがりなだけかも。つまらないことでぶつかるのも面倒くさいから、「はいはい」みたいな(笑)。


小鳩:5人いるんで、ぶつかりそうになったら誰か1人がうまくスッと間に入ってくる感じですっぽ。


ーー昨年11月には、アルバムと同時期に制作されたメジャー1stシングル『YOLO』も発売。最初に聴いたとき、一つひとつの音の粒が太くて重くなったと感じました。と同時に、小鳩さんと彩姫さんの声もより太くなってきたなと。


彩姫:ああ、確かに。


小鳩:最近よく似てると言われるんですよね。声質自体は違うんですけど、歌い方が近くなってきたのかな。それが顕著に表れているのかなと思いますっぽ。


・「よりライブ映えする楽曲が多くなった」(彩姫)


ーーそしてついに1stフルアルバム『Just Bring It』がリリースされます。これまで発表してきたミニアルバムは10曲まで満たない程良い長さでしたが、今作は全13曲収録。収録曲数が増えることで、聴かせ方も以前とは違った工夫が必要になるのかなと思いますが?


小鳩:そうですね。フルアルバムを作るんだったら、自分たちが今まで見せられなかった、ちょっと今までのBAND-MAIDとはタイプの違う楽曲に挑戦できるチャンスかなと話して。それで最初にできたのが、11曲目の「Awkward」だったんです。


KANAMI:基本的にBAND-MAIDの楽曲制作では、まず私がメロディやリフ、大まかな構成を考えてみんなに投げてるんですけど、この曲は最初にメロディをメンバーに提出したときに、MISAが「すごい! これやりたい!」とめっちゃ食いついてきて。その時点ではまだアレンジ前だったので、「だったら一緒にやってみる?」とアイデアを出し合ったんです。それもあってか、以前とはちょっと雰囲気が違うのかもしれませんね。


MISA(B):「Awkward」は普段自分が好きな音楽と近い匂いがして。最初に聴いたときはその空気感に惹かれて、それでアレンジしたいと申し出たんです。


ーーこの曲、リズム隊のアンサンブルがめちゃめちゃカッコいいと思いました。


MISA:本当ですか? すごく繊細なリズムで、私も気に入ってます。


AKANE(Dr):Aメロは特に3点(バスドラム、スネア、ハイハット)を中心に構成されているので、激しさよりも繊細さにこだわりました。ハイハットのニュアンスも結構難しかったんですよ。これは私たちにとっても成長の1曲ですね。


ーーそういう、バンドにとって新境地的な楽曲から制作が始まったんですね。さっきSAIKIさんが「BAND-MAIDらしさ」と口にしましたが、新しい側面を見せつつも、BAND-MAIDとして守るべき芯の部分とのバランスも考えたということでしょうか?


彩姫:そうです。話し合うことでメンバー間で共通の認識を持って、制作を進めていったんです。


ーー全体的にヘヴィさが強まった印象がありますが、ところどころに「Awkward」のような気だるさの強い楽曲や「OOPARTS」みたいにポップな曲も入ってきて、そこでメリハリをつけている。結果、13曲通して聴いてもダレることがないんです。


彩姫:飽きないようにというのは、常に意識してました。


小鳩:曲順は基本この2人(小鳩、彩姫)で考えたんですけど、1曲目から続けて聴いて楽しめるような曲順はかなり意識しました。


ーーしかも、今作では全13曲中9曲がBAND-MAIDによる作曲ナンバー。前作『Brand New MAID』のときは「alone
1曲のみでしたが、先日のシングル『YOLO』でも3曲すべてがバンドのオリジナル曲でしたし、そこでの成長も感じられて興味深かったです。


KANAMI:いやぁ、ここまで採用されると本当に嬉しいですね。


小鳩:アルバム用に楽曲コンペを開いたんですけど、そこで自分たちで作った曲を多く出せて、しかもたくさん採用されたというのは自信につながりました。


ーー曲作りやアレンジにおいて、海外でのライブや初の全国ツアーの経験は反映されていると思いますか?


小鳩:ツアー中に制作を進めていったので、そこでの生の声というのは少なくとも入ってきてるんじゃないかな。


彩姫:その土地土地のご主人様、お嬢様の反応を見ながら、「こういう感じが好きなんだね。じゃあもっとこっちで攻めようか」も確認できたし。そういう意味では、よりライブ映えする楽曲が多くなったんじゃないかと思います。でも、作家さんに提供していただく楽曲も大事で、アレンジを聴いて勉強することも多いですし、いい刺激になってますね。


小鳩:自分たちが思いつかなかったアイデアもあるので、「これを吸収しちゃおう」とか話したり(笑)。なので、第三者が考えるBAND-MAIDの曲というのもすごく大事だなと思ってますっぽ。


ーー皆さんそれぞれ、今回のアルバムで特にこだわったパートや注目してほしいポイントはありますか?


MISA:私は普段5弦ベースを使ってるんですけど、さっき話に上がった「Awkward」では唯一フェンダーの4弦ベースを使っていて。サビまでのフレーズも何パターンも考えて、いろいろ詰めまくってる1曲なんですよ。


ーーベースだと、7曲目「Take me highter!!」のスラップもカッコいいですよね。


MISA:ありがとうございます!


KANAMI:あそこは「ベースきた!」じゃないですけど、ソロっぽいのを入れたいねみたいな話があって考えたんだよね。


ーーあのスラップからのベースラインへの流れが、すごく気持ち良いんですよ。


MISA:演奏する側も気持ち良いですよ(笑)。あと、2曲目の「PuzzleにはKANAMIと私のユニゾンパートがあって。サビで速弾きをするんですけど、そこは結構苦戦しましたね。もともと速弾きに対して苦手意識があったんですけど、練習を重ねてレコーディングまでになんとか弾けるようになりました。


AKANE:私は挑戦というか、3曲目の「モラトリアム」が一番の強敵でした。この曲はスネアとバスドラのコンビネーションがすごく大切になるので、一番集中力を研ぎ澄まして叩いていて。だから『Just Bring It』(「かかってこい!」の意)ってタイトルは、「モラトリアム」に言われてるような気がしているんです。


ーーそれだけ気合いが入った1曲だと。


AKANE:はい。それと「Puzzle」はリズム展開がすごく多いんですけど、これは彩姫からのアイデアで。1曲通して飽きないようなアレンジに仕上がっていて、結果自分の引き出しを増やすことにつながったと思います。


ーー今作ではリズムのパターンが増え、聴かせ方も以前と変わってきてますよね。


AKANE:はい。それこそ13曲目の「secret My lips」もそうですけど、1曲通して展開がコロコロ変わる曲が今回は多いので、コピーする人は大変だろうなと(笑)。


ーーコピーする人に対しても「かかってこい!」と。


AKANE:まさにその気持ちです(笑)。


・「音で説得させたい」(KANAMI)


ーー小鳩さんはいかがですか?


小鳩:今回はバンドで作曲した曲だけじゃなくて、作家さんに提供していただいた曲でも作詞をだいぶさせていただいて。本当は時間をかけて書きたかったんですけど、ツアー中の制作ということで限られた少ない時間の中で、自分を追い込んで書いたものがたくさんあるんですっぽ。そういう意味では、この作品自体すごく思い入れが強いですね。特に印象に残ってるのは、私がメインで歌わせてもらっている9曲目の「TIME」。こういうこともフルアルバムでしかできないことだと思うんです。


ーー「TIME」の歌詞は決意表明的な内容ですよね。


小鳩:そうですっぽ。曲を聴いたときにすごく前向きな印象を受けたので、過去を踏まえて先に進んでいく覚悟を見せられたらと思って書きました。そういう意味でも、いろんな “時間”を感じていただける曲になったんじゃないかな。


ーー歌詞で書きたいことや伝えたいことにおいて、この1年で変化はありましたか?


小鳩:もともとBAND-MAIDの歌詞には強い女性像というテーマがあるんですけど、今まではただ強さだけを主張するものが多くて。でも、自分たちで楽曲制作をするようになってからはもう少し闇の部分とか、強さの中にある弱さとかも見せていきたいと思うようになったんです。なので今回のアルバムでは、今までとはちょっと違った意味合いの“強さ”も見せていけたらというふうに、意識が変わってきたと思いますっぽ。


ーーなるほど。では、続いて彩姫さん。


彩姫:今回のレコーディングではただ勢いだけではなくて、いろんな表情のつけ方をスタッフさんから学びました。例えば「Puzzle」なんですけど、歌詞が……不倫?


小鳩:不倫とか浮気とか、そういうイメージ。


彩姫:女性って何かいけないことをしているのが楽しいみたいな、そういうところがあると思うんです。


他のメンバー:えーっ!?(笑)


彩姫:(笑)。なので、あまり暗くなりすぎないように、意識して歌いました。ドロッとしすぎるとBAND-MAIDっぽくないので、そこは違うかなと思いながら歌って。そして「モラトリアム」はライブ曲として考えていたので、みんなで歌ってもらえるようなフレーズも入れました。レコーディングではスタッフさんに手伝ってもらって声を入れたんです。


小鳩:「WOW WOW WOW~」っていうところは、男性スタッフさんに歌っていただきました。


彩姫:ぜひお給仕でみんなで歌えたらなと思いますね。


ーー今回、そういうシンガロングできるタイプの楽曲が増えましたね。


彩姫:そうですね。今までのBAND-MAIDにはそういう曲がなくて、自分たちで演奏して「そこで見てろ」みたいな感じだったので(笑)、今回はひとつになれる曲を増やしたいねって思いで制作したところはあります。


ーー最後はKANAMIさん。


KANAMI:今回ほとんどのギターソロは事前に練って、すごく練習して持っていったものばかりだったので、全部聴いてもらいたいです(笑)。中でも「Awkward」は曲を作ってから意外と早く歌詞も上がってきて、歌詞をもらった後にレコーディングしたので、歌詞を反映したギタープレイになってます。


ーー個人的には「secret My lips」のソロ明けの、ギターフレーズがすごく好きで。


KANAMI:本当ですか? あそこもすごく練っていて、ギターテックさんにいろいろアドバイスをいただきながら弾きました。それと「So, What?」は作曲者の後藤(康二)さんがかなりロッカーな方で、「もっと感情的になって、ここは弾こうよ!」と言われて「ソロを考えてきたんですけど、じゃあ別のフレーズを弾いてみます」みたいに弾いたこともあって(笑)。楽曲提供していただいたものは、その場で何パターンかその場で考えて弾くことが多かったです。


ーー今回のレコーディングを経験したことで、皆さんミュージシャンとしてかなり成長したことが伺える1枚に仕上がったと思います。それこそガールズバンドに対して偏見を持つ人を、音でねじ伏せるぐらいの強い意志を感じました。


KANAMI:お給仕もですけど、音で説得させたいよね。


小鳩:まずは聴いてもらって、たくさんの人に「かかってこい!」と言いたいなと思いますっぽ。


ーーアルバム発売直前の1月9日には、赤坂BLITZでのワンマンお給仕も控えています。


小鳩:「BLITZワンマン」という響きが自分たちのものじゃない気がしていて(笑)。変な感じがするよね?


彩姫:まだあんまり考えたくないというか(笑)。


ーーえ、なんでですか?


小鳩:急に大きくなったので、怖さとかいろいろあるしね(笑)。


彩姫:ワンマンだと初めての規模の会場なので、すごく胃がギューっとなります(笑)。でも楽しみですけどね。プレリリースのお給仕なので、「かかってこい!」なセットリストにしちゃおうと思います。


小鳩:ぜひこの日にご帰宅(=来場)していただいて、アルバムの感触を掴んでいただけたらなと思いますっぽ。


ーーでは最後に皆さんそれぞれ、2017年の展望や目標を聞かせてください。


MISA:海外にもたくさん行きたいし、日本の大きいフェスにも出たいです。


彩姫:日本ではまず、お茶の間に知ってもらえるようなバンドになりたいと思います。海外だったら昨年はヨーロッパ中心だったので、次はアメリカのほうを攻めていきたいな。あと、一度行った国に何度も行けるようになって、地元のご主人様お嬢様から「おかえり!」と言ってもらえるようにもなりたいです。


小鳩:いろんな国の方とBAND-MAIDでコミュニケーションが取れたらいいな。それと今年は酉年なので、小鳩の年にしてやりたいなと(笑)。日本中を「くるっぽ」と言わせられるようになりたいと思いますっぽ!


AKANE:「YOLO」がスマホアプリのタイアップになったように、今後もそういう形でどんどんバンド名を外に向けて発信できたらな、というのも目標ですね。


KANAMI:ギターやバンドの技術向上はもちろんなんですけど、今回みたいにいっぱいバンドのオリジナル曲を入れてもらえるように、とにかくもっと頑張りたいです。


ーーもしかしたら、アルバム全曲オリジナル曲というのも挑戦かもしれないですね。と同時に、作家さんの曲を入れてバランスを取れるのも、BAND-MAIDの強みでもありますし。


小鳩:そうですね。いろんな色を出せていけたらなと思っているので、いただく曲も大事にしたいなと。そこからいいところだけ奪って、自分たちのものにしていけたらなと思いますっぽ!
(取材・文=西廣智一)