先日、安いビジネスホテルに宿泊した際、眠れなかった。その理由は幽霊が出たわけでも、空調が効かなかったわけでもなく、隣の部屋からの"音"にある。
真夜中にシャワーを使ったり、音楽を流していたり、くしゃみ、鼻をかむ音、そして高いびきなどが、薄い壁のせいか、もろに聴こえてきた。「うるさいなぁ」と思う反面、もしもこれが自分の住む部屋の隣の住人だったらと考えると、ゾッとした。(文:松本ミゾレ)
騒々しい工場に相当する騒音が夜中延々と聴こえる環境……警察呼ぶのも納得
昨年11月、2ちゃんねるに「上階うるさいから警察呼んだった」というスレッドが立っていた。タイトルの通り、日本の密集した住宅事情に付き物の、ありがちな生活音問題のせいで苦労をしている人の立てた話題である。
夜の10時から1時まで足音や物をずらす音が延々と聴こえるのだという。騒音を計測してみたところ、90デシベルを計測したのだとか。日本騒音調査の企業サイトによると、これは犬の鳴き声を、正面5メートルから聞いてみたり、騒々しい工場の中にいる場合の音量に相当する。
この人物いわく「正直地下鉄の車内の方が静かだよ。そんなのと比べ物にならないくらいうるさい」「ヘッドホンで音楽を聴いてても聞こえてくる」というレベルだったそうだ。
管理人を飛び越えていきなり警察に通報するのもうなずける。結果的に上階はいきなり静かになったそうなので良かった。自分の住居では、騒音被害になんか遭いたくない。納得して空港や線路の近くに住んでいるわけでもないのなら、極力騒音には悩まされたくない。
自分の生活音が心配な人はせめて自分で防音対策を
僕の知人に、騒音に頭を抱えて、結局引っ越してしまった男がいる。彼の住んでいたマンションには、近所でも有名なばあさんがいたそうだ。宗教にハマっていて、いつも早朝から太鼓を叩いてはお経だか祝詞だか分からないものを大声で独唱していたという。
夏場であっても太陽が昇らないうちからこれをやりだすので、近隣はみんな迷惑をしていた。加えて耳が遠いのか、ラジオの音量も格別に大きく、知人は部屋を閉め切っていても、ラジオの人生相談が聞き取れたと話していた。
このマンションの管理会社も、ばあさんの処遇には手を焼いていたようで、何度注意しても聞き入れてもらえなかった。結局ほどなくしてばあさんは一人で生活するのが難しくなり、施設に入ったということだが、その後マンション全体が「こんなに快適だったのか!」と思えるほど静かな環境に激変したそうだ。
もっとも、人の振り見て我が振り直せという言葉もある。騒音を偉そうに指摘する前に、自分が騒音を出していないかどうか、よくよく考えることも大事かもしれない。
洗濯機を使ったり、掃除機を用いるにも時間帯を考えるのは重要だ。音楽を聴くにしても、スピーカーから出る音量や、ウーハーが下に響いてないか注意しないといけない。
僕は猫を飼っているが、この猫が結構おしゃべりなので、「隣に迷惑かけるといけないなぁ」と思い、防音マットで壁を覆った上で、壁一面に棚を設置して音漏れを防いでいる。
また、なんとなく防音ガラスを窓に差し込んでみた。そもそも僕が猫を飼っていることすら管理人しか知らないので、恐らくこれで近隣には迷惑はかかっていないと思う。
というか、世間には騒音を出しているにも関わらず、そのことを重く考えていない無頓着な人が少ないながらも確実にいる。こういう心配りのできない人の出す騒音のせいで、みんなが迷惑をするのは不公平だ。
騒音に悩む側が対策にお金を出しちゃったという話をたまに聞くが、そもそも騒音を出している可能性がある側がお金を出して音漏れ対策をする方が道理に合っている。アパートやマンション。住宅密集地では、個々の思いやりとお金を出して行う対策で、随分と騒音被害は減るんじゃないだろうか。