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【ホンダF1特集】第2チーム供給への道筋(2):気になるパートナーと互いのメリット

2017年01月05日 06:01  AUTOSPORT web

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2016年第7戦カナダGP フェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)
ホンダがマクラーレンと共に進歩を続けるにつれて、もうひとつ別のチームにもF1パワーユニットを供給する可能性が高まってきた。そして、その実現を心待ちにしているパートナー候補もいる。2018年にもホンダが第2のチームに供給する可能性は非常に高いと英AUTOSPORTのローレンス・バレットは考え、その根拠を示した。

 今回は「ホンダ、第2チーム供給への道筋(1):4年目に向けて整ってきた体制」に続く第2回として、どこが第2チームとなり得るのかを考察する。

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■ホンダはどのチームと組むのか

 言うまでもなく、メルセデス、フェラーリ、ルノーの各ワークスチームは最初から対象外で、レッドブルとトロロッソがルノーと交わした契約の期限は、2018年末までとされている。

 ウイリアムズとフォース・インディアは、メルセデスとの間に長期的な提携契約がある。また、ハースはフェラーリと、最新仕様のエンジンの供給を含めた技術提携を結んでおり、現時点では両者ともにこれを長期的なパートナーシップと考えているようだ。

 そう考えると、残るのはザウバーとマノーしかない。そして、ザウバーは2017年いっぱいでフェラーリとの契約が終了することもあり、ホンダとの契約に乗り気だと考えられている。

 ザウバーは長年にわたって、フェラーリとの関係が深かったチームだ。現在の契約はBMWが撤退した後、プライベートチームとして再出発した2010年からのものだが、彼らには1997年からBMWに買収された2006年までの間にも、マラネロと密接な関係を築いていた歴史がある。ところが、2016年に入ってから、ザウバーとフェラーリの関係には亀裂が入り始めている。つまり、ザウバーは転機にさしかかっており、新たに向かう先はホンダかもしれない、ということだ。


■供給拡大によるホンダのメリット

 ザウバーとホンダの契約は、特に長期提携によって安定性が担保されるなら、マクラーレンも含めたすべての当事者にとって好都合なものになるだろう。

 まずザウバーは、徐々に不満をつのらせていたフェラーリとのパートナーシップに、終止符を打つことができる。2016年に彼らに供給されたパワーユニットのパフォーマンスと信頼性は、決して満足のいくものではなかった。その点、成功に飢えていて、開発が正しい方向へ進んでいるように見えるホンダのエンジンを使えれば、ザウバーが得るものは大きいはずだ。

 また、ハースがフェラーリとの関係を深めていることから、いまやザウバーはフェラーリ陣営の3番手という扱いに甘んじている。しかし、ホンダのカスタマーになれば、マクラーレンに次ぐ第2のチームになることができる。

 マクラーレンも、ザウバーとの契約を阻止しようとはしないだろう。もう一度レースウイナーになり、タイトルコンテンダーになるという野心を掲げる彼らは、ザウバーがその目的達成を妨げる脅威になりうるとは思っていない。その意味において、2015年のレッドブルからホンダへのアプローチは、マクラーレンを困惑させる事態につながりかねないと考えられたのだ。

 ホンダもF1復帰から2シーズンを経て、組織体制が最適化され、パワーユニットのサプライチェーンの管理も上手になってきた。第2のチームへの供給は、いまや十分に能力の範囲内であり、仕事量の増加が開発に大きな悪影響を及ぼすとは考えにくい。むしろ、供給先が2チームになれば、ホンダはそれだけ多くのデータを集めることができ、問題点を洗い出す機会も増えて信頼性の向上に役立つ。レギュレーションにより、シーズン中に使えるユニットの数が今後さらに減らされることを考えると、これは一段と大きな意味を持つはずだ。


■ザウバーとホンダが組む妥当性

 ザウバーとフェラーリが、2017年の契約終了をもって袂を分かつことになると、レギュレーション上はホンダにザウバーへのエンジン供給が義務付けられる。2017年末の時点でも、やはりホンダが最も供給先の少ないマニュファクチャラーになるからだ(ただし、チームがFIAの指定した供給者と契約するには、エンジンの供給価格と分割払いの方法についての合意など、いくつかの条件をクリアする必要がある)。

 だが、ホンダとザウバーとしては、世間に対するイメージを考えると、「強制的にパートナーにさせられた」ように見えるシナリオは避けたいところだ。したがって、あくまで非公式という形をとりながら、すでに両者の話し合いは始まっているとしても、少しも不思議ではない。


 近年のザウバーの財政状況から見て、ホンダには支払いの面で不安が残るかもしれない。実際、ザウバーが2017年も2016年仕様のフェラーリ・エンジンを使うと決めた理由の一部は、そこにある。

 しかし、ザウバーも新たな出資者を迎えて、財政基盤は強化されつつあるようだ。彼らはいまや老舗のひとつにも数えられるプロフェッショナルなF1チームであり、フェラーリとの長い付き合いを通じて、エンジン代の支払いが滞ったことはほとんどなかったと言われている。

 まだいくつか解決すべき問題があるとはいえ、ホンダとザウバーのパートナーシップ締結は、論理的にもごく自然な結論だ。2018年のエンジン供給に関して、この両者が合意に至るのは、もはや少しも意外なことではない。