F1フリークのみなさんは、電撃引退したニコ・ロズベルグの後任候補や、2017年のニューマシンについての想像を膨らませながらシーズンオフを過ごしていることだろう。その気持ちは我々も同じだが、好き勝手に発言するなら、いまこそが絶好の機会だ。
新春恒例の覆面座談会という形でお届けしている毎年恒例の企画。パート2となる今回も、ちょっと毒舌なジャーナリストと、個性的なフォトグラファーがきわどいトークを展開した。そのため、彼らの身元を明かすことは難しい。以下に最小限のプロフィールを紹介するのでこれで勘弁してほしい。
A氏:美食と美女には一家言ありの情報通ジェットセッター
B氏:見た目はラテン系、足とタフさで独自のネタを稼ぐ、プレスセンターの主
C氏:今回初参戦、見た目も心も超体育会系なアート系フォトグラファー
■バルテリ・ボッタス加入でチームの戦力はダウン?もうひとりの候補、パスカル・ウェーレインの意外な弱点とは?
──ロズベルグの後任候補は、既報の通りボッタスが最有力のようだが。
A氏「恐らくね。ただ、ルイス・ハミルトンはロズベルグのセットアップの大部分をコピーしていたらしいから、ボッタスが入るとチーム全体の戦力が落ちる可能性がある。彼(ボッタス)が出てきたときは、キミ・ライコネン以来、4人目のフィンランド人チャンピオンが生まれると言われていたものだが、伸び悩んでしまったね。結局、チームメイトのフェリペ・マッサに圧倒的な差を付けて勝てなかった。とはいえ、チーム内部の本当の評価というものは分からないものだが。フォース・インディアのチーム内ではニコ・ヒュルケンベルグの評価が圧倒的に高いわけだからね」
B氏「そう。ヒュルケンベルグのフォース・インディアでの評価を見てもわかるように、チーム関係者は実際の走行データを見ているから、外野にいる私たち以上に正確に評価していると思う。例えば、メルセデスの評価もウェーレインよりもエステバン・オコンのほうが高かったし、逆に、ハースをクビになったエステバン・グティエレスの評価は成績以上に低かった。このスポーツでは速くないドライバーとマシンのセットアップができないドライバーはいくら持参金があってもトップチームのシートには座れないものなんだ」
C氏「私は個人的にボッタスに期待しているよ。ヤツは間違いなく速いし、良いマシンに乗れば絶対にチャンピオン争いができる才能を持っていると思う」
A氏「私はまだ懐疑的だな……フェラーリがボッタスを選ばず、ライコネンを残留させた経緯もあるし。でも、奥さんは素敵だね」
C氏「君はああいう女性がタイプなのか(笑)。まあ、未知数な要素があったほうがシーズンは面白くなるじゃない。遅ければ1年でクビだろうし、もしハミルトン並に速ければエキサイティングなシーズンになる。そこは本当に楽しみだ」
B氏「ただし、そのボッタスに関して忘れてはならないのが、今回メルセデスに行く可能性が高いのはあくまでロズベルグが電撃引退したから。もし、ロズベルグが引退していなければ、(マネージャーが)トト・ウォルフという強いコネがありながらもメルセデスに行けなかっただろうし、フェラーリも取らなかったことを考えると、チーム関係者からの評価はそれほど高くないかもしれない。ただひとつ未知数なのは、ボッタスは、フォーミュラ・ルノーでダニエル・リカルドといいバトルをやってたことだ。つまり、同じマシンなら、ハミルトンともいい勝負をしてもおかしくはない」
──メルセデス移籍の可能性があるもうひとりのドライバー、ウェーレインについては?
A氏「メルセデスがウェーレインのことを本当に評価しているなら、すぐにロズベルグの後任に選んだだろう。ボッタスを第一に考えているということは、あまり評価していないということの現れじゃないか?」
C氏「私はテストでウェーレインを起用したとあるチームの関係者に、彼の評価を聞いたことがある。その関係者によれば、ウェーレインはテスト中のセットアップの変更や、テストメニューに関するチームからのリクエストをなかなか聞き入れようとセず、マシンやドライビングに関する自分の主張を曲げようとしなかったそうだ。その半面、オコンはチームにとても協力的で、仕事は進めやすかったと言っていたよ」
A氏「そのオコンにしても、某チームのエンジニアに言わせればずば抜けた才能という訳ではないとのことだよ。レッドブルの育成システムに比べると、メルセデスのそれは若干劣って見えるな。ちなみにそのエンジニアは、若手のなかではストフェル・バンドーンが圧倒的だと言っていた。ただ、我々の立場から言わせてもらうと、彼はコメントが優等生的で本当につまらない(笑)」
B氏「オコンに関して、私は反対の声を聞いている。ロータス時代にテストでオコンと仕事をしたエンジニアは、オコンのフィードバックの素晴らしさと、タイヤの使い方を絶賛していたんだよ。メルセデスの育成プログラムからレンタルという形でリザーブ契約を結んでいたルノーは、彼の契約をメルセデスから買い取るべきだったと思うよ」
A氏「どちらが選ばれるにしても、評価が固まっていないドライバーの真の実力を図るという意味でも、チームの移籍は重要なこと。16年はダニール・クビアトが降格になったことで、カルロス・サインツJr.が速いドライバーだということが分かった」
C氏「もしボッタスが移籍すれば、引退したマッサも戻ってくるかもしれない。マッサのファンにとっても良いかもね」
■休養を発表したバトンは、早く引退したくて仕方なかった?
──そのマッサは正式に引退発表を行ったが、ウイリアムズから17年のオファーを受けたと報道された。しかし、ジェンソン・バトンの名前がいっさい噂に出てこない。1年間の休養を発表したものの、最終戦の記者会見では「最後のレースになるだろうと」宣言し、正式な引退発表をせずに去っていったバトンについては?
A氏「少しかわいそうだと思ったよ。本人は休養ではなく、引退したくて仕方なかったのに。でもロン・デニスからあれだけ慰留されたら……。本人はモンツァでの発表直後から、『18年も走ることはないだろう』と言っていた。正式に引退発表をしたマッサはまだやる気があって、ウイリアムズに戻ってきそうな状況を考えると、皮肉なものだね」
──フェルナンド・アロンソかストフェル・バンドーンが、17年末で移籍してしまったときの皮算用としてバトンを残しておくという考えがあった?
A氏「確かに、アロンソが別のチームに行ってしまったときの保険かもしれない。アロンソだって、本音ではメルセデスに乗りたくて仕方がないはずだからね。いつ芽が出るかわからないマクラーレンにいても……」
B氏「マーケティング的な観点で言えば、2年前にマクラーレンがケビン・マグヌッセンではなくバトンを選んだとき、1対1のインタビューでデニスは『イギリスのメディア向けに、イギリス人ドライバーを残しておきたかった』とハッキリ言っていたからね。マクラーレンからイギリス人ドライバーがいなくなるのは、06年のライコネン&モントーヤ以来。今回もリザーブでもなんでもいいからバトンを残したかったという感じで、レッドブルやウイリアムズに比べると、マクラーレンは本当にイギリス色の強いチームだという印象だ」
C氏「バトンはフォトジェニックな存在であるし、撮影していて嫌な思いもしたことがないから、個人的には好きだったなあ」
──バトンは真のナイスガイだという印象で、そういう報道をされることも少なくない。
A氏「本当のところは我々にも分からないけどね。以前、メディアがしきりに『バトンは紳士だ、良い人だ』と書きまくるものだから、マクラーレンの広報担当の女性がそれに反発して『チャンピオンになるようなドライバーに、真に良い人はいないわ。そうでもなきゃチャンピオンにはなれないでしょ』と言っていたなあ」
──今さらだが、前の奥さんとの離婚の原因は……?
A氏「それに関しては全く……そもそも聞きづらいしね。離婚届はとっくに提出済みのようだが。バトンはレースのことしか頭にない人だから……彼に家庭生活は難しいと思うよ」
C氏「例の昏睡強盗事件以降、ふたりの関係性が変わってしまったという噂もある」
B氏「私は15年の中国GPでバトンと1対1のインタビューしたことがあって、そのときは珍しくプライベートなこともたくさん喋ってくれた。もちろん、彼女とも仲良くしていた。最後に彼女を見たのはその年のアメリカGPで、そのときもピットから出て行くバトンの姿をスマホで撮っていた。そして、その直後に破局。少なくとも彼女から別れ話を切り出したとは考えにくく、飽きっぽいバトンがまた例の病気を再発させたんじゃないか?」
……バトンについては掲載できないことも含め、いろいろときわどい話が飛び出てきそうだが、今回はここまで。パート3ではマクラーレン・ホンダの進歩と17年以降の展望、そしてロン・デニス失脚の裏側など、引き続き辛口のトークが展開されたのでお楽しみに。