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高校生ドライバー佐藤万璃音イタリア挑戦記 第10回:F3ドライバーになったら声優さんとお話ししたい!

2017年01月05日 16:21  AUTOSPORT web

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ミュッケでメルセデス・エンジンの力強さを体感
■メルセデスとフォルクスワーゲン、異なるエンジン特性を把握したF3テスト
 12月上旬、スペインとポルトガルのFIA-F3テストに参加した17歳の高校生ドライバー、佐藤万璃音(さとうまりの)にポルトガル・エストリルのサーキットで会った。開口一番は彼のメッセージ。

「まず、FIA-F4イタリアというジュニア・フォーミュラに参戦する僕に興味を持っていただいたファンの皆さんと、成長途上の僕の記事を10回にわたり掲載していただいたオートスポーツWEBさんに感謝しています。この最終回がファンの皆さんの目に触れるのは2017年になると思いますので、“新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます”と書き添えてください(汗)」

 17歳らしくない紋切り型の挨拶から始まった万璃音との再会。「調子はどう?」という無難な質問をぶつけたところ、17歳の高校生は以下のように返してきた。

「もう、バッチリです。10月末にFIA-F4イタリアの最終戦を終えたあとに一時帰国して、11月末には横浜アリーナで(女性アーティストであるLiSA主催のコンサート)“LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~”を観ました! ほぼ目の前にLiSAさんが居たので、マジ感動しました! ペンライトを振りすぎて、次の日には腕が上がらなくなりました!」

 うーん、それは良かった。でも、モトパークとミュッケから参加したバルセロナ、モトパークから参加したヘレス、ここまでのFIA-F3テストはどうだったかなーと……。

「なるほど……(汗) F3マシンに乗ったのは、15年10月にオーストリアのレッドブル・リンクで実施されたテスト以来です。そのときのチームはフォルクスワーゲン・エンジンを積むモトパーク。今回の短期集中テストでもまずはモトパークで乗り、続いてメルセデス・エンジンを積むミュッケで乗りました」

 エンジンの違いは感じたのだろうか?

「フォルクスワーゲンは上の回転数で伸びを感じ、メルセデスは下の回転数で力強さを感じました。いずれも甲乙つけがたく、どちらが勝っているかはサーキットの特性に拠ると思います」



■習熟テストがメインも来季に向けたメニューにも取り組んだ
 最終的に2週間で800周以上も走り込んだテスト、手応えを感じられたのか?

「この時期、テストへの取り組みはそれぞれのチームで異なります。ドライバーに良いタイムを出させるのが主眼なのか? 経験の少ないドライバーにF3マシンを慣れさせるためか? それとも、来季に向けたデータの収集が目的なのか? タイムや順位だけで語るのは難しい」

「モトパークで乗ったときにチームから僕へ課されたテスト・メニューは、F3マシンに慣れることがメイン」

「とはいえ、来季から改定される車両規則に基づき、新しい空力部品を装着したり、車両最低重量の増加に合わせたり。来たる17シーズンを見据えたテストでもありました」

「新しいフロントウイングを装着した際には、中高速コーナーでの安定感を経験しました。来季は、リアウイングやサイドポッドやフロア後部にも新しい空力部品が装着されます。最低でも1.5秒はラップタイムを削れるようなので、フィジカル・トレーニングは大事です」

 滞りなく短期集中FIA-F3テストを終えたのか?

「トラブルフリーではありませんでした。スペインのヘレスでは、縁石を跨いだときに軽いダメージをクルマに与えました」

「また、ポルトガルのエストリルでは車載の消火器がプシュっと…。消火器のアクシデントは、モンツァのFIA-F4イタリアに続き2度目。前回も今回も、僕を“指導”する目的でタキさん(元F1ドライバーの井上隆智穂)が現場に来たときに限ってです」

 モナコの怪人、出入り禁止にしたほうが良かったのでは?

「いやいや。タキさんの人脈は“自動車レース界のお笑い芸人”とは思えないほど多岐にわたりますし、レーシングカーのセットアップやドライビングに関する知識は相当なモノです」

「え? 少し持ち上げすぎましたかね? もちろん、消火器のアクシデントはもうコリゴリです……(汗)」



■FIA-F3へのステップアップを望む。その先の野望は……
 今回のテストを通じて、17シーズンFIA-F3ユーロ参戦の可能性は?

「正直、FIA-F4イタリアのイモラで優勝するまではあまり自信がありませんでした。でも、16シーズン終盤は思いどおりのレースができて、ステップアップしたいと強く思いました。いまは来季のFIA-F3ユーロへの参戦を最優先で望んでいます」

「たしかに、今回のテスト序盤は横Gで首が飛びそうなほどでツラかった……。でも、短期集中テストの総仕上げとなるエストリルでは、肉体的にはすごくラクでしたし、16シーズンのFIA-F3ユーロでランキング5位に就けたジョエル・エリクソンと遜色ないラップタイムを出せました」

 FIA-F3ユーロへステップアップしたあかつきの抱負は?

「まず、LiSAさんのライプへは絶対に行きたい。彼女の曲を聴くため、十数万円のイヤホンやアンプを買いました」

「その費用捻出のため、カートレースのメカニックのバイトもできるだけやりたい。無事にFIA-F3ユーロで戦う機会が得られたら、いずれ僕が好きな声優さんに会ったりお話しできたらいいかなと」

 自動車メーカーの育成プログラムには乗っていないものの、彼のように意欲的で若い日本人ドライバーの挑戦には今後も期待したい……(汗)