2017年01月01日 08:42 弁護士ドットコム
フリーランスで働く人が、仕事の成功を祈って神社に投げ入れた賽銭は「経費」になるのか? そんな質問が、インターネット上のQ&Aサイトに投稿されていた。
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投稿者はフリーランスで働いている。「かなり神様に助けて頂いてる」ため、「よく神社に仕事の事をお願い」しに行くそうだ。その際、「お賽銭」も投げ入れるそうで、投稿者はその賽銭も経費に入れていいのかと疑問を呈している。
フリーランスで働く人が仕事の成功を祈って神社に参拝したり、祈祷をしてもらう場合、賽銭や祈祷にかかった費用は、経費と認められるのだろうか。李顕史税理士に聞いた。
まず、フリーランスで働く人が参拝したり、祈祷してもらったりする理由について考えてみましょう。1年がうまく過ごせるようお祈りしたり、商売繁盛を願ったりすることが、よくある理由でしょう。
このような理由で参拝や祈祷をしても、その行為は直接商売と関係ないから経費ではないと思われがちです。さらに投げ入れた賽銭について神社やお寺から領収書がもらえないのが一般的であり、その点からも経費計上は難しいと考える人も多そうです。
しかし、お賽銭も立派な経費となります。商売のために行った以上、仕事の一貫として参拝したといえるからです。また、領収書が発行されないなどの事情がある場合、領収書はなくても経費として認められます。
もちろん、参拝がプライベートなものであれば、商売には関係ないので、経費とはなりえません。たとえば家族で初詣に行き、家族全員分のお賽銭を投げ入れた場合、その全額を経費にすることはできません。あくまでも、1月の仕事始めなど、仕事に関わる人で投げ入れたお賽銭だけが経費になるのです。
賽銭だけでなく、仕事のために入手した商売繁盛のお守りや札も、経費となるでしょう。これも前述したように、プライベートの目的で購入したものについては認められません。
なお、参拝のための交通費も、経費として認められることがあります。たとえば、取引先に出向くときは交通費が発生して、経費として認められます。また、複数の神社や寺に参拝したとしても、経費として認められるでしょう。
さらに、理由があれば、ある程度遠方の神社や寺に参拝しても経費として認められます。ただし、東京在住の人が、わざわざ北海道や沖縄にある神社や寺に参拝する場合も交通費として認められるかは、疑問が残ります。
最後に、注意して欲しい点が2つあります。
1つ目は、お賽銭に投げ入れたお金が多額になる場合です。
例えば、年間500万円稼いでいる人が、100万円もお賽銭を投げ入れることは社会常識として考えにくいです。この場合は経費として認められない可能性が高くなります。たとえ領収書があり、100万円を本当に賽銭に投げ入れたと主張していたとしてもです。お賽銭は社会常識で認められた金額内でのみ経費と認められます。
2つ目は、今年、つまり2017年に投げ入れた賽銭を今年の2月から3月にする確定申告の経費とすることはできません。経費にできるのは2018年に行う確定申告です。今年に行う確定申告はあくまでも、2016年1月から12月までが対象期間です。
たとえば2017年1月1日午前2時に投げ入れた賽銭はたったの2時間のズレだし、領収書もないから分からないという理由で、経費にするのはルール違反です。もっというと法律違反にもなりかねません。信号が赤では横断歩道を渡ってはいけないように、ルールはきちんと守りましょう。
【取材協力税理士】
李 顕史(り・けんじ)税理士
李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、経営者にとって、難しいと感じる数字を分かりやすく伝えることに定評がある。また銀行等にもアドバイスを行っている。2016年6月に「各種法人の?に答える 現場が知りたいマイナンバー実務対応」(清文社)を刊行。
事務所名 : 李総合会計事務所
事務所URL:http://lee-kaikei.jp/
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