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【ホンダF1特集】第2チーム供給への道筋(1):4年目に向けて整ってきた体制

2017年01月04日 06:41  AUTOSPORT web

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2016年第4戦ロシアGP ジェンソン・バトン(マクラーレン・ホンダ)
ホンダがマクラーレンと共に進歩を続けるにつれて、もうひとつ別のチームにもF1パワーユニットを供給する可能性が高まってきた。そして、その実現を心待ちにしているパートナー候補もいる。2018年にもホンダが第2のチームに供給する可能性は非常に高いと英AUTOSPORTのローレンス・バレットは考え、その根拠を示した。

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 2015年シーズンからの参戦に向けてホンダとマクラーレンが再び手を結んだとき、両者の間で、ホンダが第2のチームにパワーユニットを供給するには、マクラーレンの同意が必要という取り決めがかわされていた。

 そして、ホンダがパフォーマンスと信頼性の両面で苦しんだこともあって、参戦開始からしばらくの間は他チームへの供給が真剣に検討されることはなかった。マクラーレンとしては、ホンダが問題を解決するまではリソースを分散させてほしくなかったし、ホンダもまだしっかりとした基礎を築けていないうちから、規模の拡大を考えるようなことはしたくなかったのだ。


■マクラーレンが供給拡大を阻止も、規則変更で状況が一変

 レッドブルがルノーと仲違いをして、2016年に使うエンジンの供給者を探していたとき、当時のマクラーレン・テクノロジー・グループのCEOロン・デニスはその拒否権を行使し、ホンダがレッドブルと交渉を持つのを阻止した。デニスが語ったところによれば、パワーユニットの供給システムにかかる負担が増えて、ホンダが抱えている問題が悪化するのを望まなかったからだ。

 その後、デニスはさらにそのハードルを上げて、「ホンダが第2のチームへの供給を考えるのは、マクラーレン・ホンダが世界選手権タイトルを勝ち取ってから」とも述べた。

 ところが、レギュレーションの変更によって、マクラーレンの拒否権は事実上反故になってしまう。最もカスタマーの数が少ないマニュファクチャラーに対し、FIAがエンジンを必要としているチームへの供給を要求できることになったのだ(そして、拒否権を振りかざしていたデニスも、後にマクラーレンのトップの座を追われた)。

 このレギュレーションが決められた時点で、「最もカスタマーの数が少ない」サプライヤーはホンダだった。ただ、このルールはいまのところ実際に適用されてはいない。すべてのチームが自力で2017年のエンジン供給契約を結ぶことができたからだ。

 ホンダとしては、特にこのレギュレーションが導入された段階では、供給のオファーを「強いられる」可能性を歓迎していたわけではないだろう。供給先を増やしてもよいと思うほど、パフォーマンスに満足してはいなかったからである。だが、その当時でさえ、ホンダはもし要請があれば、レギュレーションには従うと明言していた。F1全体への責務は果たそうと考えていたのだ。


■急速な進歩でホンダへの関心が高まる

 その後、ホンダのパフォーマンスは確実に改善され、彼らは第2のチームへの供給を引き受けることを視野に入れ始めた。同じことはマクラーレンについても言える。相変わらずホンダをプッシュし続けてはいるものの、マクラーレンはホンダが示してきた進歩を見て、もうそれほど心配する必要はないと感じているに違いない。

 2016年の夏の間に、ホンダはそのための準備を開始した。ミルトン・キーンズの本拠を増築して、もう1チームへのパワーユニット供給を可能にするためのスペースを確保したのだ。いまやホンダには、もし供給の要請があれば、それに対応できるだけの施設がある。ただ、少なくとも現時点では、カスタマーを2チーム以上とする考えはないようだ。

 ホンダのF1総責任者、長谷川祐介は、2018年に第2のチームへの供給を行うとすれば、5月までに話が決まらなければ準備が間に合わないと述べた。「それ以上遅くまで待つことはできない」と、同氏は英AUTOSPORTに語っている。「レッドブルとトロロッソが(2017年に)ルノー・エンジンを使うと発表したのも、そのくらいの時期だった。だが、もちろん決定の時期は早ければ早いほどいい」

 2016年の急速な進歩によって、ホンダはライバルチームにも関心を持たれるようになってきた。長谷川氏は、これまでにあった打診は、すべて非公式なものだと断言しており、まだ実際にどこかと供給契約を交わしたわけではなさそうだ。しかし、彼らが2018年にもう1チームへの供給を引き受けるつもりで、準備を進めていることは間違いない。そうなると問題は、供給先がどのチームになるかだ。

※【ホンダF1特集】第2チーム供給への道筋(2):気になるパートナーは? は5日に掲載予定です。