2017年01月04日 10:52 弁護士ドットコム
安易にスーパーのうずらの卵を孵化させないでーー。そんな注意を呼びかけるツイートが話題になった。
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スーパーなどで販売されているうずらの卵には有精卵も含まれており、購入した人の中には孵化にチャレンジする人がいる。実際に孵化に成功した中学生の自由研究が新聞に取り上げられたことなどもあり、「私もチャレンジしてみたい」などの声がネット上にあがっていた。
投稿者は、卵を孵化させることを「ゴール」と考えている人が、ヒナを適切に育てずに死なせてしまうような事態を懸念しているようだ。「せめて育て方、習性等最低限調べてください」と注意を呼びかけていた。
孵化したうずらのヒナを適切に世話しないで死なせてしまったり、飼うことが面倒だといって公園などに捨ててしまうことは法的には問題ないのか。動物の法律問題に詳しい鈴木智洋弁護士に聞いた。
「法的には、動物愛護法が禁止する、遺棄に該当する可能性があります。
自らが孵化をさせたウズラのヒナであっても、『人が占有している動物で鳥類に属するもの』に該当しますので、動物愛護法が適用される『愛護動物』にあたると考えられます。
そして、動物愛護法は、愛護動物に対して、(1)みだりに給餌や給水を止める行為や、(2)遺棄する行為などを禁止しています」
鈴木弁護士はこのように指摘する。どのような場合がこうした行為にあたるのか。
「孵化したばかりのウズラのヒナが、単独で餌や水を確保して生きていくことは困難でしょう。
そのような状態にあるヒナに対して、餌や水を与えるなどの適切な世話をしなければ、動物愛護法が禁止する『遺棄罪』に該当すると思われます。
公園など、餌や水が与えられない可能性が高いところに放置することも同様です。
そして、動物愛護法は、愛護動物を遺棄するなどした者に対しては、100万円以下の罰金が課せられると定めています。
ですから、孵化させたヒナに餌や水を与えなかったり、公園に放置したりするなどした場合には、動物愛護法違反として、刑事罰に問われる可能性もあります。
法的には以上の通りですが、法律以前の問題として、命を大切にするということが人として重要なことであることは言うまでもありません。
安易にウズラの卵からヒナを孵化させるという行為に及ぶことは控えた方がよいのではないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 智洋(すずき・ともひろ)弁護士
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授も務めている
事務所名:後藤・鈴木法律事務所
事務所URL:http://www.gs-legal.jp/index.html