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彼女「ノートPC欲しい」、プレゼントしたら3日後「別れて」…取り返すことは可能?

2017年01月05日 10:32  弁護士ドットコム

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7年つきあった彼女にプロポーズしたら「新しいノートパソコンがほしい」と言われ、「MacBook」をプレゼントすると、3日後に別れを切り出されたーー。そんな悲しいエピソードがツイートされ、注目を集めた。


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「彼女はWindows派だったのでは」と茶化すコメントや、「トラウマ過ぎる」と同情するコメントなど、さまざまな反応が寄せられた。一方、中には、「パソコンは取り戻せるのではないか」と指摘する意見もあった。


プロポーズするほど好きな彼女から何か「おねだり」されたら、ためらわず買ってあげる人もいるだろう。一方で、買ってあげた直後に振られることは想定していないはずだ。


一般的に、付き合っているパートナーにプレゼントした直後に別れることになった場合、あげたモノを取り戻すことはできるのだろうか。髙田英治弁護士に聞いた。


●プレゼントをした「動機」に錯誤があったといえるが・・・

「彼女にモノをあげる行為は、法的には贈与と評価されます。贈与も契約の一種ですから、後からあげたモノの返還を求めることはできないのが原則です。


しかし、本人に錯誤があったり、相手の詐欺によって行われたりしたものであれば、例外的に契約の無効や取り消しを主張して、取り戻すことができる可能性があります」


髙田弁護士はこのように指摘する。どんな場合に錯誤や詐欺が認められる可能性があるのか。


「まず、錯誤についてですが、今回のケースは、『プレゼントをしたら、彼女はプロポーズをOKしてくれるつもりだ(少なくとも自分と別れるつもりはない)』と信じてプレゼントしたのに、実際には彼女はすぐに別れるつもりだったというケースだと考えられます。


こうした、プレゼントをした『動機』の部分に錯誤があるにすぎない場合、例外的に、相手に動機を伝えた上でプレゼントを渡したような事情がない限り、贈与の無効を主張することはできません」


つまり、今回のケースであれば、「あなたにノートパソコンをプレゼントすればプロポーズをOKしてもらえると考えているので、プレゼントします」と伝えて渡した、といった事情があれば、動機部分の錯誤であったとしても、贈与の無効を主張できる可能性があるわけだ。


「そうですね。しかし、プレゼントをするときに、わざわざそのような動機を伝えることは稀でしょう。


また、錯誤の内容は、『その錯誤がなければプレゼントをすることもなかっただろう』といえるほど重要な事実に関するものである必要があります。


しかし、この点に関しても、よほど高額の物品をプレゼントしたような場合でもない限り、いずれにせよ彼女の気を引くためにプレゼントをしていた可能性もありそうです。


特に、今回のように、男性が彼女のことをプロポーズするほど好きだったのであれば、なおさらではないでしょうか。


こうしたことから、錯誤の主張が認められる可能性は低いのではないかと思います」


●「余程の事情がない限り、あとから取り戻すことは難しい」

詐欺についてはどうだろうか。


「例えば、彼女が本当はすぐに別れるつもりであったのに、『結婚するつもりだから』などと積極的に嘘を付いてプレゼントをさせた場合には、詐欺を主張して契約を取り消すことができる可能性は十分あるでしょう。


しかし、そうではなく、男性がそのように思い込んでいただけなのであれば、パートナーが本当の気持ちを伝えていなかったからといって、それだけでは詐欺とまでは評価されない可能性が高いと思います。


今回のケースとは異なりますが、彼女がプレゼントをもらう時点では、まだ別れるつもりはなかったものの、その後のケンカなどが原因で別れることになった場合には、錯誤や詐欺を主張してあげたモノを取り戻すことはできないでしょう。


このような場合、プレゼントをする時点における彼女の意思について男性に錯誤はなく、また、彼女も嘘はついていないからです。


結局、一旦彼女にプレゼントしたものは、余程の事情がない限り、あとから取り戻すことは難しいと考えておいた方がよいと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
髙田 英治(たかた・えいじ)弁護士
2009年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。企業法務を中心に、会社・個人の法律問題を幅広く取り扱う。
事務所名:髙田総合法律事務所
事務所URL:http://www.takata-law.com/